女子高生剣士の私が異世界に転移したら大変なことになった 第一部

瑞樹ハナ

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騎士長ライディール

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検問所の取調室にやってきた男性。
その腰には、ここにいる誰と比べても明らかな格の違いを感じさせる、紋章入りの西洋剣、所謂騎士剣が下げられている。
ドラAもドラBも、そしてドスケベ最低糞馬鹿オヤジも、完全に腰が引けていた。
男は、超が付くほどの美形だった。
そこ居るだけで空気感を支配し、一変させ、風が吹き抜けたかと錯覚するほどの。
歩みを進めるごとに、栗色の髪が涼やかに流れる。
中性的な美形じゃなく、逞しさの中に優美さを備えた、男性的な美。
力強く光る濃い碧瞳に、くっきりとした目鼻立ち。
肩幅ガッチリして、つま先から頭までシュッとした流れのあるシルエット。
思わず呆け見とれてしまった後、ハッとなって足を閉じる。
ぱん!と太腿肉がぶつかってエッチな飛沫が飛んで、それがオークオヤジの顔にかかったけど、本人もそんなの気にしてる場合ではないらしく目も瞑らなかった。
「は、ははは。こーれーは騎士長殿!閣下などとお人が悪い。いえ、こんな所にまでお越しになるとは思いませんでした、我々は治安維持のため市民の······」
「ご苦労な事だね管理長。ところでその娘にまだなにか不審な点はあるか?そもそも何か不審な点はあったのか?現場を知らない俺には分らんが、説明していただけると大変にありがたい」
「めめめ滅~相~もありません、貴方様のご慧眼が、我々の僅かな経験に劣るはずがありませぬ。お前達、検査は終わりだ、持ち物を返して差し上げろ」
「「はっ!」」
ドラAは、うってかわった紳士的な仕草で私の手を取り、補助して高い検問台から降ろしてくれる。そんな私の肌を隠すように、ドラBは私の衣装を広げ、胸の前に垂らす。
今更遅いわアホ。
そのまま大きな姿鏡がある別室に通されたけど、そこにはとんでもなく淫らな自分の姿が映ってそうに思えて怖くて、鏡を壁方向に向けてから、衣装を着る。
そして三馬鹿が深々と頭を下げる中、騎士長様に保護されて、検問所から無事に出る事が出来た。
いえ、これ無事っていうのかな。大怪我した気がする······。
「イズミ!」
詰所前で待っていてくれたフェリクスが駆け寄ってくる。
心配して、待っててくれたんだ!?
早くお兄ちゃんに会いに行きたいだろうに!
でも、今はそれどころじゃない。私の隣に凄いの居るでしょ!そこで待ってて!
「あの、ありがとうございました」
そういえば私この人に裸みられちゃってるぅう!なんて乙女な思考をしつつ、騎士長と呼ばれていた恩人のイケメンさんに頭を下げる。
彼はニコリと小さく笑った。
うっ。完璧すぎる······。
「うん。キミもまあ、悪く思わないでくれたまえ。それと、お礼はその子に言うといいよ。俺は偶然通りがかっただけだ。彼が大騒ぎしていたからこその流れだったからね」
そうなんだ······ありがとうフェリクス!とりま後でちゃんとお礼するからね!そんな訳だからもうちょっと待っててね!
「あの、本当に······」
「ここにおられましたかライディール様!」
人混みを割って、数名の騎士がやってくる。将軍がお呼びですとかなんとか、そんな事務連絡のようだ。
「おっと、じゃあこれで失礼するよお嬢さん。ザクセンを楽しんでいってくれ」
彼は私の傍らを離れ、騎士達と合流し、その場を去っていった。
「ライディ―ル······様······」
素敵な人だった······なんか一気に私の心の中にはない物語感がでてきた感じがする。
ここに「ガチ異世界に来ちゃった説」に清き一票を追加します!
「おい、行くぞイズミ。おい」
頬を膨らませた少年が、私の足を軽めに何度も蹴とばしてくる。
「ん······なんか私熱っぽい、頭へんかも······。フェリクス、宿みたいなとこ、探して······」
「お前ほんっとに世話が焼けるな。それなら多分あっちだ」
足元をふわふわさせたまま、少年に手を引かれて大門前を離れ、市街に向かう。

ともあれこうして私は、無事に東都ザクセンに到達した。
この街で、運命が大きく動く。そんな予感がしていた。
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