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魔王ルチフェロ
しおりを挟むなんとか八世さんがバタバタと逃げて行き、乱された憩いの空間が帰ってくる。
悪い人ではなさそう(?)だけど、馬鹿王にしかならない人材だと思う。
あれは、聖者という存在をどう扱うべきか、パパに聞きに行ったんだろうな……。
聖者にペコペコしちゃいかん!みたいな感じで叱責されて、王の加護を受けて、偉そうに戻ってきたりして。
……加護と言えば、私にある聖星の加護というやつ。
私が現世日本で、例えば熊を相手に戦えるかって言ったら、そんなの絶対に無理。でもこの世界で私は、何か特別な力で熊以上の化け物と戦えている。
だから何か不思議な力が私を包んでいるのはわかる。
今ならあの暴漢をギッタギタにできると思うし。
なーにが「全部口で受けろ」よ。キモすぎるでしょ。それに私のは別に臭くないもん。ばーかばーか。
お湯から腕を出して、伸ばし、曲げ、掌を握って、その拳に力を籠める。
「……私の身体が強くなってる気はしないのよね」
気を込めて掌を突き出すけど、私の手から何かが迸ることはない。当たり前か。
実際、ヴィクターが扱う剣は重たくて使えなかったし、西大門前では群衆に飲み込まれてぜんぜん前に進めなかった。
すると強化されているのは……ドコ?
「そいう話なら、心じゃないかな?」
「あ、そっか!」
たしかにそう!
心が守られていたら、怯えず、怯まず、どんな危機でも正しい動きを選べて、慌てず、震えず、思い描いた動作を行える。それが剣の奥義なのだから。
「でもそれだけじゃ……って、え?」
気が付けばすぐ右隣に男の子がいた。
一緒にお湯に浸かっていて、モチロン裸だ。
ふわっとした黒髪マッシュウルフ。
パッチリとした大きな黒目の中に紫の輝き。
長い睫毛。
スッと通ったあとでツンっとなる形のいい鼻。
少しだけ大き目な口。
白い肌。
お人形の様な完璧な輪郭。
頭に付けたヤギの角のアクセサリーもすっごく似合ってる。
フェリクスと同じ年頃の、9歳10歳くらいの男の子だ。
同じ年頃の女子目線だとヤバイくらいカッコよく見えるに違いない。
もし彼が小学校時代に同じフロアに居たら、私だってドキドキしながらバレンタインチョコを渡しちゃったりしたかもしれない。
「やあ、聖者」
私のお世話役を言い使っていた子とは、何かが違う。
読心っぽい事をされたし、普通に考えたらこの子は賢者アーヴィンの弟子、と言ったところ。
そもそもいつの間に隣に来てたの!?
流石にこれくらいの年の子と混浴は不味いので、咄嗟に自分を抱いて隠し、思わず周囲を見る。
唖然としてる私をそのままに、少年は小首を傾けて「ん~、何かちがうな……」と独り言をしつつ、思案し始める。
「……」
私は彼の言葉を落ち着かない気持ちで待つ。
数秒の後、少年は何かを思い出して指をパチンと弾いた。
「君の素敵な友達が良いことを言ってたな……聖女!そうだ聖女って言ってたんだ!聖者なんて呼ぶよりも断然良い!」
男の子は両手を広げて、勢いよくザパッとお湯から立ち上がる。
頭部と首の長さ、肩幅の完璧な調和。細くてしなやかな子供の身体。
思わず見ちゃうその股間には、カルノヴァよりも全然立派な……それにも拘らず、グロテスクな印象は無い男性の印が付いている。
「い゛」
私もエッチイラスト描いてる時に、子供の身体に、大人の~っていうシチュエーションで色々妄想はしたことがある。
でも、イザその実物を見せつけられると、やっぱり怖い。
「改めて、初めまして聖女イズミ!」
彼はニッコリ笑って私の前に立ち、顔を突き出してくる。
この子……何かが変だ。
姿は子供、それも天使のような。
男の子の瞳の中の紫が妖しく光を放つと、彼の背面からお湯を跳ね上げて幾重もの黒翼が広がり、そして股間の大人なソレが、勃起して艶やかにそそり立つ。
広げられた翼の影に包まれた私の全身に鳥肌が立ち、同時に心臓と下腹がキュン!と跳ねた。
「僕は魔星から来た、「君たち」には魔王と云われる存在さ。そうだ、ちゃんと名乗らないとね。僕は魔王ルチフェロ。よろしく、聖女イズミ。会えてとっても嬉しいよ」
彼はそう言って私に右手の人差し指を立てて見せてから、それを近づけてくる。
目の前にいるのは、子供の姿をした、とても恐ろしい存在。
現世で私を襲った暴漢などとは比べ物にならない程の禍々しい存在。
頭ではちゃんと理解しているのに、天使と見まがう美しい容姿に魅入られて、胸元へと延びる指先を避けずに乳首に受けた。
チョコンと可愛らしく。
とても可愛らしく乳首に触れてもらっただけ、それだけで身体の真ん中を悦びの光が走って、私はお湯の中で愛液を漏らし出した股間を押さえる。
「はぁ……!!」
その快楽は絶妙にコントロールされていて、意地悪な事に、私に羞恥心を残していた。
彼は乳首に押し付けた指の腹に僅かに力を籠めたり抜いたりして、動かしちゃうぞ動かしちゃうぞと私を脅す。
「あっ……あっ……」
これは悪魔の誘惑。
彼から快楽を貰ったら、そのとてつもない淫悦が、私を未来永劫縛ることになるのが分かる。
彼の指先から淫の気が迸って、乳首から私の身体に注がれていく、それが器から溢れた時、私の心は壊される。
恐怖で全身に汗が噴き出してるのに、彼の愛が欲しくて欲しくてたまらない。
「ふふあ!やめ!やめ!あぁ❤」
私は自分を守るために、満ちていく快楽で精神が決壊する前に、何とか身体の火照りを処理しようと、彼の前で泣きながら必死になってオナニーする。
水面下での行為とはいえ、超かっこいい男の子の目の前で、自慰しちゃってる。
恥ずかしいのに……ううん、恥ずかしいからこそ、気持ちいいんだと、わかってる。
見て欲しい、触って欲しい、その凄いペニスで犯してほしい、そんな淫猥な気持ちがどんどん膨らんでいく。
「ふぇえ❤」
「可愛いね。聖女イズミ」
そんなになってる私を、愛しげに見つめる美少年。
可愛いと言ってもらっただけで幸福感に満ちて、もっと乱れてもいいのだと安らいでしまう。
ああ!もう!ダメ!
「そこまでです。イズミ殿から離れてもらいましょう」
ドン!と杖が床を叩く音。
浴場の一角にあった、風呂桶ピラミッドがバラバラと崩れて、その後ろに立っていた賢者アーヴィンが颯爽とした姿を現した。
「……は?」
私は赤面しつつも真顔になった。
アンタいつからそこにいました?
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