亡国公女の初夜が進まない話

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21 ワイルドヘブン ☆

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シロールが浴室から寝室に戻ると、既にラクロはベッドに入っていた。
こちらに背を向けて、やけに端の方に横たわっている。
広い背中で告げた。

「今日は、疲れただろう」

旅程外の飛行ルートを想念しつつ、シロールは壁のスイッチに手を伸ばした。メイン照明が落とされ、ベッドサイドの間接照明だけが残る。

「そうですね」

肯定の声に、ラクロの肩が微かに揺れた。
大きな体がごそりと動いて若干背が丸まる。
訊いておいて落胆して、項垂れている。

シロールは膝でベッドに載り上がり、シーツの上にぺたりと座り込んだ。
ラクロの背中を眺め、項を見詰める。
どう興奮したところで今の彼が紋章を輝かせる事は無い。
解除は成された。シロールよりも先に、結局。

――何の為の帰郷だったのか分かりませんね。

苦笑が漏れた。
シーツに手と膝を突いてのそのそと移動し、ラクロの背後に近寄る。
指先でちょいと項に触れると、ラクロの両肩が軽く上下した。

「無くなっちゃったのですね」
「……そう、だな」
「とても綺麗でしたからやはり惜しいです」
「……私は清々している」

それもそうか、と内心に言ってシロールは彼の傍らでころりと寝転んだ。
彼は知らぬ間にとんだ迷惑品を押し付けられていた。危うく死んだ王に肉体を乗っ取られるところだった。

――本当に無事で良かった。

安堵と共にシロールは分厚い背中に両手と頬を寄せる。
ラクロの背中が岩になって固まった。
大胆な気持ちになってシロールは彼に寄り添い、意図してその広い背中に胸元を押し当てた。

「ラクロ様、お疲れですよね」

二つの丸い房が硬い皮膚でふにっと押し潰され、ラクロはぎくりと体を震わせた。
何やら堪える間を経て意を決したようにシロールを振り返った彼は、細い両肩を掴むと引き寄せたシロールと唇を合わせた。

「いいのか、シロール。いいんだな」

忙しなく口付ける合間に訊いているようで訊いていないラクロに、シロールも息継ぎの合間にどうにか答えた。

「は、い――」

肯定を聞きつけるやラクロはシロールの上に載り、我慢出来ないとばかりに細い体中に両手を這わせた。早速ネグリジェの裾を捲り上げて晒した太腿を掴み、左右に開かせた足の間に胴を入れ、挟み込ませる。
開いた体の前を掌で擦り上げられて、シロールは塞がれた唇の隙間で「んんん」と声を漏らした。

紋章など無くても彼の激しい興奮が伝わった。
シロールを裸にする一方でラクロは自らの着衣を開き、深い口付けの中で小さな舌を弄んだ。
爪先でシーツを引っ掻き回して、シロールは下腹部からせり上がる快感に悶えた。
大きな掌に裸の胸を左右とも揉みしだかれ、先端を根元から親指の付け根で掴まれ、そのままきゅうと引っ張り上げられる。堪らず「あ、あん」と甘ったれた声を上げ、腰から下で跳ねた。
更に過敏になった胸の先端に吸い付かれて下腹部の奥が疼いた。健気な首がぴんと立つと、ラクロはやっぱり二つの果実に見入って荒い息を吐いた。

「美しい。愛らしい」

しつこく吸って摘まむ。その一方で、彼はシロールの騒がしい下腹部に長い指先で忍び寄った。

足の付け根を撫でる怪しい指の動きに、シロールは彼の肩に縋って身構えたが、前触れなく中指の腹で恥部の中心を叩かれて、はしたない声ととろんとした蜜を零した。
シロールは羞恥に震え、ラクロはひたすら興奮した。
更なる探究の為、彼の中指は蜜の溢れる源へずむりと侵入した。

シロールはやはり「ひゃ、ああん」と甘ったれた声を上げた。
シロールの痴態にラクロは息を荒げ、蜜の渦を指で掻き回し、狭い口腔を舌で掻き回した。
上からも下からも攻められてシロールは乱れた。ぐちゃぐちゃになった。
シロールの思考が溶けてきた頃にラクロは催促した。

「欲しい。もう待てん」

はうあうと懸命に呼吸を繰り返してシロールは答えた。

「――どうぞ」

途端ぬかるみから中指が引き抜かれ、透かさず指よりも熱く硬く太い塊が宛てがわれた。
あ、とシロールが思う間に切っ先がずぶんと沈み、下から体を押し上げる圧迫感が来た。反射的に腰を引き、シロールはラクロの肩を慌てて掴む。
ラクロはシロールの太腿を両手で押し広げて固定し、切っ先を突き立てた白い足の間を食い入るように見詰めた。
肩で息をして更に奥を目指す。
分厚い胴が進み、二人の腰がずっずと近付いていった。

この直後シロールは「われた」と感じた。こわれた。封印が消滅した。
感傷も感慨も感じる暇は無く、最奥に彼の切っ先が届くや感極まり、彼よりかなり先に天国に辿り着いてしまった。
後はもう絶え間ない快感にひたすら翻弄され、はしたなく腰をうねらせては呑んだラクロを挑発した。
彼は野性に目覚めたようで、狭い穴の中で凶器と化した杭を小刻みに動かし、激しさを増しながらシロールを揺さぶった。
シロールの耳に吹き込まれる彼の息遣いが浅く、荒くなっていった。
散々切っ先で最奥を打ち付けたラクロはとうとうその瞬間を迎えた。
動きを止め、息を詰める。

「――、愛している」

彼の全身が戦慄いた。
体内で脈打つ存在を感じながらシロールは身震いした。
二、三度腰を前後に揺らして長い放流を終えると、ラクロは満足気な嘆息を吐いてシロールの素肌に口付けを降らせた。
紅潮した頬に唇を寄せ、律儀にも感想を述べる。

「天国を見た」

シロールはこくりと頷いた。
漸く、二人の初夜が終わった。





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