マガイモノサヴァイヴ

狩間けい

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第45話

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タイミングの問題だろう。

耳元で魔石の扱いを提案したフレデリカが、それを言い終わったことで俺から離れかけた。

そこでその内容に驚いた俺が彼女に顔を向け、唇同士が軽く触れ合ってしまう。

もちろん、すぐに離そうとしたのだが……そこでフレデリカの手が素早く俺の首に伸ばされ、引き寄せられた。


ガシッ、グイッ

「んっ……」

「むぐっ」


声は抑えたままにできても、思いっきりキスをされたことで驚きは抑えられない。

行為によってか赤い顔をした彼女は……まぁ、美女である。

その上、一応は協力者でもあるので嫌悪感などはなく、この行動の意図が不明であることにただ困惑していると……


「……れるっ」

「もご」


話そうとして半開きだった俺の口にフレデリカの舌が侵入し、口内で俺の舌に絡みついてきた。

音を抑えるためか激しさはないが、温かくヌメヌメする舌が静かに暴れまわる。

とりあえず、物音で隣に気づかれないように離れるために俺は……両手を前に伸ばした。

その先は彼女の胸であり、軽くなら構わないと言っていたが……思い切り揉んでやれば離れるのではないかと考えたのだ。

だが……


わしっ、モミモミモミモミ……

「っ!」

レロレロレロ……チュウゥ……


手から少々溢れるぐらいの胸を無造作に揉んでみるも、フレデリカは離れるどころか舌の動きを激しくさせる。

ならばと俺はに狙いを変え、厚手のベストに手を滑り込ませると……そこを摘んで集中的に捏ねだした。

声を上げられる可能性はあったがその場合は口が離れるだろうし、声が上がるとしても一瞬で彼女も抑えようとするだろうと判断したのだ。


キュッ、クニクニクニ……

「んんっ♡……れるっ……」


俺の予想に反し、フレデリカは行為を続行した。

どういうつもりだ?と、硬くなってきたそこを弄り続けていると……彼女はようやく俺の口内から退去した。


ぬちゅっ……ペロッ

「ふぅ……」


未だ近い距離ではあるが顔を離し、唾液によって汚れた口の周りをペロリと舐めてみせるフレデリカ。

そこで俺は一息ついた彼女を問い詰める……は摘んだままで。


「どういうつもりだ?」

「どっちの意味かしら?」


俺の指先には言及せず、赤い顔のまま聞き返してきたのは……魔石の件か、今の行為かという意味だろう。


「……どっちもだ」

きゅっ


指先の力を少し強めてそう返すと、フレデリカは身体を反応させつつ俺の質問に答える。


「っ、簡単に言うと……丁度良かったってところね。

「はあ?何がだ?」

「ここで詳しい話はできないわ。とりあえず……今日はこっちの査定だけ提出して換金しておきなさい。仕分けの手数料を引いても十分なお金になるでしょ」


そう言うとフレデリカは隣の受付嬢、ジルの名前に自分の名前も併記して俺に差し出す。

胸に伸ばされている俺の腕が邪魔なはずだが、その腕の外でサラリと書き足した。


「この数でも個人では珍しいでしょうから、一応私の名前も書いておいたわ。残りのは私が適当に分割して、数日ごとに口座へ入れておくってことでいい?」


俺の口座の動きを目立たせないように、そういう処理をするということだろう。


「それは構わないんだが……明日はダンジョンに入るから、さっきの件で次回からの話について聞かないと困るんだが」

「なら……明日帰ってきたら孤児院に行くでしょうからそこで話すわ」


仕分けを任せる魔石や、今回の仕分け料金を持っていくのが決まっているからか。


「……わかった」


そう言って俺はフレデリカの胸から手を離すと、彼女を一瞥してギルドへ向かう。

そんな俺を見送るフレデリカは……赤い顔で再びペロリと唇を舐めて見せた。



魔石の査定表を持ってギルドへ移動すると、今回は登録したときの受付さんの所へ向かう。

俺の素性を疑ってかもしれないが、一応は本気で心配していたぐらいには人が良さそうだったし、前回は別の受付に行ってショックを受けていそうだったしな。

前回の稼ぎに比べると10倍ほどにはなるのだが……まぁ、プロの受付なんだし、一個人の稼ぎがちょっと多いぐらいで変な欲を出してくることもないだろう。

というわけで、俺はその受付へ査定表を提出した。


「……え?魔石が2種類しか書かれていないので2区までしか行ってないんですよね?それでこの数なんですか?」

「はぁ、まぁ……貯めてあった分もあるんで」

「そうなんですか。まぁ、フレデリカ様のサインもありますし、大丈夫……かな」


やはり個人で500個以上の魔石というのは驚かれたようで、彼女は俺に確認しつつも査定担当者のサインを確認する。

今回もフレデリカの名前があったことでそれは問題なく受理され、53万オールほどの金になった。

そのうち20万オールほどを現金で受け取り、残りは口座へ。

金を受け取った俺はギルドを出ようとするが、そこでついでにと第3区の地図を買っておくことにする。

明日は使わない予定でも、近いうちに必ず使うだろうしな。


「気を付けてくださいね?第3区は上位種が出たりして、"新人の門番"なんて言われていたりしますので」


やはりまだ新人ということで心配する受付さんのそんな言葉を受けつつ、俺はギルドを出て明日の予定を話すためにイリスの宿へ向かった。




イリスと会うのなら、と人気のない路地で"モーズ"の姿になって宿へ到着すると……1人の女が立ちはだかった。

そう、イリスに手を出すなと言って俺を空き部屋に連れ込み、そのままを咥えこんできた従業員の女だ。

彼女と再び遭遇する可能性は考慮しており、"コージ"の姿で来ることも考えたが……同じ様に絡まれるかもしれず、そうなるとまた別の姿を用意しなくてはならなくなるので"モーズ"の姿にしておいた。

