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「写真」
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「ねえ、よっちゃん、この写真見て!」
麗華が古いアルバムを広げて、僕に見せてきた。子供の頃、二人で海に行ったときの写真だ。僕が貝殻を拾い、麗華が笑顔でピースをしている。だが、その端に見覚えのない男の顔がぼんやりと写っていた。
「誰だ、この人?」僕は首をかしげた。
「さあね。でも、気味が悪いよね」麗華は不安げに笑う。
アルバムは何度も見返してきたはずだ。なのに、この顔は初めて見る。僕たちの記憶にはない男だ。
「編集とかじゃないのか?」
「お母さんがそんなことするわけないでしょ」麗華は首を振る。
その瞬間、男の顔がほんの一瞬だけ微かに動いた気がした。まるで、こちらを見つめているかのように。
「今、動かなかったか?」
「え? そんなわけないよぉ、よっちゃんが疲れてるんだよ」
麗華は笑い飛ばすが、僕の中に不安が広がった。その夜、妙な夢を見た。あの男が僕たちの背後に立って、無言で笑っている夢だ。
次の日、僕が仕事から帰ると、麗華はまたアルバムを見ていた。そして、新たな写真にもあの男が写り込んでいた。今度は僕たちのすぐ隣に立っているように。
「捨てよう、このアルバム」
僕が言うと、麗華は急に怯えた顔をした。「ダメ、消えないの。この人、どんどん近づいてくるの」
気味が悪くて、僕はアルバムを押し入れの奥にしまい込んだ。
しかし、その夜もあの男の夢を見た。今度は僕の耳元で「見つけたよ」と囁いてきた。
僕はもう写真を見ないことに決めた。
けれど麗華は、何事もなかったかのようにまたアルバムを引っ張り出してくる。
「ねえ、よっちゃん、今日も増えてるよ。この人、今度は部屋の中にいるみたい」
僕の背筋が凍った。彼女が見ているのは、僕には見えない何かだったのだ。写真の中の男は、もう僕たちのすぐそばにいるのかもしれない。
それ以来、僕たちは写真を撮ることをやめた。次に写るのが僕たち自身ではないと、誰が言えるだろうか。
麗華が古いアルバムを広げて、僕に見せてきた。子供の頃、二人で海に行ったときの写真だ。僕が貝殻を拾い、麗華が笑顔でピースをしている。だが、その端に見覚えのない男の顔がぼんやりと写っていた。
「誰だ、この人?」僕は首をかしげた。
「さあね。でも、気味が悪いよね」麗華は不安げに笑う。
アルバムは何度も見返してきたはずだ。なのに、この顔は初めて見る。僕たちの記憶にはない男だ。
「編集とかじゃないのか?」
「お母さんがそんなことするわけないでしょ」麗華は首を振る。
その瞬間、男の顔がほんの一瞬だけ微かに動いた気がした。まるで、こちらを見つめているかのように。
「今、動かなかったか?」
「え? そんなわけないよぉ、よっちゃんが疲れてるんだよ」
麗華は笑い飛ばすが、僕の中に不安が広がった。その夜、妙な夢を見た。あの男が僕たちの背後に立って、無言で笑っている夢だ。
次の日、僕が仕事から帰ると、麗華はまたアルバムを見ていた。そして、新たな写真にもあの男が写り込んでいた。今度は僕たちのすぐ隣に立っているように。
「捨てよう、このアルバム」
僕が言うと、麗華は急に怯えた顔をした。「ダメ、消えないの。この人、どんどん近づいてくるの」
気味が悪くて、僕はアルバムを押し入れの奥にしまい込んだ。
しかし、その夜もあの男の夢を見た。今度は僕の耳元で「見つけたよ」と囁いてきた。
僕はもう写真を見ないことに決めた。
けれど麗華は、何事もなかったかのようにまたアルバムを引っ張り出してくる。
「ねえ、よっちゃん、今日も増えてるよ。この人、今度は部屋の中にいるみたい」
僕の背筋が凍った。彼女が見ているのは、僕には見えない何かだったのだ。写真の中の男は、もう僕たちのすぐそばにいるのかもしれない。
それ以来、僕たちは写真を撮ることをやめた。次に写るのが僕たち自身ではないと、誰が言えるだろうか。
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