マガイモノサヴァイヴ

狩間けい

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第24話

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あの後、天井などから現れたスライムによって現場の掃除が行われた。

それを見届け、後始末をしてダンジョンを出た俺と名も知らぬ美少女は、話があると言っていた彼女が滞在する宿へ向かうことに。

俺個人としてはあの男達に直接何かをされたわけでもないので、そんな相手を殺して気分が悪かったのだが……話している間は好きに触っていいからと言うので承諾した。

彼女は気分が悪くなった元凶だが、だからこそそんな相手を好き勝手に弄ることで精神力の回復を図るつもりである。


キィッ

「どうぞ」

「ああ」


開かれたドアの奥には……まぁ、普通の部屋があった。

宿自体も俺が泊まった"牛角亭"とさほど変わらず、聞けば料金も似たようなもののようだ。

唯一の違いは店員が居ないことだろうか。

それを目当てにした男性客が少ないからか女性客が多いらしく、彼女もそこが気に入ってこの宿に決めたとのこと。

そんな宿の一室に2人で入ると、ベッドへの着席を促される。

椅子が小さなテーブルとセットで一脚だけあったのだが……まぁ、部屋の主が勧めるのだし断る理由もない。

なので言われた通りに俺が座ると、防具を外した彼女も隣に座ってきた。


「こっちに座るのか?なら俺はあっちに座ろうか?」

「え?いや、ほら……話してる間は好きに触っていいって言ったでしょ?」


顔を赤くしてそう言う彼女。

ああ、約束を忠実に守ろうとしてるのか。

襲われた直後だし、もう少し落ち着いてからでもとは考えていたが……まぁ、いきなり胸を揉んだ俺に言えたことじゃないな。

状況が状況だったし、精神安定のためだと理解していただきたい。


「そう言えばそうだったな。で、話ってのは?」


さっさと本題へ入った俺に彼女は俺が帰りたがっていると思ったのか、慌てて簡素なシャツの裾を上げ始める。


「あっ……とりあえずこれ、どうぞ」


上着は引き裂かれていて使い物にならなかったのだが、当然着替えはあったので無事な服を着ていた彼女。

その服が捲り上げられた後、下着に包まれた胸が差し出された。

滅茶苦茶デカい、と言うほどではなくとも明らかに大きい部類ではあり、ブラの生地が薄いのか左右の先端に影が出来ている。


「あっ」


俺がそこを眺めていたのを"露出待ち"だと思ったのか、ブラもずり上げようとする彼女を俺は止める。


「いや、これはこれでいいから」

「そ、そう?じゃあ、はい」


と、再び胸を差し出す彼女だったが……やはり俺は用件を聞こうとする。


「いや、触っていいのは話を聞いている間だけだろう。だから用件を言って欲しいんだが」

「別にそこまで細かく考えなくてもいいわ。そもそも、こっちは助けてもらった身なんだし」

「はぁ、そこまで言うなら……」


と、俺は彼女のブラの上から両手で触れて撫で回す。


「んっ……」

「……」


ふむ、張りがあって形も良いな。

時期的には秋だし、気温を考えると生地が薄い……いや、ダンジョンで動き回って暑くなるからか?

