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28話
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魔物の集落の奥にあった地下洞窟。
更にその奥の大部屋でゴブリン達に犯されている女性達を発見する。
彼女達は2、30人ほど居ると思われ、それぞれに何体ものゴブリンが群がっていた。
外にいた連中よりもやけに盛っているように見えるが、俺達から逃げてきた連中なのかもしれない。
危険な目にあって生存本能が刺激されたとか。
だとしたら囚われていた女性陣には悪い気がしないでもないが……まぁ、ここから助け出すってことで勘弁してもらおう。
これからその女性達を助けるつもりだとアニスエラに伝えようとすると、彼女は真剣な顔をしつつ無言で頷いた。
ゲーム通りに話が進んだ場合の、同じような目に遭う自分を想像したのかな。
……とっとと片付けるか。
女性達の姿を十全に楽しむためか部屋の中には篝火が焚かれていて割と明るいので、連中の頭に"格納庫"から直接小さなゴーレムを送り込むのには困らない。
どいつも意識が女性達に集中しているし、大ゴブリンのような特殊な魔物は見えないので……どの女性も埋まっていて順番待ちをしているやつから狙うことにした。
と、行動を開始して暫く。
「……」
「……」
大部屋には倒れて動かなくなったゴブリン達と……ゴブリン達が静かになった後にやって来た、足の生えた石の箱に怯える女性達が居た。
知らなければ俺達も魔物に見えるだろうからな。
というわけで……
ズズズ……
「えっ!?人?た、助かるの!?」
箱型ゴーレムの前面を開けて俺達が姿を見せると、人間が出てきたことから女性達の顔は一気に明るくなった。
しかし、俺はそんな彼女達へ首を横に振る。
「いえ、まだです。俺達は北の街道で魔物の集団に襲われて、わざと逃がした連中を追ってこの集落を見つけたんですが……」
「北の街道?そっちにも魔物の集団が出てたんですか?」
女性の1人がそう言うと、他の女性達がコソコソと話し出した。
「向こうから来てる人は居なかったわよね?」
「ええ」
「向こうにも出たって事は……私達が増やしてしまったからじゃ」
「かもしれないわね……」
北側から攫われた人はまだいないのか。
人の往来が多い南の街道では獲物が確保しづらくなって、仕方なく北の街道にも手を出すことにしたのだろうか?
そんな話で複雑そうな顔をする彼女達に、ここの魔物について質問してみる。
「あの、俺達はここの魔物を全て始末するつもりで来てるんですが……強いとか頭が良いとか、そういう奴はいませんでしたか?」
そう聞いてみると、女性陣の中から少し気の強そうな女性が手を上げて答える。
色々と汚れで酷い格好ではあるが、美女であることは確かだな。
「強いだけのが5匹、頭が良いだけのが4匹。強くて頭が良いのは3匹いたはずだ」
「そうですか。北の街道で人の言葉を話す体格の良いゴブリンと、そいつと一緒にいたオークらしい魔物は倒したんですが……そいつらはその中に入ってますか?」
その言葉にその女性は……いや、他の女性陣も含めて大きな驚きの声が上がる。
「ハア!?それってギドとバルドンのことか?」
どうやらあの2体はここの有力者だったらしい。
聞けば大ゴブリンことギドはここのNo.2で、力が強いだけのオークであるバルドンを上手く使うことでその地位を確立していたらしい。
「名前は知りませんでしたが……魔物にも個別の名前があるんですね」
「指示を出しやすくするためにと、頭の良い魔物達が有力な魔物には名前を付けるようにしたらしい。しかしそいつ等を倒したとなると……君は何者だ?」
「俺は北の街道上にあるルード村の村人です。で、こちらは……」
「そのルード村を統治しているブレークス男爵家のアニスエラ・ブレークスです」
「「ええっ!?」」
続けて名乗ったアニスエラに、相手が貴族ならばと女性達は慌てて跪こうとする。
ただ、つい先程までゴブリン達に嬲られていたせいでその動きは緩慢となっており、事情がわかっているアニスエラはそれを止める。
