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ムー大陸編
15ヒラニプラの街並み
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間もなくヒラニプラの街に着いた。
街は城壁の変わりか、周りが青い色をしたドーム型の家でびっしりと隙間なく囲まれている。
今まで知り得た知識ではこの家は青色人の物ということになる。家の外側には高さ二メートルほどの細かい網目状の柵が張り巡らされている。こちらもやはり青い色をしている。
道は街の中に続いていて、そこだけ家が建っておらず、高さが優に五メートルはあろうかという、木製の門がそびえている。
門の周りには人の顔をかたどった模様や、見たこともない足の長い牛のような動物、牙の生えた馬、翼のあるらくだ、といった物が彫ら、彩色されている、どれも神谷から見るといびつで稚拙にしか見えない。
門の上部には何かの文字らしき物が彫られている。見た感じは、ハングル語とアラビア語の中間のように見える。
「あれは『首都ヒラニプラ』と彫られているそうだ」
アルハザードは黄食人になり切った顔でぼそりと呟いた。近くにいるかもしれないムー大陸人に聞かれないためだろう。
門の両側には、門番と思われる前身青い服、今まで見たことのない歴史の本で見た、中世のヨーロッパの戦士が身につけるような甲冑をとやはり青いヘルメットに身を固めた身長は、軽く二メートルは越えていそうな青い肌の男(多分)が二人が立っていた。二人とも自分の身長と同じ位の長さの青い金属製の細い棒を目の前に両腕で立てている。
神谷とアルハザードの二人は黄色人になり切っているらしく、足止めをされることなく、門を無事に通過することができた。但し、邪神は門番から見えてはまずいもか、近くにいるのだろうが、その姿はみえない。
青いドーム型の家の内側は赤い色で舗装された道が続き、その中には赤い色のドーム型の家が並んでいる。その内側には黄色い道があり、その内側には黄色いドーム型の家がという構造になっている。
要するにバームクーヘン型に同じ色の家、それと同じ家の道が青、赤、黄の順で並んでいるのだ。そしてバームクーヘンの空洞部には白いドーム型の家が並んでいる。
まばらだが、人影が見える。街の外で出会ったような車に乗っている者はなく、皆徒歩で移動している。
「何か面白い家の並び方だね」
「これは身分によって家の位置が決まっているのさ。外側に行けば行くほど身分が低い、身分に応じて通る道も決まっている。内側にいけば行くほど身分が高いんだ。そして白い家、白色人の集団の真ん中に王宮、黄金色の建物があるんだよ」
アルハザードの話を聞いて、周囲を見渡して見ると、確かに道路の色とその上を歩いている人の色は同じだ。
青色人、赤色人、黄食人の区域を通り抜ける道は街の外と同じく黒っぽい色をしている。
「もちろん、この街に黒色人は住んではいないよ。この道は誰でも通れる道だから、こんな色をしているらしいよ」
アルハザードが自分たちの歩いている道路を指差した。姿が見えなくても、邪神は知識を与えてくれているらしい。
「ということは、白色人、黄食人、赤色人、青色人という順で身分が決まってるってこと」
「そういうことだね。この首都ヒラニプラは元々は白色人と王族の住む町だったんだけど、街の護衛を含む運営上の必要があって他の種族も住まわせているみたいだよ」
「運営上の必要ってどんなこと」
「自分で調べろって言ってるね」
アルハザードの肩の上であくびをしている邪神の姿が見えたような気がした。
「このまま真っ直ぐに王宮を目指すのかい」
「いや、たとえ王宮にたどり着いたとしても、すぐに王ラ・ムーに会うことはできないだろう」
「それじゃあどうするんだい」
「相手の方から会いたがるように仕向けるのさ」
「どんなふうに?」
「ここは神谷の出番だよ」
アルハザードが意味ありげに微笑みかけてきた。魔術で作っている顔と分かっていても、吸い込まれるような笑顔だ。
「もしかすると、これ?」
背中で黄色に変色しているギターケースを指差した。おそらくは中のギターも同じ色に変わっているのだろう。
「その通り、まずは白色人の街に入って、そこで何とか人前でギターを弾ける場所を探そう」
二人並んで白色人の街を目指して歩いた。
道を歩きながら、気がついたことを口に出してみた。
「この街って、人家はあっても店のようなものがないね。ここに住んでいる人たちは生活必需品や食料をどうやって手に入れているのかね」
「それもそのうち分かるって言ってるよ。神谷も気づいていると思うけど、人家が多い割に道路を歩いている人が少ないだろ。そのあたりもその理由の一つだってさ」
それは神谷も感じていたことだった。家の数に対して道を歩いている人影は少ない。数百軒はあろうかという家の数に対して、外に出ている人影は数えるばかりだ。引きこもりが多いのだろうか、と思っていたところだ。
そろそろ早めの昼食を摂る時間となった。
「そうだな、こいつに頼んでみるか」
アルハザードが右肩を指差した。姿は見えないが、やはりそこに邪神はいたようだ。
黄色い道路を右手に回っていると、黄色いドーム型の並んでいる家並みの中に、空き地のような何もないスペースがあった。