そんなことを考えている間、彼女は赤い顔で小さく声を漏らすだけだった。

俺の力を見た後に、話があると言ってこんなことをされているわけだから……おそらく力を貸せという話だろう。

この行為が彼女にとってどのぐらい重いものなのかによるが、あまり込み入った事情に首を突っ込みたくはないんだけどなぁ。

その場合、大抵は大事になりそうだし、そのぶん目立ってしまいそうだ。

追放から10年経つが、あの森で5歳の子供が生きていけるとは思われていないにしても、誰かが俺を助けて生き延びた可能性は考えられるかもしれない。

なので今後もできるだけ目立たず、俺が生きていることを実家に知られる可能性は可能な限り抑えたいんだよな。

両手にある感触は良いものだが……やはりとっとと用件を聞くことにする。


「そろそろ用件を聞きたいんだが」

「もういいの?その、もう少し愉しんでもいいけど」

「用事があるって言われて連れ込まれてるんだから、純粋に愉しめるわけがないだろ?」

「それは……そうでしょうね」


俺の言葉に納得した彼女は、そこでようやく用件を切り出した。


「じゃあその用件だけど、簡単に言えば……私と組んでくれないかって話よ」

「え、嫌なんだが」

ムニムニ……


そう断りつつ、俺は彼女の胸を揉み続ける。

詳しい話を聞こうともせず、あっさり断られて呆気にとられた彼女だったが……すぐに気を取り直して抗議した。


「え……いや、稼ぎの取り分なんかの詳しい話も聞かずに断るの?」

「1人でも十分稼げるからな」


ダンジョンではまだ1度しか稼いでいないのでハッキリとは言えないが、普通に暮らしていくぶんには困らなさそうだし、魔石を吸収したい俺としてはそれを見られたくないので同行者が居ては困るのだ。

解体場の査定に出す前の段階で分けるとしてもその後に解体場へは一緒に行くだろうから、魔石の量が減っていることに気づかれてしまう可能性がある。

そういうわけで断ったのだが……詳しい事情は秘密なので断る理由はこうなった。

しかし彼女は食い下がる。


「で、でもチームを組めばもっと稼げるかもしれないし、マジックアイテムだって見つけやすくなるかもしれないじゃない?」

「必要以上に稼ぐ気はない。目立てばに目を付けられるだろうし」

「高そうな物を身に着けたり、外で大金を扱わなければ大丈夫じゃない?」

「そういう形で稼いでいることを表に出さなくても、金を預けるギルドからその情報が漏れる可能性はある。カンパニーによっては後ろに権力者が付いてたりするらしいし、その場合ギルドの内部情報を流すような奴が居てもおかしくはない」

「それは……」


俺の言葉に明確な否定ができないからか、彼女はしばし押し黙る。

そんな彼女に俺は問う。


「大体、戦力が欲しいんなら何処かのカンパニーに所属すればいいんじゃないのか?」

「う」


痛い所を突かれた、といった表情をする彼女。

まぁ、恩人を騙るような奴について行ってあんな目に遭ったわけだから……


「何処も入れてくれなかったのか?」

「ぐ。ま、まぁ……」

「何でだよ。魔法使いな上にあれだけ魔法を続けて使えるんなら、普通は歓迎されるんじゃないか?」


そう聞くと、彼女首を横に振って説明を始める。


「理由は2つ。1つは私が魔法使いなのは秘密だからよ」

「えっ?何故だ?」

「私がこの街に居ることを隠しておきたいから」

「……なるほど。お前が魔法を連続で使えるのを知ってる奴が居て、そいつに知られたくないってことか」

「ええ、まぁ」


他の魔法使いを見た限り、魔法を連発できるのはこの娘のスキルかなにかだろう。

となれば、魔法使いとして冒険者活動をしていればそれを使う機会は来るだろうし、そこから知られたくない誰かに伝わる可能性はある。

だから魔法使いであること自体を隠したのだろうが、それでカンパニーへの加入を断られては……まぁ、素性を隠したいという点では俺も同じなので理解できるが。

だがそうなると……


「じゃあ、同じチームの俺が稼いで目立つのも駄目なんじゃないか?なのに稼ぎが増えるからって俺を誘ったのか?」

「嘘を言ったつもりはないわ。表向きは組んでないことにするし、私の取り分は必要最低限でも構わないって言うつもりだったから」

「はあ?じゃあお前は何が目的で俺を誘ってるんだよ」


それを聞くと彼女は言いづらそうに答えてきた。


「……それはまだ言えないわ」

「……じゃあ、2つ目の理由は?」


言えないというのなら聞いても仕方がないので、カンパニーに加入できなかったもう1つの理由を聞く。


「昨日、と今日もね。私を襲ってきた連中のせいよ」

「あいつらが?」

「連中は"宝石蛇"ってカンパニーの一部で、大っぴらにではないけど権力者が後ろに付いてるからって悪さする連中らしいわ。そこに目を付けられたんじゃないかってことで断られたのよ」


