親友は砂漠の果ての魔人

瑞樹

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ムー大陸編

05到着ムー大陸

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 光が薄くなり、目を開けると、小高い山の上に立っているらしく、眼下には緑の木々で覆われた森が広がっていた。
「ここが本当に一万二千年前のムー大陸?」

 やはり邪神は子猫の姿になって、アルハザードの右肩の上に乗っている。
「うん、首都から少し離れた所らしいけどね」
「確か、この大陸ってすごく広いんだよね」
「東西八千キロ、南北五千キロだから、大体、オーストラリア大陸の2倍くらいの大きさかな。因みに人口は六千四百万人、大きく十の国に分かれていてそれぞれに首長がいるんだけど、首都のヒラニプラという国にはこの島全体を統治している王、ラ.ムーとその一族が住んでいるんだ」

「それは、その神様からの情報?」
「ああ、そうだよ。何十億年も生きているこいつらにとって、一万二千年なんか、僕たちの昨日のようなもんだろう」
「でも、あんまり詳しくは教えてくれないんだろう」
「そうさ、相変わらず自分で見て来いって言ってるね。教えてくれた数少ない情報によると、地球は温暖な時期と水河期を繰り返しているけど、この時代は最後の水河期が終わって二千年ほど経過していて、比較的温暖のようだね。この大陸は赤道をはさんで南北に五千キロの長さがあるんだけど、ここは赤道付近にあるみたいだ。季節は真冬らしいよ」

 真冬とはいっても、長袖のシャツ一枚で全く寒さを感じない、快適な温度だ。
「わざわざこの季節を選んでくれたのかな」
「まぁ、こいつのサービスだろう。神谷のギターがお気に入りだからね」
 アルハザードの肩の上の邪神がロを大きく開けて欠伸をした。

 二人並んで葦に似た草の生え茂っている山道を下ると、平地に出た。地面は黒ずんだ砂地だが、コンクリートのようなもので舗装された幅二メートルほどの道路が一本平地を延々と続いているが、人影はなく、民家のようなものも見当たらない。ここは島の中でもよほど田舎なのだろうか。
「首都まで歩いて二日くらいかかるらしいよ」
「えっ、そんなにかかるの? 徒歩のほかに交通手段はないのかな」
「そこは教えてくれないね。とりあえず、歩いて向かうしかないだろう」
 仕方なく 二人並んで邪神の言う方向に向かって歩き出した。

「途中で腹が減ったら、また、ギターを弾いてくれよ」
「それはかまわないよ。それにしても、一万二千年も前にこんな道路があるなんて凄いね」

 道路を歩いていると、向かって右の方角から左の方へ丸い物体が空を飛んでいるのが目に入った。
しばらく立ち止まって眺めていると、距離があるため具体的な大きさは分からないが、それは小型の飛行船のようなものだった。青色の細長い風船の下に平たいかごがぶら下がっている。

「あれがこの国の乗り物だそうだ」
 かごの中には人が入っているのか。推進力は分からないが、風船の中には空気よりも軽い、気体が詰まっているのだろう。

「タクシーじゃないから、手を上げても乗せてはくれないそうだ」

 邪神の冗談だろうか? いや、冗談などという概念はまるで持ち合わせていない彼らのことだ、唯事実を言っただけなのだろう
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