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ムー大陸編
21王宮の客人となる
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アルハザードと二人、大広間から応接室に案内された。応接室とはいっても、広さは五十畳くらいはあるのではないだろうか。もちろん、天井も床も壁も全てが金色に光輝いている。
テーブルに案内され、案内の女性が目の前のテーブルの上に置いた白い取っ手のついていないカップには赤い液体が入っていた。一口飲んでみると甘酸っぱいイチゴジュースのような味がした。
「これが黄金人の飲み物かな」
「いや、これは白色人の飲み物だ、黄金人の飲み物は黄金人、つまり王族以外には絶対に飲めないそうだ」
「でも、一段階上になったっていうことなのかな」
「そうだね、少なくとも、食べ物ではそうなったということかな」
テーブルの反対側に数人の黄金人と共にラ・ムーが席についた。
黄金人たちの前にも黄金色のカップが置かれたが、どのような飲み物が入っているのかは見えなかった。
「海を越えて来たと言っていたが、それは船に乗って来たのかね」
間近で聴くラ・ムーの声は声量を落としているせいか、荘厳というよりも、優しく語りかけてくような口調だった。
「大きな船に乗って来たのですが、この島に着いた時に船は岩盤に突き当たり大破しました。生き残ったのは僕とこの男の二人だけです」
アルハザードがありもしないことをスラスラと話した。
ラ・ムーはアルハザードの話をじっと聞いていたが、体からふっと力が抜けたように見えた。
「そうか、それは難儀なことであったな。しばらくはこの王宮に滞在するがいい。客人として迎えよう、よいな」
周りの黄金人たちを見た。皆無表情だった。この島ではこれが肯定ということらしい、ラ・ムーは満足そうに案内係の白色人に「この二人を客人用の部屋に案内しなさい」と告げ、黄金人たちを伴って部屋を出て行った。
「神谷、テーブルの下を見てごらん」
テーブルの下を覗くと、テーブルに足はなく、天板が浮いている状態だった。これは街の定食屋で見た光景と同じだ。
「この国ではこれが普通らしいね」
「さっき僕たちの風貌がいきなり黄色人からこの姿に変わっても何も言われなかったね、それも普通なのかな」
「別にその程度のことは不思議だとは思わないんだろうね」
テーブルの上には花瓶が置かれていて、そこには案内係の胸に刺繍されていた黄金色の花が咲いていた。
「花瓶が置かれているから、初めからあったんだね」
「そうだね、そしてこの液体を飲み終わっても消えないね」
甘酸っぱいジュースを飲み終えると、案内係の女性が脇に立っていた。
「宜しければ、部屋に案内しますが、いかがいたしますか」
「その前にこの王宮の中を見学したいのですが、どうでしょうか」
アルハザードの申し入れに女性は相変わらず無表情に「では、王族の方にその旨のお話をしてきます。このままお待ちください」と言い残してその場を去って行った。
「王宮を見学するって、何かあるのかい」
「それが分からないから見学するんだよ。神谷、憶えてるかい、一番初めに会った白色人は僕を普通の人間ではないと断言した、しかし、次にあった赤色人は何も言わなかった。いや、言わなかったのではない、言えなかったんだ。何も感じなかったんだろう。二人とも精神力増幅装置を積んだ車に乗っていた、だが、感じ方が違っていた。不思議だとは思わないか。そして先ほどのラ・ムーだ。僕たちが黄色人の格好をいきなり解いても何も言わなかった、そして、島の外から来たと聞いて、ひどく困惑した顔をしていた。なぜだだと思う」
「そんなこと分かる訳ないじゃのいか。ずいぶんと色々な疑問を持ったんだね、あの短い時間で」
「そうだ、あの短い時間にたくさんの疑問を持ったんだ、だから、それを調べてみたいのさ」
「それが君の望みを叶えることに関係するのかな」
「この王宮を見ることはこの島、ムー大陸を知ることだ。それに……」
「それに?」
「こいつが、そろそろ神谷のギタラを聴きたがっている。部屋に案内されたら早速弾いてもらいたいそうだ」
そうすれば邪神が何かを教えてくれる、ということだろうか。
神谷の考えが分かったのか、アルハザードが肩に乗っているはずの邪神の方を見てクスリと笑った。
その日は客人用の部屋に案内され、翌日から案内係つきで見学できることになった。部屋のドアはホテルと同じく、壁を触ると上に上がり、中は天井も壁も床も白かった。
案内係の女性は、翌日の朝に迎えに来ることを告げると、去って行った。
「割と広い部屋だね」
白い何もない空間だが、十畳くらいの広さがあった。
床に腰を降ろしたアルハザードの肩のあたりから邪神が飛び降りた。
「こいつが早く弾けって言ってるよ」
何もなかった部屋に白い石が現れた。神谷が座るための椅子なのだろう。今日は部屋と同じ色にしたようだ。
「防音仕様にしないのかな」