あぁ、あいつらがそうなのか。


「まぁ、あんな目立つ場所で絡んでたし、そんな話が広まっててもおかしくはないか……でも、入ろうとしたカンパニー全部がその話を知ってたのか?」

「どうかしら?入ろうとしてたのは1つだけだから……」

「1つ?何でだ?」


目的はまだわからないがその目的を果たすために戦力を求めているわけだから、他のカンパニーにも加入を申し込みに行くべきだと思うのだが……ここにも彼女の事情が存在していた。


「えーっと……魔法使いってことを隠すとなると、ただの女冒険者ってことになるじゃない?」

「まぁ」

「何らかのスキルでもあってカンパニーの役に立つのなら話は別だけど、そうじゃない場合は……」


彼女は視線を落とし、絶賛捏ね回され中の胸を見る。


「戦力にならないんなら身体でってことか?他にも仕事はあるだろうに」

「別に私もそこまでカンパニーに詳しいわけじゃないんだけど、断られた所で聞いた限りでは大して戦えない女じゃお金の管理かになるらしいわ」


で、信用のない新人に金勘定を任せるはずがないから……ってことか。


「魔法使いではない、普通の冒険者としてカンパニーに入ろうとするとそうなるのか。で、他のカンパニーに行かなかったのはわかるが、その断られたカンパニーに行ったのは何でだ?」

「女性しか加入できないカンパニーだったからよ。そのことを噂で知ってて、そこなら目的を果たせるかもと思って来たんだけど……昨日の騒ぎに加えて魔法を秘密にするとなるとね」

「へぇ、そんなカンパニーもあるのか。まぁ女しか居ないんじゃ、厄介な男達に目を付けられてるかもしれない女を受け入れたくないのも仕方ないか」


今日の件から察するに、場合によっては手段を選ばない連中だろうし、そのカンパニーに加入できたとしても関係者を巻き込んでこの娘を引き渡せと要求するかもしれないしな。


「まぁ、そんなカンパニーを作って維持できてるわけだから、相応の戦力はあるし関係者に手を出すことはそう簡単に起こらないと思うんだけどね。ただそれも確実とは言えないし、この分じゃどこのカンパニーにも入るわけにはいかない。だから稼ぎの殆どを譲ってでも力を貸して欲しいのだけど……」


