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三章 消えない傷痕
四話
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お艶は笑顔が可愛くて、その笑顔に才蔵はドキドキしていたものだ。
何時だったか……「才蔵さんは小父さんみたいな立派な岡っ引きになるの?」と聞かれ「うん」と答えた時、目を輝かせ「頑張ってね」と言った時の彼女の笑顔は今も忘れられない。
全身が温かくなり、力が湧いて来る……そんな笑顔。
お艶が自分のお嫁さんになったら……何時も何時も見ていたい……。
父親が幼なじみを、からかうタネにしていた物が、彼の胸の中で静かに芽を出していた。
だから事件を聞いた時、才蔵は全身の血が凍りそうな恐怖を味わった。
死人のように真っ青になった才蔵を震える手で押さえ、佐七は「あの子は……お艶坊は強い。跳ねっ返りだ。信吉は……何時もそう言ってた。だから死神だって追い返すに決まってる。死ぬものか……!」涙を浮かべそう言った。
それは才蔵ばかりでなく、己自身に言い聞かすようにも聞こえた。
その通りにお艶は3日3晩死線をさまよったが、この世に留まった。
才蔵に未来への希望を残して……。
何時だったか……「才蔵さんは小父さんみたいな立派な岡っ引きになるの?」と聞かれ「うん」と答えた時、目を輝かせ「頑張ってね」と言った時の彼女の笑顔は今も忘れられない。
全身が温かくなり、力が湧いて来る……そんな笑顔。
お艶が自分のお嫁さんになったら……何時も何時も見ていたい……。
父親が幼なじみを、からかうタネにしていた物が、彼の胸の中で静かに芽を出していた。
だから事件を聞いた時、才蔵は全身の血が凍りそうな恐怖を味わった。
死人のように真っ青になった才蔵を震える手で押さえ、佐七は「あの子は……お艶坊は強い。跳ねっ返りだ。信吉は……何時もそう言ってた。だから死神だって追い返すに決まってる。死ぬものか……!」涙を浮かべそう言った。
それは才蔵ばかりでなく、己自身に言い聞かすようにも聞こえた。
その通りにお艶は3日3晩死線をさまよったが、この世に留まった。
才蔵に未来への希望を残して……。
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