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イヤな奴等
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それから……。
フェリクスはお兄ちゃん探しに。そして私は買い物の続きに。
私は先ほど買いそびれたヘアオイルを手に入れて、衣類を新調しようかと悩みつつ、街を流している。
つい昨日くらいまでは、新しい服を買うのを楽しみにしてたんだけど……。
西門まで伸びる坂道を下り、男性4人のグループとすれ違う。
彼らは私の胸を見て、脚を見て、顔を見て、剣を見つつすれ違った後、足音を止めた。今多分お尻を見てる。視線で分かる。
私は後ろ手にスカートを抑えつつ少し足早に歩き出す。
今の私の、下着も身に着けてないのに30センチ丈のスカートを履いてる状態が、恥ずかしいのに、しっくりきてる。
この衣装は、一応カルノヴァが親切で一式そろえてくれたものだし。
洗濯もできる環境になったし。
お金だってそんな湯水のようには使えないし。
衣装は新調せずに、まだこれでいいかな~……なんて。
今までの私を作っていたのは、現代日本社会の空気感。
私は無意識にそれに沿うように自分を形成していて、それが異世界にきて2週間で、また自然と「この世界」にあわせて書き換わってるのだと思う。
たぶん。
これが本当の私とかじゃなくて、人を作るのは周りの空気。
そんなものでしょう?
行き交う人々を見る。
この世界で生きてる人たちの顔を。
ああ、そうだ。
ここを離れずに……でも戦いに巻き込まれずに済む方法を考えないといけない。
第一は、私に接触してくる北スラムの人物に、「私はどこにも味方しない、関わらないから、ほっといてください」と伝える事だろう。
でも、彼らがどんな人物か分からない。
互いに信頼関係を築けないのなら、私は彼らの影に怯えることになり、そしてその魔の手がフェリクスにまで及ぶことを心配することになる。
……アレコレ考えても仕方がない。
超いい人って可能性もきっとある。
ヴィクターが急ぎ動いたのは、北の動きも早いからに違いない。
さっさと来い、私はここに居る。
また、向こうから男性四人のグループが、坂を上って来る。
見た目はごく普通。一人目つきの悪い黒髪がいるが……。
彼ら全員の視線が、まず胸に刺さる。そしてその視線は、一人は顔、一人は剣、一人は手、一人は足と分散した。
私が立ち止まると、彼らも歩みを止める。
まあ既に一人を除いて、私の間合に入っちゃってますけどね。
間合いに入らず止まったのは、剣を見た男。あの目つきの悪い男。
「どうしてわかった?」
その4人には序列か役割があるに違いない。
顔を見てきた奴がトップで、そいつが私に話しかけている。他三人は彼の護衛だろう。
「南スラムの王から、貴方たちが来ると聞いてた。あとは勘」
「なるほど。返答を聞いても?」
「私は貴方たちを知らないし、三日前にここに来たばかり。スラムの何方様に対しても、味方する理由も、敵対する理由もありません。そのように、お伝えください」
坂道を上るように風が吹き、私のスカートが舞い上がってしまい、前屈みになってパッと両手で押さえる。
突然生まれた私の隙に、彼らの気配は微塵も揺らがなかった。
少なくとも、今日この場で……との命令は受けてないのだろう。
「伝えよう」
男はそう言って、また歩き出す。
すれ違いざま。
「お前、小陰唇デカくね~?」
と、剣を見た男が私に耳打ち。
「なっ……!」
そして、尻たぶをパン!と叩かれた。
男はそのまま過ぎ去っていき──。
──私は真っ赤になって震えながら立ち尽くした。
はあ???
はぁあああ???
え?
はあああああ?!
なにあれ、あの一瞬で見えたぜ、みたいな、目の良さアピール?
俺でなきゃ見逃しちゃうね?みたいな!?
うっつさいわボケ!