「この部屋はギターの音くらいは外に漏れないようにできているそうだ、だから、存分に弾いてくれって言ってるよ」
アルハザードの言葉が聞こえたのか、床に寝転がった邪神が目を細めて小さく「ニャー」と鳴いた。
テーブルに案内され、案内の女性が目の前のテーブルの上に置いた白い取っ手のついていないカップには赤い液体が入っていた。一口飲んでみると甘酸っぱいイチゴジュースのような味がした。
「これが黄金人の飲み物かな」
「いや、これは白色人の飲み物だ、黄金人の飲み物は黄金人、つまり王族以外には絶対に飲めないそうだ」
「でも、一段階上になったっていうことなのかな」
「そうだね、少なくとも、食べ物ではそうなったということかな」
テーブルの反対側に数人の黄金人と共にラ・ムーが席についた。
黄金人たちの前にも黄金色のカップが置かれたが、どのような飲み物が入っているのかは見えなかった。
「海を越えて来たと言っていたが、それは船に乗って来たのかね」
間近で聴くラ・ムーの声は声量を落としているせいか、荘厳というよりも、優しく語りかけてくような口調だった。
「大きな船に乗って来たのですが、この島に着いた時に船は岩盤に突き当たり大破しました。生き残ったのは僕とこの男の二人だけです」
アルハザードがありもしないことをスラスラと話した。
ラ・ムーはアルハザードの話をじっと聞いていたが、体からふっと力が抜けたように見えた。
「そうか、それは難儀なことであったな。しばらくはこの王宮に滞在するがいい。客人として迎えよう、よいな」
周りの黄金人たちを見た。皆無表情だった。この島ではこれが肯定ということらしい、ラ・ムーは満足そうに案内係の白色人に「この二人を客人用の部屋に案内しなさい」と告げ、黄金人たちを伴って部屋を出て行った。
「神谷、テーブルの下を見てごらん」
テーブルの下を覗くと、テーブルに足はなく、天板が浮いている状態だった。これは街の定食屋で見た光景と同じだ。
「この国ではこれが普通らしいね」
「さっき僕たちの風貌がいきなり黄色人からこの姿に変わっても何も言われなかったね、それも普通なのかな」
「別にその程度のことは不思議だとは思わないんだろうね」
テーブルの上には花瓶が置かれていて、そこには案内係の胸に刺繍されていた黄金色の花が咲いていた。
「花瓶が置かれているから、初めからあったんだね」
「そうだね、そしてこの液体を飲み終わっても消えないね」
甘酸っぱいジュースを飲み終えると、案内係の女性が脇に立っていた。
「宜しければ、部屋に案内しますが、いかがいたしますか」
「その前にこの王宮の中を見学したいのですが、どうでしょうか」
アルハザードの申し入れに女性は相変わらず無表情に「では、王族の方にその旨のお話をしてきます。このままお待ちください」と言い残してその場を去って行った。
「王宮を見学するって、何かあるのかい」
「それが分からないから見学するんだよ。神谷、憶えてるかい、一番初めに会った白色人は僕を普通の人間ではないと断言した、しかし、次にあった赤色人は何も言わなかった。いや、言わなかったのではない、言えなかったんだ。何も感じなかったんだろう。二人とも精神力増幅装置を積んだ車に乗っていた、だが、感じ方が違っていた。不思議だとは思わないか。そして先ほどのラ・ムーだ。僕たちが黄色人の格好をいきなり解いても何も言わなかった、そして、島の外から来たと聞いて、ひどく困惑した顔をしていた。なぜだだと思う」
「そんなこと分かる訳ないじゃのいか。ずいぶんと色々な疑問を持ったんだね、あの短い時間で」
「そうだ、あの短い時間にたくさんの疑問を持ったんだ、だから、それを調べてみたいのさ」
「それが君の望みを叶えることに関係するのかな」
「この王宮を見ることはこの島、ムー大陸を知ることだ。それに……」
「それに?」
「こいつが、そろそろ神谷のギタラを聴きたがっている。部屋に案内されたら早速弾いてもらいたいそうだ」
そうすれば邪神が何かを教えてくれる、ということだろうか。
神谷の考えが分かったのか、アルハザードが肩に乗っているはずの邪神の方を見てクスリと笑った。
その日は客人用の部屋に案内され、翌日から案内係つきで見学できることになった。部屋のドアはホテルと同じく、壁を触ると上に上がり、中は天井も壁も床も白かった。
案内係の女性は、翌日の朝に迎えに来ることを告げると、去って行った。
「割と広い部屋だね」
白い何もない空間だが、十畳くらいの広さがあった。
床に腰を降ろしたアルハザードの肩のあたりから邪神が飛び降りた。
「こいつが早く弾けって言ってるよ」
何もなかった部屋に白い石が現れた。神谷が座るための椅子なのだろう。今日は部屋と同じ色にしたようだ。
「防音仕様にしないのかな」
「この部屋はギターの音くらいは外に漏れないようにできているそうだ、だから、存分に弾いてくれって言ってるよ」
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