親友は砂漠の果ての魔人

瑞樹

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ムー大陸編

7大陸の住人との遭遇2

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「ここは田舎町だもの。それにこのあたりは黒色人が出るから、めったに人は通らないわ」
 黒色人が何を表わしているのかは分からない。
「黒色人って、黒人のこと?」
「いや、神谷の知っている黒人とは違うようだ。この島の住人らしいけど、かなり凶暴な人種らしいよ」
「そうなんだ、でも、この女性は一人でよく平気だね」
「この車のような物に乗っていると大丈夫みたいだよ。武器も搭載しているみたいだしね」

 見た目は半円型の子供でも乗りこなせそうな車であるが、物騒な乗り物なのかもしれない。
「この車、地面から浮きあがってるけど、リニアモーターカーのような原理で動いているのかな」
「うん、この島の土は磁気を多く含んでいるからねえ、磁石の反発の原理で浮き上がっているようだよ」
 現代で例えるならば、リニアモーターカーに近いのだろうか。

 運転席を晛くと、ハンドルらしきものはどこにも見当たらない。
「この車は運転者の精神力、テレパシーで動いているらしいよ」
「念力ってやつかな」
「いや、この島の住人の精神力が特に優れている訳ではなくて、精神力増幅装置というものが作られているようだよ」
「精神力増幅装置、それじゃあ、僕にもこの車が動かせるの?」

「いや、この島の住民と神谷とでは精神の構造が違っている、すぐには動かすことができない。操縦するためにはかなりの訓練が必要だそうだ」

「その訓練て、大変なのかな」

「彼らは生まれた時から自然と訓練しているからね、今からでは少なくとも、毎日必死に何時間も努力して一年はかかるみたいだね」

 そこまでの努力をしている時間があるとは思えない。車が必要な時は、運転手を雇った方が早いのだろう。

「そうだな、この島にも通貨は存在するからね。何らかの方法でそれを稼いで交通の手段とした方が早いだろうね」

 神谷にはギター演奏以外に金を稼ぐ方法は思い付かないが、果たして、この島で神谷の演奏がこの島の人々に受け入れられるのだろうか。

「多分大丈夫だと言ってるよ。どちらかというとゆったりとした曲が受けるそうだ」

 アルハザードのか肩の上の黒猫が「フン」と鼻を鳴らした。

「面白いものを肩に乗せてるのね、それは生き物なのかしら」

 ムー大陸人が小首を傾げて訊ねてきた。この島には存在しないらしく、猫というものを見たことがないらしい。

 手を伸ばして邪神の頭をなでた、知らないとはいえ、正に神をも恐れぬ行為だ。しかし、邪神は目を細めて気持ち良さそうに「ニャー」と鳴いた。

「この島には猫なんかの小動物は存在しないみたいだよ。あと、犬なんかもね。牛や豚の祖先いるみたいだけどね。家畜として飼われているから、野生には存在しないんだよ」

 現代とは生物の大系がかなり違っているようだ。

「まぁ、一番変わらないのは人間だろうってこいつが言ってるね」

 変わらないということは、進歩をしてないということなのだろうか。

「そういうことだろうね。この女性を見ても分かるだろう、現代人となんら変わるところがない」


「それじゃあ、私は行くわよ、人を待たせているの。この道をまっすぐ進めば首都に着くことは間違いないから、迷う心配はないわよ。途中、黒色人にだけは注意してね。こちらの方は普通の人とは違うみたいだけど」

 ムー大陸人恐るべしというところか、アルハザードが唯の人ではないことを瞬時に見抜いたようだ、精神の構造が違うということと関係があるのだろうか。

「いえ、僕も普通の人ですから、そんな恐ろしい人種に出会わないことを祈っていますよ」

 アルハザードが答えたが、女性はまるで信じていない様子で、「じゃあね」と小さく手を振って車に乗り込み、走り去ってしまった。
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