5 / 17
「鏡の中」
しおりを挟む麗華(姉)は、いつも通り僕(純明)の部屋にやって来た。軽くノックした後、ドアを開けると、すぐに「よっちゃん、ちょっとこれ見てよ!」と声をかけてきた。
「また何か見つけたの?」
部屋の中には、麗華が手に持った小さな鏡があった。その鏡は、形も古びており、どこか不気味な感じがした。裏面には奇妙な模様が彫られていて、見ているだけで少しゾッとした。
「これ、昨日の古道具屋で見つけたんだよ」
僕はその鏡を見つめていると、急に背筋がぞくっとした。しかし、麗華は無邪気な顔で鏡を眺め続けている。
「ねぇ、これ見てみて。鏡の中、誰かいるみたいでしょ?」
「姉ちゃん、それ、ちょっと怖いよ」
僕は思わず言ってしまったが、麗華は気にした様子もなく、鏡をさらに近づけてきた。
「だって、よく見てみてよ。ほら、ここに誰かいるんだよ。見えない?」
鏡の中に、確かに誰かの顔がぼんやりと映っているように見える。
だが、その顔はまるで鏡の向こうからこちらを覗いているようで、何か不気味なものを感じた。
「でも、どうしてこんなところに?」
「さぁね、ただの模様かもしれないけど、ちょっと不思議だよね。でも、気にならない?」
麗華がそう言いながら鏡を僕に差し出してきたが、僕はそれを手に取るのを躊躇った。
「姉ちゃん、もうちょっとやめようよ。怖くない?」
「だってさ、見てよ。鏡が妙に光ってるよ」
麗華が鏡を動かすと、まるでその中から誰かがじっとこちらを見ているような気がして、僕は恐怖を感じ始めた。
その時、突然部屋の電気が一瞬だけ消え、再び点灯した。
「……今、電気が」
僕は驚いて部屋を見渡すと、麗華は真顔で鏡を持ちながら、じっと床を見つめている。
「ちょっと、姉ちゃん?」
僕が声をかけても、麗華は反応しない。ふと、鏡の中の映像が不気味に動き出すのが見えた。
今度は鏡の中で、麗華が映っていないはずの部屋の隅に誰かが立っているように見える。
「ねぇ、これ、怖くない?」
ようやく麗華が振り返り、微笑んだ。
「よっちゃん、ほんとに怖がってぇ。でも、この鏡、何か変だよね。」
その瞬間、鏡の中の人物が急にこちらを見つめ、目が合った気がして、僕は思わず後ずさった。鏡の中の顔が、何とも言えない不気味な笑みを浮かべていた。
「うわっ!」
思わず声を上げると、麗華は驚いて鏡を落としてしまった。鏡は床に落ち、割れた。
僕はその割れた鏡を見つめながら、ふと背後を振り返った。部屋は静かで、誰もいない。
「あ…あれ?、気のせいだったのかな?」
しかし、鏡の破片の中には、まだあの不気味な笑顔が映っていた。
その夜、僕たちは何も話さず、寝室でそれぞれ布団をかぶり、早めに寝た。
しかし、寝室の鏡を見た瞬間、またあの笑顔が一瞬映った気がした。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
リューズ
宮田歩
ホラー
アンティークの機械式の手に入れた平田。ふとした事でリューズをいじってみると、時間が飛んだ。しかも飛ばした記憶ははっきりとしている。平田は「嫌な時間を飛ばす」と言う夢の様な生活を手に入れた…。
『忌み地・元霧原村の怪』
潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。
渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。
《主人公は和也(語り部)となります》

アポリアの林
千年砂漠
ホラー
中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。
しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。
晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。
羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる