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第2夜会 除け者の隠された答案用紙-ハイドペーパー(前編)

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 ガシャっ……ガシャっ……
 夜の町に鎧の音が響く渡る。しかしその音は重々しくなく、むしろ軽快にご機嫌に聞こえる。白銀の鎧に綺麗な金の髪を揺らす女性に茶色の髪の少女が声をかける。

「チェルシーさん!」

 チェルシーと呼ばれた金髪の女性が振り返るともともと美人の顔が尚輝くような笑顔になる。

「ユアっ! 一ヶ月弱ぶりだね! 元気だった!?」

「はいっ! チェルシーさんも元気そうで何よりです!」

「ははっ! 相変わらず美少女だな! 可愛くて女の子らしくてうらやましいよ……」

 チェルシーの発言に茶髪の少女のユアが答える。二人は並んで目的の場所である【小烏】という店に向かう。

「私は凛とした美女であるチェルシーさんに憧れてますよ! ……あとはロサナさんの色気にも……ごにょごにょ……」

「確かにあの羨まけしからんボディはなんなのだ! ……っとそういえばユア。この前ロサナの仕事を手伝ったらしいな。ずるいぞー私もユアに会いたかったのにー!」

 ぷく~っとタコのように頬を膨らます。
 こんな変な顔をしても美人って崩れないんだな~なんかズルいと思うユアが続く。

「あははっ。お仕事のお手伝いですよ。もーとっても緊張したんですよ」

「たしか、試験監の仕事だっけ?」

「そうです。一日だけですが朝から夕方まで四人の試験監の一人でした。不審な動きがないか注意して、あっ、ペンとか落とした物を代わりに拾ってあげたりもしました!」

「へ~……んでいくらもらったの?」

 ハンドサインでお金のマークを作りいやらし顔で聞いてくるチェルシー。するとユアは気まずそうな顔で。

「額は言えませんが報酬を貰ったとき気を失うかと思いました。……たった一日なのに私の三ヶ月分のお金が……」

「そんなに!? くそー! 私を頼れよな! 不正があったら取っ捕まえてぼこぼこにしてやるのに!」

「あはは、暴力はいけませんよ。……でもお金を返そうかとかと思ってまして……」

「なんで? 働いた者には誰しも対価が貰える。確か試験監と言っても学校の中~上位成績者約300名の中から首席を決める大切な試験なんだろ? 重要じゃないか。貰うものは貰っといたほうがいいよ」

 申し訳なさそうにユアが理由を話す。

「内容はわかりませんが試験でトラブルがあったらしいのです。監督をしていたのに……」

「ユアは悪くないよ。ロサナももちろんそう思ってるさ……今日は一人このティアラ会にゲストとしてロサナが誰か連れてくるんだろ? 多分、私の読みではその関係者さ。今日の会食でわかるよ」

 そう二人で話をしていると【小烏】に到着した。扉を開いて中に入ると赤い髪の給士の一人イズミが迎えてくれた。店内を見渡すとカウンターに突っ伏して寝ている白衣を来た猫耳の娘がいた。その猫耳娘の肩にイズミが優しく触れて。

「アーニャ様……チェルシー様、ユア様もご到着されましたよ」

 声を聞いた途端、ぴくんっと耳としっぽが跳ね上がり叫ぶ。

「ユア~! チェルシ~! ひっさしぶり~!」

 ガバッ! っとユアにアーニャという猫耳化学者が飛び抱きつく。

「アーニャさん! 久しぶりです!」

「久しぶり! 相変わらずまた寝ていたのか?」

「ま~ね。爆睡してたよ~」

 三人が集まったタイミングで奥からオーナーのみなせが現れる。

「チェルシー様、アーニャ様、ユア様……いらっしゃいませ……上へどうぞ。先に着いたロサナ様がお待ちです」

 アーニャは驚きの声を上げる。

「あれ~!? あたしが一番だったハズだけど~!?」

「はい。アーニャ様が到着したすぐあとにロサナ様も到着して、一応は声をかけてましたが深い眠りのご様子でお起きになられませんでした」

 チェルシーが笑い、ユアもクスクスと小さく笑う。
 その後、みなせは階段に向かい三人をエスコートする。
 ぎぃ……と扉を開く音が響き食事を行う部屋へと三人は入室する。そこには既に座っている紫の髪のまたしてもセクシーなドレスを来た女性ロサナと紺のブレザーとスカートの髪を三つ編みにした少女が座っていた。
 ロサナは既に咥えていた煙草を口から離し、その艶やかな唇からほぅ……と煙を吐き三人に目を向ける。

「お久しぶりですわね。皆さま。ユア……この前はお手伝い有り難うね」

 チェルシーがずかずかと歩き定置の席に座り不機嫌そうに話す。

「久しぶりロサナ。会えて嬉しいよ……それでこの友人同士の食事……ティアラ会に誰だかわからない人がいるのだが説明してくれないか?」

 チェルシーの声色に少女は涙目になりぷるぷると震える。その少女のブレザーを見てユアが答える。

「あっ!? ロサナさん。この子はロサナさんの学園……王立魔法学校の生徒さんですよね?」

「そうですわ。ユアはこの前お手伝いに来てくれたからわかりますわよね。紹介致しますわ。我が校の高等部二年のアンズですわ」

 紹介された三つ編み少女はアンズという。まだ涙目で震えてはいるがぺこっとお辞儀をした。同じように不機嫌気味のアーニャもドサッと乱暴に椅子に座り。

「んでさ~。そのアンズがあたしらのティアラ会になんでいるのかね~」

「まあまあ。これはこのあとロサナさんからお話ありますよ! ねっ! ねっ!」

 気まずそうにロサナの隣に座る。今回の席順だがチェルシー、アーニャと向かいにアンズ、ロサナ、ユアの席順である。会合早々に険悪な空気になっているがその空気に割って入ったのはみなせである。

「皆さまお飲み物でございます。まずは喉を潤して見てはいかがでございますか?」

 全員の前にビールが置かれる。

「……そうだな。まずは乾杯……」

 チェルシーの声に合わせて皆飲み物を掲げて口に飲み物を運ぶ。

「あっ……美味しいこのビール!」

「なんか優しい甘味がある~」

「んっ、うまいな!」

 好評の所でみなせが答える。

「はい。これは南部に生息する砂糖黄蜜蜂(さとうきみつばち)の巣から採った蜂蜜をビールに混ぜたハニービールでございます。ちなみにアンズ様とそのご家族様が愛飲されています」

 全員の目がアンズに向く。アンズはあわあわと口をパクつかせて。

「どっ、どうしてそれを!?」

「アンズ様のお父様はよく当店にお越し頂きます。その際好評だったのがこのハニービールで、半年皆さまでご来店され皆さま美味しい。美味しいと沢山おかわりしてくださいましたからね」

「よく覚えていたな……」

「まったくだよ~……」

「にしてもうまいな!」

 チェルシーとアーニャは気に入ったらしくガブガブ飲み始めた。そしてロサナが頭を下げる。

「チェルシー……アーニャ……ユア……約束を違えてしまい申し訳ありません」

 頭を下げたロサナに三人が驚きの声をあげる。

「ろっ、ロサナさん頭を上げてくださいっ!」
「え~うわ~! ちょっ! ええ~!」
「頭を上げてくれ! ロサナ!」

 ゆっくりと頭を上げてロサナは答える。

「実は彼女嫌なことがあってへこんでいます。なので今回ちょうど私たちの食事会に気分転換にゲストとして独断で招いたの……」

「いえっ! ロサナ先生は悪くありません! 悪いのは私であって!」

「ストップ!」

 ロサナとアンズ台詞を遮るようにチェルシーが会話を止めた。

「もう別にいいさ。もともとが絶対に四人じゃなきゃいけないとか言う取り決めなどなかったしね。時折こうしてゲストを招くのもありにしようじゃないか」

「まあ~それでいいと思うよ」

「私も賛成です! アンズさん……私も前回の食事会の時は落ち込んでいました。けど、皆さんと食事ができて元気がでました! なのでアンズさんも今日は楽しんでください!」

 三人の言葉を聞きロサナもアンズも少し笑顔になった。

「……皆さま、最初の料理でございます。楽しく食事ができるよう腕によりを振るいました」

 みなせが料理を運び、その料理を皆口に運ぶと顔がほころぶ。そこからポツポツと会話が弾み少しずつ部屋に笑い声が響きわたる。給士をしているみなせはさながら、陽気の良い優しい音楽を聞いているかのように気分よく給士としての仕事を行った……


……


……


……


 一通り食事を終えて、各々の落ち着いた飲み物を口にする。そして、チェルシーが話しかけた。

「ロサナ、アンズ……最初はすまなかったな。感じの悪い態度を取ってしまい」

「あ~、あたしもごめん」

 チェルシーの一言に頬を掻きながらアーニャも申し訳なさそうに続く。

「あっ! いえっ! 私は気にしておりませんので! むしろ、今日は楽しかったです!」

「私はもちろん気にしていませんわ」

 ロサナは煙草を吹かしながら告げる。

「ところで……アンズさんが良ければですけど、落ち込んでいた理由を聞かせていただけませんか? ……あっ! 全然話したくない内容であれば大丈夫です! ……実は私も前回のとき落ち込んでいたんですけど、皆さんに相談した所それが解決して凄い助かったんです……無理とは言いませんし、私たちにできることはないかもしれませんが人に話したらとよく言いますし……あの……なんというか……その……」

 ユアは前回自分が救われたように、アンズの落ち込んでいることにたいしても力になれないかを必死に話しかける。最初は少し興奮ぎみに話していたのだが、徐々に恥ずかしくなってきたのか顔を赤らめうつむき気味になりながらも、ごにょごにょ必死に話しかける。それを見ているいつものメンバーは顔が優しくほころび。

「私はユアのそんなところが気に入ってるんだよな」
「私もですわ……」
「あたしもだ~いすきなんだよな~」
「私もでございます」

「もうっ! 皆にみなせさんまで!」

 からかわれているかと思いユアは頬をぷくーっと膨らませる。それを見て皆が笑う。そして、その笑い声の輪の中にはアンズも交ざっていた。
 一通り笑い声が収まった所でアンズがロサナを見て話し出す。

「……先生、皆さまに話してもよろしいでしょうか?」

「もちろんよ……実はそれもあなたをこの食事会に招いた理由の一つですわ」

 ロサナはアンズを見て、話していいのよと頷きを見せる。皆アンズに注目をする。そして、アンズは唇を震わせながら語りだす。

「私の試験の解答用紙が何者かに盗まれました……」

「それって、学園首席を決めるテストのですか!? 私が試験監を行った!」

 アンズの一言にユアが驚き立ち上がる。そして、ロサナはそのユアを抑える。

「その通りですわ。でもユア……まずは話を全て聞いてくださる?」

「……あっ、ごめんなさい……」

 ユアは椅子にゆっくりと座る。それを見たアンズが話を続ける。

「私の家はもともと裕福ではありません。ロサナ先生の前でお話をするのは少し気まずいですが、国から支給される奨学金と両親のお金、私のバイト代だけでは敷居は高いです……ですが、幼い頃の学校の先生や両親の薦め、そして何より自分が学問をどうしても学びたい! という気持ちが強いのです。そこで王立魔法学校には学園一位の首席の他に学園上位十名を特待生として学費が一年間免除されるのです」

「ちなみに彼女は私の学園に来て五年間特待生枠を維持していますわ」

「すご~」

 アーニャが思わず驚きの声をあげる。

「そして、今年のテストで私の書いた答案用紙がなくなるという事件が起きてしまいました……」

「その場合どうなるんだ?」

 チェルシーはロサナに訪ねる。

「このまま答案用紙が見つからなければテストには参加したが0点扱いになりますわ」

「もう一度テストを受けさせてあげるということは……」

「当然できませんわ」

 ユアの提案即座に却下される。

「あはは……気持ちは嬉しいですが、そもそも私問題知っちゃってますし……」

 アンズは苦笑いする。

「なら問題を作り替えてもう一度アンズだけテストをしてやればいい」

「学のない脳筋にはわからないけどこういうのは再試って無理なんだよな~。試験問題を作り替えても難易度が変わるし、そもそもアンズは一度試験を受けちゃってるから再試うんぬんはできない。それにこのあと『じゃあ、全員で受け直せば』って言っても無駄だからね~」

