女子高生剣士の私が異世界に転移したら大変なことになった 第一部

瑞樹ハナ

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抗う事なんて、出来ない

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大歓声を全身に浴びながら踏み込んだ先で、客席に意中の人を見つけて硬直する私。
見間違うはずもないライディール様と目が合い、彼も私を認識してるのが分かって、心臓が跳ねた。
足元に地響きのような振動が走り、ガラガラと大きな歯車装置を回す音が聞こえ、視界の先の闘技場に空いた底から、魔物を乗せた床がせりあがる。
視線を遮るように、私とライディ―ル様の間に出現したのは淫魔とも呼ぶべき異形の魔物。それはまさしく、昨日、ヴィクターの目の前で私を壊した、巨大イソギンチャクに似た魔物と同じ種だった。
その姿を見ただけで、最高の悪夢と呼ぶべき最低の体験が思い起こされる。
そして思い出しただけ、たったそれだけで、何もされてないのに、私の下腹に御し難い淫蕩な感覚が熱となって広がっていく。
私の身体に起きた変化を敏感に察知した観衆のトーンが跳ね上がった。
「あの娘、もう欲してるじゃないか!」
誰かが、もしかしたらマルドゥークの「仕込み」となる者が、皆に聞かせる様に大声を発する。
「開始と同時に剣を放り出して魔物に抱かれにいくのつもりではないのか?」
会場一体となった笑い声が響く。
悪魔司祭の思惑通りに、羞恥心を煽られて、心のバランスが乱される。
「見ろ!あのもの欲しそうな顔を!」
事実、私の身体はもうゾクゾクと震えていて、誰の目にもはっきりわかる程に乳首が衣服を持ち上げていて、そして、太腿を筋となった愛液が涎の様に垂れ流されていた。
ライディ―ル様が見ているのに······!
その一心で理性を繋ぎ止め、失ってはいけない自尊心、羞恥心に縋って、ぷるぷる震えながら顔面崩壊をアクメ顔寸前で留めている。
「はうう······」
首を振る、下腹に力を入れる、ぬめる内股をすり合わせる、手を握り締める、唇を咬む······細かな動作で、淫らになろうとする心と体に抗う。
試合開始の合図ってあるの?
それが鳴ったらどうなるの?
大きすぎる快楽への期待と恐怖がせめぎ合う。
あの物凄い快楽が、また私に──。
チラリと主催者席を見れば、満足顔の西のスラム王の姿があり、彼は直立して、肘から上の手を真っ直ぐに上げた姿勢で止まっている。
開始の合図は彼が上腕を下げた時。
私は彼と目が合い、悪魔教の司祭はニヤリと笑う。焦らしているのだ。
「う!う!」
私は涙を浮かべて懇願の表情を作り、もう我慢出来ないとお尻を大きく左右に振って身振りでも彼に訴える。
早く私に、あれをちょうだい!
「可哀想だからはやく魔物とのまぐわいを許可して差し上げたらどうですか!」
また誰かが大声で場を煽り、大爆笑の渦が生まれた。
全身が沸騰したように熱くなる。
自分でもどうしたいのかわからない。
自分で自分がわからない。
ライディール様が見ている前で魔物に汚されてしまう······そんな自分を想像して、息が乱れる。ヴィクターにも呆れられたあの痴態なのだから、同じように心底呆れられるに違いない。汚らわしいとさえ思われるだろう。それなのに、彼に私のエッチな姿を見てもらいたいと······そう思い始めてる。
期待を込めた上目遣いで、客席にいるライディール様に濡れた視線を送ろうとした、その時だった。

「イズミ?!」

客席から、声が飛ぶ。
「え!?」
見上げた先に、私は弟のように思い始めてる男の子の顔を見て、刀を落としそうになるほどの衝撃を受ける。
フェリクスが、お兄ちゃんを探しているはずの男の子が、そこにいる。

マルドゥークの腕が振り下ろされ、試合開始の笛が闘技場内に響いた。
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