「   」

茶々あやめ

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「鏡の中」

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麗華(姉)は、いつも通り僕(純明)の部屋にやって来た。軽くノックした後、ドアを開けると、すぐに「よっちゃん、ちょっとこれ見てよ!」と声をかけてきた。

「また何か見つけたの?」

部屋の中には、麗華が手に持った小さな鏡があった。その鏡は、形も古びており、どこか不気味な感じがした。裏面には奇妙な模様が彫られていて、見ているだけで少しゾッとした。

「これ、昨日の古道具屋で見つけたんだよ」

僕はその鏡を見つめていると、急に背筋がぞくっとした。しかし、麗華は無邪気な顔で鏡を眺め続けている。

「ねぇ、これ見てみて。鏡の中、誰かいるみたいでしょ?」

「姉ちゃん、それ、ちょっと怖いよ」

僕は思わず言ってしまったが、麗華は気にした様子もなく、鏡をさらに近づけてきた。

「だって、よく見てみてよ。ほら、ここに誰かいるんだよ。見えない?」

鏡の中に、確かに誰かの顔がぼんやりと映っているように見える。
だが、その顔はまるで鏡の向こうからこちらを覗いているようで、何か不気味なものを感じた。

「でも、どうしてこんなところに?」

「さぁね、ただの模様かもしれないけど、ちょっと不思議だよね。でも、気にならない?」

麗華がそう言いながら鏡を僕に差し出してきたが、僕はそれを手に取るのを躊躇った。

「姉ちゃん、もうちょっとやめようよ。怖くない?」

「だってさ、見てよ。鏡が妙に光ってるよ」

麗華が鏡を動かすと、まるでその中から誰かがじっとこちらを見ているような気がして、僕は恐怖を感じ始めた。
その時、突然部屋の電気が一瞬だけ消え、再び点灯した。

「……今、電気が」

僕は驚いて部屋を見渡すと、麗華は真顔で鏡を持ちながら、じっと床を見つめている。

「ちょっと、姉ちゃん?」

僕が声をかけても、麗華は反応しない。ふと、鏡の中の映像が不気味に動き出すのが見えた。
今度は鏡の中で、麗華が映っていないはずの部屋の隅に誰かが立っているように見える。

「ねぇ、これ、怖くない?」

ようやく麗華が振り返り、微笑んだ。

「よっちゃん、ほんとに怖がってぇ。でも、この鏡、何か変だよね。」

その瞬間、鏡の中の人物が急にこちらを見つめ、目が合った気がして、僕は思わず後ずさった。鏡の中の顔が、何とも言えない不気味な笑みを浮かべていた。

「うわっ!」

思わず声を上げると、麗華は驚いて鏡を落としてしまった。鏡は床に落ち、割れた。
僕はその割れた鏡を見つめながら、ふと背後を振り返った。部屋は静かで、誰もいない。

「あ…あれ?、気のせいだったのかな?」

しかし、鏡の破片の中には、まだあの不気味な笑顔が映っていた。


その夜、僕たちは何も話さず、寝室でそれぞれ布団をかぶり、早めに寝た。
しかし、寝室の鏡を見た瞬間、またあの笑顔が一瞬映った気がした。

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