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「親切な人」
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寒い朝、麗華は大学へ向かう途中でバスに乗っていた。
いつものようにスマホをいじっていると、背後から優しい声が聞こえた。
「お嬢さん、これ、落としましたよ。」
振り返ると、中年の男性が麗華の手帳を差し出していた。
「あっ、ありがとうございます!」
麗華は深々と頭を下げて、手帳を受け取った。男性は微笑んで「気をつけてね」と言い残し、次の停留所で降りていった。
「親切な人だなぁ…」
感謝しつつも、特に気にせずそのまま大学へ向かった。
その夜、家に帰った麗華は、弟の純明に今日の出来事を話した。
「よっちゃん、今日バスで親切な人に手帳を拾ってもらったんだよ!本当に助かった~。」
「ふーん、でも気をつけた方がいいよ。最近、物騒な話も多いし。」
「大丈夫、大丈夫!ただの親切な人だって。」
麗華は気にせず笑って流したが、純明はどこか心配そうな顔をしていた。
翌朝、再びその男性に出会った。
麗華がバス停に向かっていると、同じ男性が手を振って近づいてきた。
「おはよう。また会えたね。」
「おはようございます!偶然ですね。」
親しげな態度に少し戸惑いながらも、麗華は軽く挨拶を返した。
そのままバスに乗り、彼と軽く会話を交わしているうちに、少しずつ打ち解けていった。
「最近寒いですね~」「そうだね、風邪ひかないようにね」
ほんの些細なやり取りだったが、麗華はどこか安心感を覚えた。
しかし、その日の帰り道。
バスから降りると、後ろからまた彼の声が。
「やぁ、今日も一緒だね。」
驚いて振り返ると、今朝の男性が立っていた。
明らかに彼女の降りる停留所を知っていたかのように現れたその姿に、一瞬ゾッとする。
「偶然ですね…」
「君が心配でね。家まで送ってあげようか?」
「いえ、大丈夫です!」
麗華は笑顔で断ったものの、心臓が早鐘を打つように鼓動していた。急いで家に帰り、純明に相談する。
「よっちゃん、さっきの親切な人がまた会いに来たんだよ。」
「姉ちゃん、それ絶対におかしいよ。次からは気をつけてね。」
純明は眉をひそめたが、麗華は「ただの親切な人だよ」と軽く流した。
その夜、奇妙な夢を見た。
夢の中で麗華は暗い路地を歩いていた。振り向くと、あの男性がにこやかに手を振っている。
「君を守ってあげるからね…」
麗華は怖くなり、走り出したが、彼はどこまでも追いかけてくる。
「いやっ!」
叫び声を上げて目を覚ますと、純明がそばにいた。
「姉ちゃん、大丈夫?」
「うん…ただの悪夢だよ。」
翌日、大学からの帰り道。
麗華はまたしてもバス停であの男性に遭遇した。今度は彼の顔が以前よりも不気味に見えた。
「もう、大丈夫ですから…」
強引に断り、急いでバスに乗り込んだ。乗った先には純明が待っていた。
「姉ちゃん、やっぱりその人危ないよ。これからは僕が一緒に帰るから。」
「え?なんで…?迎えに?」
「うん、ちょっと嫌な予感がしてね。」
二人は急いで帰路についたが、背後から再びあの声が。
「待ってよ、君を守りたいだけなんだ!」
麗華と純明は振り返らず、そのまま家へ駆け込んだ。家の中から外を覗くと、男性はじっと二人を見つめていた。
「…やっぱりただの親切な人じゃなかったね。」
麗華は冷や汗をぬぐいながら、純明に感謝した。その夜、二人は鍵を二重にかけて眠りについた。
だが、玄関のポストには「また会いに来るよ」と書かれた新たな手紙が差し込まれていたのだった。
いつものようにスマホをいじっていると、背後から優しい声が聞こえた。
「お嬢さん、これ、落としましたよ。」
振り返ると、中年の男性が麗華の手帳を差し出していた。
「あっ、ありがとうございます!」
麗華は深々と頭を下げて、手帳を受け取った。男性は微笑んで「気をつけてね」と言い残し、次の停留所で降りていった。
「親切な人だなぁ…」
感謝しつつも、特に気にせずそのまま大学へ向かった。
その夜、家に帰った麗華は、弟の純明に今日の出来事を話した。
「よっちゃん、今日バスで親切な人に手帳を拾ってもらったんだよ!本当に助かった~。」
「ふーん、でも気をつけた方がいいよ。最近、物騒な話も多いし。」
「大丈夫、大丈夫!ただの親切な人だって。」
麗華は気にせず笑って流したが、純明はどこか心配そうな顔をしていた。
翌朝、再びその男性に出会った。
麗華がバス停に向かっていると、同じ男性が手を振って近づいてきた。
「おはよう。また会えたね。」
「おはようございます!偶然ですね。」
親しげな態度に少し戸惑いながらも、麗華は軽く挨拶を返した。
そのままバスに乗り、彼と軽く会話を交わしているうちに、少しずつ打ち解けていった。
「最近寒いですね~」「そうだね、風邪ひかないようにね」
ほんの些細なやり取りだったが、麗華はどこか安心感を覚えた。
しかし、その日の帰り道。
バスから降りると、後ろからまた彼の声が。
「やぁ、今日も一緒だね。」
驚いて振り返ると、今朝の男性が立っていた。
明らかに彼女の降りる停留所を知っていたかのように現れたその姿に、一瞬ゾッとする。
「偶然ですね…」
「君が心配でね。家まで送ってあげようか?」
「いえ、大丈夫です!」
麗華は笑顔で断ったものの、心臓が早鐘を打つように鼓動していた。急いで家に帰り、純明に相談する。
「よっちゃん、さっきの親切な人がまた会いに来たんだよ。」
「姉ちゃん、それ絶対におかしいよ。次からは気をつけてね。」
純明は眉をひそめたが、麗華は「ただの親切な人だよ」と軽く流した。
その夜、奇妙な夢を見た。
夢の中で麗華は暗い路地を歩いていた。振り向くと、あの男性がにこやかに手を振っている。
「君を守ってあげるからね…」
麗華は怖くなり、走り出したが、彼はどこまでも追いかけてくる。
「いやっ!」
叫び声を上げて目を覚ますと、純明がそばにいた。
「姉ちゃん、大丈夫?」
「うん…ただの悪夢だよ。」
翌日、大学からの帰り道。
麗華はまたしてもバス停であの男性に遭遇した。今度は彼の顔が以前よりも不気味に見えた。
「もう、大丈夫ですから…」
強引に断り、急いでバスに乗り込んだ。乗った先には純明が待っていた。
「姉ちゃん、やっぱりその人危ないよ。これからは僕が一緒に帰るから。」
「え?なんで…?迎えに?」
「うん、ちょっと嫌な予感がしてね。」
二人は急いで帰路についたが、背後から再びあの声が。
「待ってよ、君を守りたいだけなんだ!」
麗華と純明は振り返らず、そのまま家へ駆け込んだ。家の中から外を覗くと、男性はじっと二人を見つめていた。
「…やっぱりただの親切な人じゃなかったね。」
麗華は冷や汗をぬぐいながら、純明に感謝した。その夜、二人は鍵を二重にかけて眠りについた。
だが、玄関のポストには「また会いに来るよ」と書かれた新たな手紙が差し込まれていたのだった。
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