私は一晩で9000ダラ稼いだ女だぞ舐めんな。
顔覚えたからね。
スラムの抗争に興味ないけど、アイツ叩き潰すのは興味あるわ。
「くっ……」
歯噛みしつつ振り返り、彼らが去って行った坂の上を睨らんだ。
睨んだ先にふつうのオジサンがいて、彼がビクッとする。
「あ、なんでもないです。ゴメンナサイ」
フェリクスはお兄ちゃん探しに。そして私は買い物の続きに。
私は先ほど買いそびれたヘアオイルを手に入れて、衣類を新調しようかと悩みつつ、街を流している。
つい昨日くらいまでは、新しい服を買うのを楽しみにしてたんだけど……。
西門まで伸びる坂道を下り、男性4人のグループとすれ違う。
彼らは私の胸を見て、脚を見て、顔を見て、剣を見つつすれ違った後、足音を止めた。今多分お尻を見てる。視線で分かる。
私は後ろ手にスカートを抑えつつ少し足早に歩き出す。
今の私の、下着も身に着けてないのに30センチ丈のスカートを履いてる状態が、恥ずかしいのに、しっくりきてる。
この衣装は、一応カルノヴァが親切で一式そろえてくれたものだし。
洗濯もできる環境になったし。
お金だってそんな湯水のようには使えないし。
衣装は新調せずに、まだこれでいいかな~……なんて。
今までの私を作っていたのは、現代日本社会の空気感。
私は無意識にそれに沿うように自分を形成していて、それが異世界にきて2週間で、また自然と「この世界」にあわせて書き換わってるのだと思う。
たぶん。
これが本当の私とかじゃなくて、人を作るのは周りの空気。
そんなものでしょう?
行き交う人々を見る。
この世界で生きてる人たちの顔を。
ああ、そうだ。
ここを離れずに……でも戦いに巻き込まれずに済む方法を考えないといけない。
第一は、私に接触してくる北スラムの人物に、「私はどこにも味方しない、関わらないから、ほっといてください」と伝える事だろう。
でも、彼らがどんな人物か分からない。
互いに信頼関係を築けないのなら、私は彼らの影に怯えることになり、そしてその魔の手がフェリクスにまで及ぶことを心配することになる。
……アレコレ考えても仕方がない。
超いい人って可能性もきっとある。
ヴィクターが急ぎ動いたのは、北の動きも早いからに違いない。
さっさと来い、私はここに居る。
また、向こうから男性四人のグループが、坂を上って来る。
見た目はごく普通。一人目つきの悪い黒髪がいるが……。
彼ら全員の視線が、まず胸に刺さる。そしてその視線は、一人は顔、一人は剣、一人は手、一人は足と分散した。
私が立ち止まると、彼らも歩みを止める。
まあ既に一人を除いて、私の間合に入っちゃってますけどね。
間合いに入らず止まったのは、剣を見た男。あの目つきの悪い男。
「どうしてわかった?」
その4人には序列か役割があるに違いない。
顔を見てきた奴がトップで、そいつが私に話しかけている。他三人は彼の護衛だろう。
「南スラムの王から、貴方たちが来ると聞いてた。あとは勘」
「なるほど。返答を聞いても?」
「私は貴方たちを知らないし、三日前にここに来たばかり。スラムの何方様に対しても、味方する理由も、敵対する理由もありません。そのように、お伝えください」
坂道を上るように風が吹き、私のスカートが舞い上がってしまい、前屈みになってパッと両手で押さえる。
突然生まれた私の隙に、彼らの気配は微塵も揺らがなかった。
少なくとも、今日この場で……との命令は受けてないのだろう。
「伝えよう」
男はそう言って、また歩き出す。
すれ違いざま。
「お前、小陰唇デカくね~?」
と、剣を見た男が私に耳打ち。
「なっ……!」
そして、尻たぶをパン!と叩かれた。
男はそのまま過ぎ去っていき──。
──私は真っ赤になって震えながら立ち尽くした。
はあ???
はぁあああ???
え?
はあああああ?!
なにあれ、あの一瞬で見えたぜ、みたいな、目の良さアピール?
俺でなきゃ見逃しちゃうね?みたいな!?
うっつさいわボケ!
私は一晩で9000ダラ稼いだ女だぞ舐めんな。
顔覚えたからね。
スラムの抗争に興味ないけど、アイツ叩き潰すのは興味あるわ。
「くっ……」
歯噛みしつつ振り返り、彼らが去って行った坂の上を睨らんだ。
睨んだ先にふつうのオジサンがいて、彼がビクッとする。
「あ、なんでもないです。ゴメンナサイ」
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