懸念通りに彼女は現れると、数秒俺の股間を見て問いかけてくる。


「……また彼女に?」

「(明日の打ち合わせだ。)」

「打ち合わせと言って股間ものでは?」

「(その予定はない。明日はダンジョンに入るからな)」

「ですが、昨夜お泊りだったのに今朝は普通にでしたよね?」


朝に自分と普通にヤれるぐらいは余裕があったのだし、明日ダンジョンに入るとしてもイリスとヤるのでは?と思われているのだろう。


「(俺はともかく、イリスにそこまでの体力はない。彼女に無理をさせるつもりはないぞ。)」

「…………」

スッ


筆談でそう答えると、彼女は少し考え込んだ後に俺の進路を空けた。


「(いいのか?)」

「……ええ。ただ、シたくなったら私に言ってください。これからの時間は部屋が埋まり始めますので、その辺の適当な場所になりますが」

「(言っておくが、イリスから求められる場合は断らないぞ。)」

「その場合は……なるべく抑えていただき、そのぶん私で発散していただければ」

「……」


彼女の目的はわかるが、何故そうするのかという動機がわからない。

朝に聞いたが答える気はないようだし、だったら言われた通りにする必要もないな。

というわけで……


「(状況による。)」


とだけ伝えてイリスの部屋へ向かった。




コンコン

「はーい、どなた?」


部屋の中からそう聞いてくるイリスに、俺はドアの下からメモを滑り込ませる。

誰かが聞いているかもしれないので、まだ声を出すわけにはいかないからな。


「……あっ♪」

カチャッ


メモを確認したらしいイリスはやや弾んだ声を上げると、すぐにドアを開けて俺を迎え入れる。

メモだけで俺だと判断できたのは……そこに、明日セリアから荷物を受け取る打ち合わせだと書いておいたからだ。


バタン、カチャッ

「はい、こっち♪」

ポンポン


部屋に入るとイリスはドアを閉め、鍵を掛けてベッドに座るとその隣を叩いて俺を招いてくる。

俺はそれに応じて魔鎧を解除し、鞄を置きながら指定された場所に座った。

そんな俺にくっついてきたイリスが聞いてくる。


「で、セリアさんの予約を入れに行ったのよね?どうだった?」

「問題ない。明日、ダンジョンの中で魔法の触媒を受け取れるはずだ。ただ……」


ここで、今回協力するにあたって今後も雇ってほしいと言っているセリアに対し、彼女がそれを諦めるように戦闘のペースを上げなくてはならないと俺は話す。

逆にペースを落とすことも考えたが、遅すぎて諦めるほどの遅さにするとかなり手を抜かなければならず、それによってイリスやセリアが攻撃を受ける可能性が生まれてしまうからな。

モノカさんとした、部屋の保証人になってもらう代わりに継続して魔石の仕分けを頼む約束は……今のところ部屋を借りたことが内緒なのでここでは言わず、休日を使って魔石を集めることにしよう。

で、話を聞いたイリスは……服を脱ぎだした。


シュルッ……

「じゃあ、今日は早めに寝ておいたほうが良いわね」

「いや、流石に夕飯前は早すぎるんじゃないか?」

「でも、早い時間に寝るんだったら早めに始めないと……」

スルッ……


季節的には涼しい秋で、寝るときは下着に1枚重ね着をする感じなのだが……彼女は下着姿になる。


「え?ヤるのか?」

「え?しないの?」

「「……」」


どうやら彼女は普通にヤる気だったようだ。

だが、あの従業員には状況次第とは言え明日の予定を伝える程度だと言ってあったからなぁ……


「いや、今日のところはやめておこう。ほら、匂いが残ってセリアに気づかれると気不味いだろ」

「あぁ、それはまぁ……」


イリスは下着も脱ごうとした手を止めてそう言うと、少しの間黙り込む。


「……」

「……どうした?」

「えっと……その、私とシたくなくなったってわけじゃないのよね?」


俺の問いに、少し不安そうな顔で聞き返すイリス。

あの従業員にも言ったが、今のところは俺の力を当てにしている都合で肉体関係を持っているわけだし、を求められなくなれば助力を止められてしまう可能性があると考えて不安になるのだろう。

性的なことに関しては別にイリスに固執しているわけでもないので、そういう雰囲気を彼女は感じているのかもしれない。

敵対行動でも取られない限り、イリスを放り出す気はないと言ってあるんだがなぁ。

そう考えた俺は……彼女の腰に手を回した。


「そういうわけじゃない。ただ……不安ならそれを証明してやろう」

「あっ♪」


そう言うと俺はイリスの身体を抱き寄せ、腰に回していた手で胸を揉む。

すると……彼女は安心した表情の顔を俺に寄せてきた。

口を塞がれる前に言っておく。


「あ、今日は短めに……んぐっ」

「んっ……んちゅ……」


俺の言葉は遮られ、結局イリスの部屋に長居することとなった。
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