「ああ、楽にしてください。当家はそこまで気を遣われる家ではありませんので」
「「は、はぁ……」」
そう言われて楽な体勢にしている女性達の中で、先程の気の強そうな女性はきっちり跪いていた。
その体勢のせいで股間から零れ落ちる白い液体が目立ってしまうが、彼女はそれを気にせずアニスエラに声を掛ける。
「ブレークス様。貴女がここにおられるということは、貴族家がここの魔物を殲滅するために動いているということでしょうか?」
「え、ええ。いくつかの家が協力して、南側の街道にいる魔物を片付けようとしているはずです」
その発言に女性陣へ安堵の空気が広がるが、続く質問でその空気は霧散する。
「それは……あくまでも魔物の殲滅が目的で、我々の救助は考えられていないということでしょうか?」
その質問にアニスエラは首を横に振る。
「そこまではわからないわ。私達はそれに連携して動いているわけではないから」
「え?では何故このような所に?」
「それは……北の街道に魔物の集団が出たという情報が入ったのだけど、そのときには南側に戦力を送っててこちらに戦力が残ってなかったの。それでどうしようかと思ってたら……彼の情報も入ってきてね」
「彼の?」
言いながら俺へ視線を向けるアニスエラに、その女性も俺に目を向けてきた。
あ、そう言えば名乗ってないな。
「ジオと言います。えっと、このようにゴーレムを作って操るスキルがありまして、それでアニスエラ様にお力添えを」
自己紹介をしながら箱型ゴーレムを軽く操ってみせると、その女性がアニスエラに顔を向ける。
「それにしても、貴女自身がお出でになる必要はなかったのでは?その……貴女も被害に遭われておられるようですし」
気不味そうにそう言う彼女の目線はアニスエラの胸へ向けられており、その部分の服は大ゴブリンとの交渉で俺によって引き裂かれていた。
それに気づいたアニスエラは、慌てて事情を説明する。
「あっ、これは違います。おそらくギドって言うんでしょうけど、そのゴブリンとの交渉でジオが相手を騙すためにやったのよ。結局は失敗したけど」
加えてそうなった流れまでを説明されると、その女性は幾分安堵しながらもやはりアニスエラを気遣う。
「ご無事ならそれはいいのですが、それにしても貴女が直接ここへというのは……」
「それは……これが家からの依頼ではなく私個人の依頼で、大した報酬もなしに危険な目に遭ってもらうのだから、私も同行して命を懸けることで引き受けてくれるように頼み込んだのよ」
その説明に一応は納得したのか、その女性は今後の予定について聞いてくる。
「そうでしたか……では、これからはどう動かれるおつもりで?」
「とりあえず、北の街道に来ていた魔物はほとんどジオが倒したわ。わざと逃がした連中を追ってここまで来たから、あとはここにいる魔物を全滅させられればって話だったんだけど……」
「主力は南の街道へ出払っております。ここに残っていたのは頭が良いだけのゴブリンと、そいつが指揮を任されていた警備の連中ぐらいだったのですが……」
そう言いながら女性はある一点へ目を向ける。
その視線の先には……何体かのゴブリンが転がっていた。
「あのゴブリン達がどうかしたんですか?」
アニスエラのその問いに、女性は微妙な顔で言葉を返す。
「実はあの中の1匹が警備の指揮を任されていたのですが……倒れて動きませんね」
「「え」」
一時的にとはいえここの指揮を任せれているのだし、一番奥に引きこもっているのかと思っていたが……どうやら、他のゴブリンに混じって女性を貪っていたらしい。
「後で誰かに密告されるでしょうに」
他の有力者に密告され、何らかの処分を受けるのではないかと言うアニスエラ。
その疑問に、跪いている女性は悔しそうな表情をする。
「奴は人の言葉を話せて少し頭が回るぐらいで、有力者の中では一番下の立場だったのですが……それのせいか女を犯すのは上位者から制限されていたようで、いい機会だからとここで楽しんでいたのです……私も含めて」
頭が良いだけでは女を制限される?
