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星見の塔
しおりを挟むアーヴィンを先頭に、星見の塔を幾階か降って、私達はゲストルームへと案内された。
豪勢な調度品の数々に目が眩む。
大理石の床に、暖色のカーペットが敷き詰められている。
天井や外周には、補色となる寒色の飾り幕やカーテン。
香炉や、明らかにシーシャ(水タバコ)っぽいものもある。そういえばヴィクターが何か吸っていたっけ……。
北欧風な印象のドレッサーやワードローブもある。
その区画にある黄金色で縁取られた大き目の姿見鏡は、映し出す対象を明るく見せてる。
今までそんな余裕もなかったから、あそこに座ってじっくりと自分の顔を見るのが少し怖い。
クイーンかキングサイズかと思うような天蓋のあるベッドには、遠目にもわかるくらいの艶のあるシーツが掛かっている。
あれ、もしかしてライディール様と同室!?
憧れの男性と二人でベッドの上に入り、天蓋のレースを閉じて……なんていう乙女の妄想が止まらなくなる。
排泄だお風呂だで大騒ぎしていた生活から一変、現代でも出来ないような贅沢な生活空間。
上質なソファーへの着座を促され、私はそこにお尻を沈める。
ふわっとした座り心地は、現代の家具と比べても遜色がない。
流石は聖なる都にいる賢者の住まい。ヤバい。
「大丈夫か、イズミ」
「はい。少し考えが纏まらないけど、一晩もすれば……」
ライディール様に顔を覗き込まれ、私は彼に顔を見せる。
「そうか、何かあったら呼び鈴を鳴らしてくれ。今日は……いや、数日はゆっくり休むとしよう」
「はい……」
本当は聖者として今すぐにでも動かないといけないのかもしれないし、ライディール様だってザクセンを離れてそう何日も自由にしていられないはずなのに。
ライディール様は、アーヴィンと共に別階に消えていく。
私に気を使ってか、私のいない所で難しい話をするためか。
あるいはその両方か。
コトコトと階段を上ってくる音がして、アーヴィンと同じようなローブを来た少年が、杯を乗せた盆を両手に持ってやってきた。
年の頃は中学生くらいだけど、物凄く落ち着きのある所作と癖のない奇麗な顔立ち。
「聖者様、お飲み物をお持ちしました」
「あ、ありがとう」
その子が私の傍に立ち、盆を差し出してくるので、杯を受け取る。
もう、私が聖者であると告知(?)されてるのね。
その目に「女の聖者」ってどう映っているのかな?
やっぱり、サーライ様みたいな、説得力のある男性じゃないと頼りないかな?
彼はそのまま、盆を差し出した形で静止して、私が飲むのを待っている。
杯から漂う甘い香りはハチミツ酒みたいなものを連想させた。
これはきっと、ライディール様の指示。
クっと飲み干して、杯を盆に戻すと、少年はまるでからくり人形のように、またスーっと動き出す。
頭を下げてから、来た道をなぞる様にしてコトコトと階段を下っていく。
子供の頃から、高貴な人に仕えて生きてきているのを感じさせる。
ウィルシェとか、物凄く絵になりそう。
クルシュやフェリクスには、無理かな……。
ソファーに身を横たえて、目を閉じる。
「あれ……地球よね」
本流の世界でみた、青い聖星の姿を瞼の裏に描く。
そこから放たれて、この世界の陰の気……「闇」を祓う様に駆け巡っていた光が私なんだ。
なんかあのイメージ映像(?)だと、闇を切り裂くと云うよりも、闇を取り込んで浄化してた感じにも見えた。
あれは、戦う事だけが全てではない、そんな天啓なのだろうか。
そこまで疲れていないつもりだったけど、この姿勢になると急速に睡魔に襲われる。
やっぱり……相当疲れてたんだ……わた…し……。
また誰かが、多分さっきの子が、コトコトと階段を上ってくる。
「聖者様。お湯の用意ができました」
お湯の用意……。
「お湯!?」
私は猫缶が開く音を聞いた飼い猫の様に、目をカッと見開く。
お湯って!お湯よね!?白湯とかじゃなくて!