「そうだな、あそこにしよう」
アルハザードが呟くと、空き地に黄色いドーム型の家が現れた。どうやら、ここが今回の演奏会場のようだ。
街は城壁の変わりか、周りが青い色をしたドーム型の家でびっしりと隙間なく囲まれている。
今まで知り得た知識ではこの家は青色人の物ということになる。家の外側には高さ二メートルほどの細かい網目状の柵が張り巡らされている。こちらもやはり青い色をしている。
道は街の中に続いていて、そこだけ家が建っておらず、高さが優に五メートルはあろうかという、木製の門がそびえている。
門の周りには人の顔をかたどった模様や、見たこともない足の長い牛のような動物、牙の生えた馬、翼のあるらくだ、といった物が彫ら、彩色されている、どれも神谷から見るといびつで稚拙にしか見えない。
門の上部には何かの文字らしき物が彫られている。見た感じは、ハングル語とアラビア語の中間のように見える。
「あれは『首都ヒラニプラ』と彫られているそうだ」
アルハザードは黄食人になり切った顔でぼそりと呟いた。近くにいるかもしれないムー大陸人に聞かれないためだろう。
門の両側には、門番と思われる前身青い服、今まで見たことのない歴史の本で見た、中世のヨーロッパの戦士が身につけるような甲冑をとやはり青いヘルメットに身を固めた身長は、軽く二メートルは越えていそうな青い肌の男(多分)が二人が立っていた。二人とも自分の身長と同じ位の長さの青い金属製の細い棒を目の前に両腕で立てている。
神谷とアルハザードの二人は黄色人になり切っているらしく、足止めをされることなく、門を無事に通過することができた。但し、邪神は門番から見えてはまずいもか、近くにいるのだろうが、その姿はみえない。
青いドーム型の家の内側は赤い色で舗装された道が続き、その中には赤い色のドーム型の家が並んでいる。その内側には黄色い道があり、その内側には黄色いドーム型の家がという構造になっている。
要するにバームクーヘン型に同じ色の家、それと同じ家の道が青、赤、黄の順で並んでいるのだ。そしてバームクーヘンの空洞部には白いドーム型の家が並んでいる。
まばらだが、人影が見える。街の外で出会ったような車に乗っている者はなく、皆徒歩で移動している。
「何か面白い家の並び方だね」
「これは身分によって家の位置が決まっているのさ。外側に行けば行くほど身分が低い、身分に応じて通る道も決まっている。内側にいけば行くほど身分が高いんだ。そして白い家、白色人の集団の真ん中に王宮、黄金色の建物があるんだよ」
アルハザードの話を聞いて、周囲を見渡して見ると、確かに道路の色とその上を歩いている人の色は同じだ。
青色人、赤色人、黄食人の区域を通り抜ける道は街の外と同じく黒っぽい色をしている。
「もちろん、この街に黒色人は住んではいないよ。この道は誰でも通れる道だから、こんな色をしているらしいよ」
アルハザードが自分たちの歩いている道路を指差した。姿が見えなくても、邪神は知識を与えてくれているらしい。
「ということは、白色人、黄食人、赤色人、青色人という順で身分が決まってるってこと」
「そういうことだね。この首都ヒラニプラは元々は白色人と王族の住む町だったんだけど、街の護衛を含む運営上の必要があって他の種族も住まわせているみたいだよ」
「運営上の必要ってどんなこと」
「自分で調べろって言ってるね」
アルハザードの肩の上であくびをしている邪神の姿が見えたような気がした。
「このまま真っ直ぐに王宮を目指すのかい」
「いや、たとえ王宮にたどり着いたとしても、すぐに王ラ・ムーに会うことはできないだろう」
「それじゃあどうするんだい」
「相手の方から会いたがるように仕向けるのさ」
「どんなふうに?」
「ここは神谷の出番だよ」
アルハザードが意味ありげに微笑みかけてきた。魔術で作っている顔と分かっていても、吸い込まれるような笑顔だ。
「もしかすると、これ?」
背中で黄色に変色しているギターケースを指差した。おそらくは中のギターも同じ色に変わっているのだろう。
「その通り、まずは白色人の街に入って、そこで何とか人前でギターを弾ける場所を探そう」
二人並んで白色人の街を目指して歩いた。
道を歩きながら、気がついたことを口に出してみた。
「この街って、人家はあっても店のようなものがないね。ここに住んでいる人たちは生活必需品や食料をどうやって手に入れているのかね」
「それもそのうち分かるって言ってるよ。神谷も気づいていると思うけど、人家が多い割に道路を歩いている人が少ないだろ。そのあたりもその理由の一つだってさ」
それは神谷も感じていたことだった。家の数に対して道を歩いている人影は少ない。数百軒はあろうかという家の数に対して、外に出ている人影は数えるばかりだ。引きこもりが多いのだろうか、と思っていたところだ。
そろそろ早めの昼食を摂る時間となった。
「そうだな、こいつに頼んでみるか」
アルハザードが右肩を指差した。姿は見えないが、やはりそこに邪神はいたようだ。
黄色い道路を右手に回っていると、黄色いドーム型の並んでいる家並みの中に、空き地のような何もないスペースがあった。
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