「なんだと! アーニャ~……」

 チェルシーはアーニャを睨む。

「アーニャ先生の言う通りだと生徒側の私も思います。それで順位が決まっても納得できません」

「「アーニャ先生!?」」

 チェルシーとユアは驚きの声をあげる。

「あっ……言ってませんでしたけど、あの後アーニャを調べたら魔法化学にも精通していて……というか、アーニャは王国屈指の化学研究所のエースで王国の発展に貢献しておりますわ。それで空いてる時に臨時講師で講義をしてもらい生徒にも単位をあげてますわ」

「アーニャ先生の授業はとても面白いですからね」

「君も受けてたんだね~……なんかめちゃくちゃ人いて顔覚えてなくてごめんよ~」

「何か空いた口が塞がらないわ」

「私もです」

 チェルシーとユアはきょとんとしてしまう。

「あたしのことはいいんだよ~……それで試験のこと聞かせてくれよ~」

 アーニャが話を戻す。

「はい。実は私少し一部の生徒に嫌われているんです。『貧乏人の癖に王立魔法学校生とかわきまえなさい』とか……いわゆる除け者、いじめられっ子です。特に特待生になってからは言ってくるクラスメイトとか増えました……テスト当日も……」

「何かあったのですか?」

 ユアが問う。

「……試験開始前にいつものからかってくる貴族ヒルダ、そしてその供回り四人が私の筆箱を奪ってしまったんです」

「筆記用具を!? それでテストはどうしたんだ!?」

「返してもらおうとしたんですが相手はヒルダを合わせて五人……何もできませんでした。ヒルダたちは私の筆記用具を全て取り出して壊してしまおうとしていました。その時私の幼なじみで親友のマリーが同じ試験会場に入ってきてヒルダが私の筆箱を持っていることに気付いて、ヒルダの死角から取り返してくれたんです。そのあとすぐに試験監督と試験官が来てまずは答案用紙を配り初めて、名前を書こうとしたところヒルダにインクを抜かれていることに気が付きました」

「それじゃ書けないですよね……」

「はい……私はヒルダを叫んで罵ってやりたかった。けど300人近い人数が試験を受け、一つの会場でも60人ほどはいます。私は震えながら涙が落ちるのを堪えてました。その時、横の席だった親友のマリーが『すいません! 筆記用具忘れたので隣の友達のアンズに借りてもいいですか!?』と言ってこっそりとペンを一本貸してくれたんです。マリーの行動に私は泣きそうになりました! その嬉しさから最高のコンディションで試験に望むことができ、マリーには何度もお礼を言いましたし列の前にいたヒルダや周りの連中も悔しそうな顔をしていました。絶対に特待生枠を取れる自信がありました! ……でも……」

 アンズはとても悔しそうな顔をして俯く。歯を食い縛り、スカートがしわになってしまいそうなくらい強い握りしめていた。そこにロサナが続く。

「……でも……アンズの解答用紙はありませんでしたの。試験後無駄かもしれませんが教室を隅々まで探しましたわ。もちろん回収ボックスも……」

「回収ボックス~?」

「ええ、我が校の試験は問題用紙、解答用紙は試験後に私が持つ鍵でしか開かない魔法がかかっているボックスに入れることになっておりますわ。余った用紙も……そうして試験監督に各試験会場ごとに集めさせて私は数名の教員と採点を監視する監視員がチェックすることになってますわ」

 ロサナの説明が終わり、ユアが驚いた顔で答える。

「……私……その会場の担当でした」

『っ!?』

 全員が驚きの顔でユアを見る。

「もしかしたら、アンズさんの列に問題用紙が回されていたとき一番後ろの子が『一枚足りません!』確かにそう言った記憶があります……」

 ユアの発言にチェルシーが反応する。びっくりするくらいのどや顔でこう語りだす。

「ふふっ……どうやらこの消えた答案用紙の謎をいち早く説いたのは私のようだなっ!」

 チェルシーの言葉にそれぞれ期待の眼差しを向ける。その発言を合図にみなせはポットにお湯を入れてティーセットを温め始める。茶葉をポットに入れて蒸し、美味しい紅茶ができる準備をしながらチェルシーの推理に耳を傾けるのであった……



中編へつづく
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