ソファーから転げ落ちそうになりながら立ち上がると、リネンタオルと石鹸の類を持ったローブ姿の少年が私に告げた。
「アーヴィン様より、聖者様のお世話を言い使っております。どうぞこちらに」
豪勢な調度品の数々に目が眩む。
大理石の床に、暖色のカーペットが敷き詰められている。
天井や外周には、補色となる寒色の飾り幕やカーテン。
香炉や、明らかにシーシャ(水タバコ)っぽいものもある。そういえばヴィクターが何か吸っていたっけ……。
北欧風な印象のドレッサーやワードローブもある。
その区画にある黄金色で縁取られた大き目の姿見鏡は、映し出す対象を明るく見せてる。
今までそんな余裕もなかったから、あそこに座ってじっくりと自分の顔を見るのが少し怖い。
クイーンかキングサイズかと思うような天蓋のあるベッドには、遠目にもわかるくらいの艶のあるシーツが掛かっている。
あれ、もしかしてライディール様と同室!?
憧れの男性と二人でベッドの上に入り、天蓋のレースを閉じて……なんていう乙女の妄想が止まらなくなる。
排泄だお風呂だで大騒ぎしていた生活から一変、現代でも出来ないような贅沢な生活空間。
上質なソファーへの着座を促され、私はそこにお尻を沈める。
ふわっとした座り心地は、現代の家具と比べても遜色がない。
流石は聖なる都にいる賢者の住まい。ヤバい。
「大丈夫か、イズミ」
「はい。少し考えが纏まらないけど、一晩もすれば……」
ライディール様に顔を覗き込まれ、私は彼に顔を見せる。
「そうか、何かあったら呼び鈴を鳴らしてくれ。今日は……いや、数日はゆっくり休むとしよう」
「はい……」
本当は聖者として今すぐにでも動かないといけないのかもしれないし、ライディール様だってザクセンを離れてそう何日も自由にしていられないはずなのに。
ライディール様は、アーヴィンと共に別階に消えていく。
私に気を使ってか、私のいない所で難しい話をするためか。
あるいはその両方か。
コトコトと階段を上ってくる音がして、アーヴィンと同じようなローブを来た少年が、杯を乗せた盆を両手に持ってやってきた。
年の頃は中学生くらいだけど、物凄く落ち着きのある所作と癖のない奇麗な顔立ち。
「聖者様、お飲み物をお持ちしました」
「あ、ありがとう」
その子が私の傍に立ち、盆を差し出してくるので、杯を受け取る。
もう、私が聖者であると告知(?)されてるのね。
その目に「女の聖者」ってどう映っているのかな?
やっぱり、サーライ様みたいな、説得力のある男性じゃないと頼りないかな?
彼はそのまま、盆を差し出した形で静止して、私が飲むのを待っている。
杯から漂う甘い香りはハチミツ酒みたいなものを連想させた。
これはきっと、ライディール様の指示。
クっと飲み干して、杯を盆に戻すと、少年はまるでからくり人形のように、またスーっと動き出す。
頭を下げてから、来た道をなぞる様にしてコトコトと階段を下っていく。
子供の頃から、高貴な人に仕えて生きてきているのを感じさせる。
ウィルシェとか、物凄く絵になりそう。
クルシュやフェリクスには、無理かな……。
ソファーに身を横たえて、目を閉じる。
「あれ……地球よね」
本流の世界でみた、青い聖星の姿を瞼の裏に描く。
そこから放たれて、この世界の陰の気……「闇」を祓う様に駆け巡っていた光が私なんだ。
なんかあのイメージ映像(?)だと、闇を切り裂くと云うよりも、闇を取り込んで浄化してた感じにも見えた。
あれは、戦う事だけが全てではない、そんな天啓なのだろうか。
そこまで疲れていないつもりだったけど、この姿勢になると急速に睡魔に襲われる。
やっぱり……相当疲れてたんだ……わた…し……。
また誰かが、多分さっきの子が、コトコトと階段を上ってくる。
「聖者様。お湯の用意ができました」
お湯の用意……。
「お湯!?」
私は猫缶が開く音を聞いた飼い猫の様に、目をカッと見開く。
お湯って!お湯よね!?白湯とかじゃなくて!
ソファーから転げ落ちそうになりながら立ち上がると、リネンタオルと石鹸の類を持ったローブ姿の少年が私に告げた。
「アーヴィン様より、聖者様のお世話を言い使っております。どうぞこちらに」
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