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私も生贄
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案内された闘士控室には、闘士とは名ばかりの、生贄達が集められていた。
絶望に支配され、ギロチンに怯えた死刑囚のような顔つきの面々が揃い、陰鬱な空気が目に見える闇となって部屋中に覆い被さっている。
今日は魔物と人が戦う試合のみが行われるらしい。
真正面からの一対一で魔物に勝てる者などそうはいないのだろう。
今日ここに集められた彼らは、一体どんな理由で、見世物として命を懸けることになったのか。
馴れ馴れしく私の肩に手を置いて、マルドゥークが囁く。
「他人を気にしてる場合ですか?まあいいでしょう、彼らの多くは既に報酬を受け取り、それを「遺族」に渡しているのですよ」
確かに、彼等には万に一つも生存は望めないのだろう。
それでもそこは、「愛する家族に」と言うべきところでしょう。人の心があるのなら。
私は、心底軽蔑できる下卑た男を睨みつける。
「これから行われる惨劇は、残忍な観客ですら息を呑むものとなるでしょう。良心が一欠片でもあれば、目を背け、席を立ってしまう。ですから我らは、まず客達に最高級の美酒を振る舞って酔わせ、最初の試合に貴女のような贄とするに相応しい美女を用意し、淫乱ショーで彼らの心を麻痺させるのですよ」
彼は私の視線を意に介さず、クスクスと笑う。
「貴女にもお酒を振る舞いましょうか?俗世を忘れて、見栄や虚栄を捨てて、全ての気取りを取り除いて、この世のものとは思えぬ極上の快楽にその身を委ねる事ができますよ?恋人との情交が物足りなくなってしまいますが、あんなのは所詮子孫を残す為の交尾にしか過ぎません。心配いりません、貴女のような美しい娘が欲したなら、私は何時でもこの場を提供してあげられるのですから!」
悪魔教の司祭はどこまでも饒舌になり、一人朗々とセリフを読み上げ、天に向かって両手を掲げる。そしてゆっくりと降ろされた手は、私の肩から、背を滑り、焦らすように腰に留まった後、お尻に触れ、ゆっくりゆっくりと撫で回しだす。
言葉で心をかき乱されている私に、その手を払う余裕はない。
不快で耳障りなのに、這いよって絡め取るように耳に入ってくる言葉を、シャットアウトできずにいた。
「試合後に、どうしても人間の男が欲しければ、私にいいなさい。何人でも何十人でも、ご用意して差し上げます。なんなら私もお相手致しましょう。ですが、ヴィクターはお辞めなさい。彼は母を、女を心底憎んでいますからね」
耳を貸さない姿勢を貫く私に、興味を示さずにはいられない、知人の過去を匂わす男。
私はそれにまんまとに反応してしまい、悪辣な西スラムの王を睨みつける。
「アンタみたいなの、私の世界では、地獄に落ちる前にその舌を引きちぎられる事になってるのよ?」
私の言葉を余裕綽々に聞き流し、マルドゥークはネットリと笑った。
「さあ、宴のお時間ですよ。お嬢さん」
目の前で鉄製の扉が巻き上げられていく。
それと同時に、私のお尻を撫で続けていた彼の手によってスカートが捲り上げられ、掌から手の甲までを使ってうねり擦り付ける様に、その手が私の尻肉の間に割って入り、潜り込んだ後はそのまま指先がお尻の割れ目に突き立てられ、一端下がる素振りを見せた後、肛門を触られると思った私がビクンと身を固くしたところで、つつーと割れ目の終わりまで昇って、その汚らわしい指先が、やっと私から離れる。
「今宵の貴女はまさしく聖女です。振り返ってみなさい。今日の生贄となる男達が、貴女の白くて大きすぎる、ちょっと汗ばんで赤みがでてる、奇麗で柔らかなお尻を食い入るように見ています。物欲しそうに見られています。触れようと手を伸ばす者もいます。死の恐怖と絶望に暗く沈んでいたのに、今や勃起している者も数名いるようですよ。ホラ、言って勇気付けて差し上げたらどうですか、生き残ったなら、彼等皆と夜を共にしてもいいと。この身体を自由にしてもよいと。それでは私は主催者席に行かねばならぬので、失礼させていただきましょう」
マルドゥークが立ち去り、轟音と共に、鉄の扉が完全に持ち上がった。
今、私の目の前には円形の闘技場が広がり、その全25段の客席には、人々が酒瓶を片手にひしめき合い,
宴の開幕に拍手喝さいの合唱を放っている。
足元がふわふわする。闘技場の砂地が、まるで、ふかふかと沈み込む絨毯が敷かれた高級ホテルの廊下のように感じる。
私が姿を現すと、客席からはどよめきと悲鳴が上がった。
そしてそれらは大歓声となって私の全身を打つ。
皆の熱狂が下腹に響く。
皆の視線が暴力的に浴びせられる。
私の顔に、首に、胸に、腹に、腰に、尻に、肩に、手足に。
胃液が逆流して、私は口元を覆った。
うっすら滲んだ涙で視界が霞む。
そして私は······。
「うそ······でしょ······」