そう言ってジッと見つめてくる彼女には大変だろうと同情するが、だからといって提案を受け入れる気にはならない。


「現状でその話を受けるのは無理だな」

「どうして?」


俺は諦められない様子の彼女に説明する。


「受ける理由がない。さっき言った通り、稼ぎは自力でも十分稼げるから交渉材料にはならないし、俺も"宝石蛇"に目を付けられるかもしれないからな」

「そんなの、貴方なら平気なんじゃない?」

「宿や店を狙われて、俺が使えないようにされる可能性もあるだろ。そうなったらここでは生きていけなくなる」

「あ……」


先程の、自分が断られた女性のみのカンパニーに思い当たったようだ。

続けて、この話を受けられないもう1つの理由を言っておく。


「それに……目的がハッキリしない奴と行動を共にできるわけがない」


単純に何をされるかわからないからな。

この娘にとっては当然の行動を取っただけだとしても、俺からすると突飛な行動に見える可能性もある。

それは目的という情報を共有することでこちらも適切な行動を取れ、様々な形でサポートできるはずだが……逆に共有されなければ危機に陥る可能性が高くなる。

なのでその目的という情報が重要だと言ったわけだ。

そんな俺に、彼女はやはり言いづらそうな顔をする。


「それは……聞けば貴方は断れなくなるから」

「断れない?」

「その、色々と表に出せない情報もあるから、それを知った人は身内というか……協力者でなければならないの」


うぇ、絶対に面倒な話だ。

表に出せないとなると……身内で何らかの問題が発生しており、正体を隠して1人でこの街に来ているぐらいだから極秘のまま解決したいのだろう。

この娘、どこかのお偉方の関係者だな。

1人で出向いてきたぐらいだし、流石に血縁者である可能性は低いだろうけど……危険を冒してでも来るぐらいには重要な人物が厄介なことになっていると思われる。

だが……


「なら、何で断る余地を残したんだ?全部話して断れなくすることはできたはずだろ」

「そんな卑怯な真似をしていたらすでに断って帰っていたでしょう?詳しい事情を知られたとしても、貴方の場合は口止めなんかできそうにないし……」

「別に言い触らしたりするつもりはないんだが……まぁ、そっちからすれば何の保証もないか」

「ええ。書面などで正式な誓約でもしてもらえるならともかく、頼む立場のこちらからそれを求めるのもね」

「俺としては別に聞きたいわけでもないからな」


続けて言った俺に頷く彼女。

そんな彼女が俺にとってのメリットを追加で提示する。


「あ、あの!」

「ん?」

「その……ずっと触ってるってことは、私の身体を気に入ったってことかしら?」


彼女の言う通り、俺はずっと彼女の胸を揉んでいた。

この流れでそれを聞くということは……言い出しそうなことは大体わかる。


「身体で協力させようってつもりか?確かに良い身体だとは思うが……」

「なら!」

ズイッ

ぐにゅ


詰め寄る彼女に、俺は揉んでいた胸を押してその身を止める。


「落ち着け。目的の達成に掛かる時間や難しさもわからないのに引き受けられるわけがないだろう。その間ずっと俺に使つもりか?」


使、というのがどういう意味なのかを察した彼女だが、それによって顔の赤さが増しても勢いは止まらなかった。


「協力してくれるんなら……す、好きなだけ使もらっても構わないわ!」

「今日あんな事があったばかりだろ」

「だからよ!自分の意志を無視して挿れられるより、自分で決めた相手を受け入れた方が良いじゃない!」


ここが押しどころだと判断したのか、俺を押し倒さんばかりに迫ってくる。

ただ、この娘がお偉方の関係者である可能性は高く、万が一血縁者だったりすると面倒なことになるだろう。

というわけでその辺のことを聞いてみると……


「い、いや!わわ私はけけ決してききき貴族とかそういうものでは!」

「……」


わかりやすいぐらいの反応に、この娘がおそらく貴族の娘だろうと暫定的に判断しておく。

となると、手を出せば確実に問題となるはずだ。

うーん、どうするか。

家で発生した問題で、金はいらなそうなので必要なのは金ではなく、目的は何らかの素材かマジックアイテムなのだろう。

どちらも相応の金で買える可能性はあるが、なのに金を必要としないとなると……何らかの形で取引の記録が残るのを避けたいのかもしれない。

俺の"紛い物"で作成できればすぐに解決する話だが、作成できるとしてもそちらの能力は極力人に知られたくないんだよな。

つまり、いつまで手を貸すことになるのかがわからないわけだ。


「……」


俺の当面の目的は目立たず暮らすことだけなんだよな。

ダンジョンでこの娘と行動を共にする際は魔鎧で全身を覆って別人を装えば……この娘を"宝石蛇"が諦めていないとしても、"コージ"としてはその周囲を含めて狙われずに済むかもしれない。

この娘には鎧を何処で手に入れたか聞かれるだろうが、教えなきゃいけない義務はないので黙っておけばいいしな。

目的の内容によってはあっさり達成できるかも知れないし……放っておいてまた酷い目に遭わせたら俺は気にしてしまいそうだし。

そこまで考えてから、俺は彼女に確認する。


「体調は考慮するとしても、協力している間はだがいいのか?」

「っ!ええ!構わないわ!」

スッ


俺の言葉を正確に理解した彼女は、答えると同時にブラを上にずらして胸を露出し俺に触らせてくる。

別に助けたからってその後も世話しなきゃならない義務なんてないとは思っているが……まぁ、の支出が減ると考えればいいか。

さて。


「よっと」

「きゃっ」


俺は迫ってきていた彼女をベッドに押し倒し、上から再び胸を捏ねつつ問いかける。


「俺はコージ。お前は?」


込み入った事情がありそうだったし深入りするつもりはなかったので名乗っていなかったのだが、同じく名乗っていなかった彼女も相手が協力者であり、ヤることをヤるなら名乗るべきだと判断してかその名を口にした。


「イリs……イリス。ただのイリスよ」


言い方からしてどうも本名ではなさそうだが……俺も似たようなものだし、まぁいいか。

というわけで。


「んっ……」


俺達は名乗りあったその口を合わせ、お互いにその身体を味わったのだった。
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