ということは……使う側と使われる側を明確に分け、使われる側には変に知恵を持って欲しくなかったのかもしれないな。
なんなら頭が良いタイプはもう増やしたくなかったか。
その場合、頭の良い魔物が生まれたらどうするつもりなのかが気になるが。
それはさておき。
自分も使われていたと話す彼女に
「えーと、それは何と言うか……」
と、どんな言葉をかけるべきかと困る俺。
そんな俺に、その女性は微笑んでみせた。
「お気遣いなく、すでに殺されていて清々しているからな。まぁ、できれば自分の手で殺したかったところだが」
「は、はぁ」
微笑みながらの物騒な発言だったが、彼女の立場ではそう思ってもおかしくはないか。
続けて、彼女は周囲を見回しながら質問してくる。
「それにしても……奴を含めて、これだけのゴブリンをどうやって」
そう言って彼女は魔物達を倒した方法を聞いてくるが……俺はこう返した。
「今後の事を考えて秘密です」
その答えに納得しつつも、女性はこの後のことに言及する。
「……そうか。だが、それでは協力しようにもできないぞ?」
「大丈夫です。貴女はある程度鍛えられているようですが、装備が無い以上は下手に動かれないほうがやりやすいので」
人質にでも取られると面倒だ。
言外にそう言ったのを察したのかその女性は悔しそうだが、まだ何体もの有力な魔物を相手にするとなるとそうなる可能性が高い。
彼女もそれを理解しているようで、ならばと情報提供で俺達を支援することにしたようだ。
「では、ここのボスについて話しておこう」
「それは助かりますが、ボスだけですか?」
「他は強く賢いだけだからな。それはそれで面倒ではあるが……ただ、ボスだけはスキルを持っていて厄介だ。私はそれにやられて囚われた」
「ということは、やはり貴女は戦う立場の人だったんですか?」
「ああ。その……訳あって名乗ることは出来ないが」
アニスエラへの態度から、貴族に関わる人か軍人だと予想するが……どちらにしても、ここでゴブリンの繁殖を手伝うことになっていれば名乗りたくはないだろうな。
「で、そのボスのスキルって?」
「それは……よくわからない」
「「えっ」」
若干の間を置いて発せられた言葉に俺達はガッカリするが、続けて述べられた情報に気を引き締めた。
「いやその、よくわからないのは事実だが……気づいたら仲間が全員殺されていて、私も武器を取られていたり組み伏せられていたりしたんだ」
更にその奥の大部屋でゴブリン達に犯されている女性達を発見する。
彼女達は2、30人ほど居ると思われ、それぞれに何体ものゴブリンが群がっていた。
外にいた連中よりもやけに盛っているように見えるが、俺達から逃げてきた連中なのかもしれない。
危険な目にあって生存本能が刺激されたとか。
だとしたら囚われていた女性陣には悪い気がしないでもないが……まぁ、ここから助け出すってことで勘弁してもらおう。
これからその女性達を助けるつもりだとアニスエラに伝えようとすると、彼女は真剣な顔をしつつ無言で頷いた。
ゲーム通りに話が進んだ場合の、同じような目に遭う自分を想像したのかな。
……とっとと片付けるか。
女性達の姿を十全に楽しむためか部屋の中には篝火が焚かれていて割と明るいので、連中の頭に"格納庫"から直接小さなゴーレムを送り込むのには困らない。
どいつも意識が女性達に集中しているし、大ゴブリンのような特殊な魔物は見えないので……どの女性も埋まっていて順番待ちをしているやつから狙うことにした。
と、行動を開始して暫く。
「……」
「……」
大部屋には倒れて動かなくなったゴブリン達と……ゴブリン達が静かになった後にやって来た、足の生えた石の箱に怯える女性達が居た。
知らなければ俺達も魔物に見えるだろうからな。
というわけで……
ズズズ……
「えっ!?人?た、助かるの!?」
箱型ゴーレムの前面を開けて俺達が姿を見せると、人間が出てきたことから女性達の顔は一気に明るくなった。
しかし、俺はそんな彼女達へ首を横に振る。
「いえ、まだです。俺達は北の街道で魔物の集団に襲われて、わざと逃がした連中を追ってこの集落を見つけたんですが……」
「北の街道?そっちにも魔物の集団が出てたんですか?」
女性の1人がそう言うと、他の女性達がコソコソと話し出した。
「向こうから来てる人は居なかったわよね?」
「ええ」
「向こうにも出たって事は……私達が増やしてしまったからじゃ」
「かもしれないわね……」
北側から攫われた人はまだいないのか。
人の往来が多い南の街道では獲物が確保しづらくなって、仕方なく北の街道にも手を出すことにしたのだろうか?