客席に、見間違うはずもない男性の姿を見る。
騎士長ライディ―ル様の姿を。
絶望に支配され、ギロチンに怯えた死刑囚のような顔つきの面々が揃い、陰鬱な空気が目に見える闇となって部屋中に覆い被さっている。
今日は魔物と人が戦う試合のみが行われるらしい。
真正面からの一対一で魔物に勝てる者などそうはいないのだろう。
今日ここに集められた彼らは、一体どんな理由で、見世物として命を懸けることになったのか。
馴れ馴れしく私の肩に手を置いて、マルドゥークが囁く。
「他人を気にしてる場合ですか?まあいいでしょう、彼らの多くは既に報酬を受け取り、それを「遺族」に渡しているのですよ」
確かに、彼等には万に一つも生存は望めないのだろう。
それでもそこは、「愛する家族に」と言うべきところでしょう。人の心があるのなら。
私は、心底軽蔑できる下卑た男を睨みつける。
「これから行われる惨劇は、残忍な観客ですら息を呑むものとなるでしょう。良心が一欠片でもあれば、目を背け、席を立ってしまう。ですから我らは、まず客達に最高級の美酒を振る舞って酔わせ、最初の試合に貴女のような贄とするに相応しい美女を用意し、淫乱ショーで彼らの心を麻痺させるのですよ」
彼は私の視線を意に介さず、クスクスと笑う。
「貴女にもお酒を振る舞いましょうか?俗世を忘れて、見栄や虚栄を捨てて、全ての気取りを取り除いて、この世のものとは思えぬ極上の快楽にその身を委ねる事ができますよ?恋人との情交が物足りなくなってしまいますが、あんなのは所詮子孫を残す為の交尾にしか過ぎません。心配いりません、貴女のような美しい娘が欲したなら、私は何時でもこの場を提供してあげられるのですから!」
悪魔教の司祭はどこまでも饒舌になり、一人朗々とセリフを読み上げ、天に向かって両手を掲げる。そしてゆっくりと降ろされた手は、私の肩から、背を滑り、焦らすように腰に留まった後、お尻に触れ、ゆっくりゆっくりと撫で回しだす。
言葉で心をかき乱されている私に、その手を払う余裕はない。
不快で耳障りなのに、這いよって絡め取るように耳に入ってくる言葉を、シャットアウトできずにいた。
「試合後に、どうしても人間の男が欲しければ、私にいいなさい。何人でも何十人でも、ご用意して差し上げます。なんなら私もお相手致しましょう。ですが、ヴィクターはお辞めなさい。彼は母を、女を心底憎んでいますからね」
耳を貸さない姿勢を貫く私に、興味を示さずにはいられない、知人の過去を匂わす男。
私はそれにまんまとに反応してしまい、悪辣な西スラムの王を睨みつける。
「アンタみたいなの、私の世界では、地獄に落ちる前にその舌を引きちぎられる事になってるのよ?」
私の言葉を余裕綽々に聞き流し、マルドゥークはネットリと笑った。
「さあ、宴のお時間ですよ。お嬢さん」
目の前で鉄製の扉が巻き上げられていく。
それと同時に、私のお尻を撫で続けていた彼の手によってスカートが捲り上げられ、掌から手の甲までを使ってうねり擦り付ける様に、その手が私の尻肉の間に割って入り、潜り込んだ後はそのまま指先がお尻の割れ目に突き立てられ、一端下がる素振りを見せた後、肛門を触られると思った私がビクンと身を固くしたところで、つつーと割れ目の終わりまで昇って、その汚らわしい指先が、やっと私から離れる。
「今宵の貴女はまさしく聖女です。振り返ってみなさい。今日の生贄となる男達が、貴女の白くて大きすぎる、ちょっと汗ばんで赤みがでてる、奇麗で柔らかなお尻を食い入るように見ています。物欲しそうに見られています。触れようと手を伸ばす者もいます。死の恐怖と絶望に暗く沈んでいたのに、今や勃起している者も数名いるようですよ。ホラ、言って勇気付けて差し上げたらどうですか、生き残ったなら、彼等皆と夜を共にしてもいいと。この身体を自由にしてもよいと。それでは私は主催者席に行かねばならぬので、失礼させていただきましょう」
マルドゥークが立ち去り、轟音と共に、鉄の扉が完全に持ち上がった。
今、私の目の前には円形の闘技場が広がり、その全25段の客席には、人々が酒瓶を片手にひしめき合い,
宴の開幕に拍手喝さいの合唱を放っている。
足元がふわふわする。闘技場の砂地が、まるで、ふかふかと沈み込む絨毯が敷かれた高級ホテルの廊下のように感じる。
私が姿を現すと、客席からはどよめきと悲鳴が上がった。
そしてそれらは大歓声となって私の全身を打つ。
皆の熱狂が下腹に響く。
皆の視線が暴力的に浴びせられる。
私の顔に、首に、胸に、腹に、腰に、尻に、肩に、手足に。
胃液が逆流して、私は口元を覆った。
うっすら滲んだ涙で視界が霞む。
そして私は······。
「うそ······でしょ······」
客席に、見間違うはずもない男性の姿を見る。
騎士長ライディ―ル様の姿を。
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