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あの人の、夢を見た。

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昨日異世界での別れを思い出したからだろうか、その日の夢見は悪かった。

いや、良かったのか?


神官長様の夢を見たんだよね。それはすごく嬉しかったんだけど……なんだかとてもやつれてて、可哀想で。

アカリ、アカリって、叫ぶみたいに私を呼んでた。

あんなに切羽詰まったような顔は、戦闘中ですら見なかったのに。なんせ神官長様は落ち着いた物腰を崩さない、クールなお方だったのだ。

それが、あの最後の日みたいに私に手を差し伸べて。

その手を取りたくて必死に手を伸ばすのに、その手は取れなくて……段々と薄くなって神官長様が見えなくなってしまった時には思わず泣いてしまった。

当然起きた時には涙ボロボロ、鼻水も盛大に出て、結果呼吸困難で私は命の危険を感じる羽目になった。


なんと言うか。


自分で言うのもなんだけど、なんと未練がましいのか。

神官長様が必死で私を呼んでくれる夢だなんて、恥ずかしいくらい願望丸出しなんだけど。

神官長様の事をちゃんと諦められるようにって、あの世界に別れを告げてわざわざ日本に帰ってきたと言うのに、一年経ってもなお神官長様を事ある毎に思い出し、こうして度々夢にまで見る始末。自分のしつこさに自分でドン引きだよ、もう。

いやでも、だからこそ英断だったとも言えるのか。

あの世界にいたままだったら、もっとひどい事になっていただろう。さすがにストーカーにはなりたくない。

これからあの世界で信仰の拠り所になるあの方は、これからとても忙しい。そして誰よりも高潔であろうとするだろう。

私の実らないプロポーズの相手をしてる暇なんかない筈だし、一方的な感情で神官長様の迷惑になるわけにはいかないもの。

陰ながら応援するくらいが丁度いい、私の想いは自分でも重すぎると分かっていたから。


女神様がね、仰ったんだ。

神官長様が魔を浄化する祈りの力を発揮できるのは、善行の蓄えがあるからだって。人を助けて感謝されるとその気持ちがパワーになって貯まるから、その力を祈りで取り出して使ってるんだって。

私すごく納得したんだよ、だって神官長様はいつも誰にだって優しかった。

困っている人にいつだって手を差し伸べていた。

だからこそ、感謝のパワーをたくさん貰ってて、全ての魔を浄化するくらい力が発揮できたんだって。


だから私、女神様にお願いしたの。

私も頑張るって。私がもし感謝されるような事があったら、その分は神官長様が使えるようにして欲しいって。


そうやって離れた場所で陰ながら応援している内に、この暑苦しい恋が敬愛に変わり、いつかは大切な思い出になってくれる筈だって、そう思ってたんだけどなあ。

毎日顔を合わせると嫌でも好きな気持ちが高まる一方で……苦しくて。

会わなければなんとかなるってそう思っていたのに、私の恋心は一年経ってもまだまだ元気いっぱいで、本当に嫌になる程手強い。

失恋の痛手は新しい恋で癒えるというけれど、あいにく私は惚れっぽいわけでもないんだよ。


未練がましい自分を呪いながら、私は氷で目を冷やす。

こんな泣きはらした顔でお客様の前に出るわけにもいかないし、とりあえずは全力で顔を整えなければ!
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