そんな話で複雑そうな顔をする彼女達に、ここの魔物について質問してみる。
「あの、俺達はここの魔物を全て始末するつもりで来てるんですが……強いとか頭が良いとか、そういう奴はいませんでしたか?」
そう聞いてみると、女性陣の中から少し気の強そうな女性が手を上げて答える。
色々と汚れで酷い格好ではあるが、美女であることは確かだな。
「強いだけのが5匹、頭が良いだけのが4匹。強くて頭が良いのは3匹いたはずだ」
「そうですか。北の街道で人の言葉を話す体格の良いゴブリンと、そいつと一緒にいたオークらしい魔物は倒したんですが……そいつらはその中に入ってますか?」
その言葉にその女性は……いや、他の女性陣も含めて大きな驚きの声が上がる。
「ハア!?それってギドとバルドンのことか?」
どうやらあの2体はここの有力者だったらしい。
聞けば大ゴブリンことギドはここのNo.2で、力が強いだけのオークであるバルドンを上手く使うことでその地位を確立していたらしい。
「名前は知りませんでしたが……魔物にも個別の名前があるんですね」
「指示を出しやすくするためにと、頭の良い魔物達が有力な魔物には名前を付けるようにしたらしい。しかしそいつ等を倒したとなると……君は何者だ?」
「俺は北の街道上にあるルード村の村人です。で、こちらは……」
「そのルード村を統治しているブレークス男爵家のアニスエラ・ブレークスです」
「「ええっ!?」」
続けて名乗ったアニスエラに、相手が貴族ならばと女性達は慌てて跪こうとする。
ただ、つい先程までゴブリン達に嬲られていたせいでその動きは緩慢となっており、事情がわかっているアニスエラはそれを止める。
「ああ、楽にしてください。当家はそこまで気を遣われる家ではありませんので」
「「は、はぁ……」」
そう言われて楽な体勢にしている女性達の中で、先程の気の強そうな女性はきっちり跪いていた。
その体勢のせいで股間から零れ落ちる白い液体が目立ってしまうが、彼女はそれを気にせずアニスエラに声を掛ける。
「ブレークス様。貴女がここにおられるということは、貴族家がここの魔物を殲滅するために動いているということでしょうか?」
「え、ええ。いくつかの家が協力して、南側の街道にいる魔物を片付けようとしているはずです」
その発言に女性陣へ安堵の空気が広がるが、続く質問でその空気は霧散する。
「それは……あくまでも魔物の殲滅が目的で、我々の救助は考えられていないということでしょうか?」
その質問にアニスエラは首を横に振る。
「そこまではわからないわ。私達はそれに連携して動いているわけではないから」
「え?では何故このような所に?」
「それは……北の街道に魔物の集団が出たという情報が入ったのだけど、そのときには南側に戦力を送っててこちらに戦力が残ってなかったの。それでどうしようかと思ってたら……彼の情報も入ってきてね」
「彼の?」
言いながら俺へ視線を向けるアニスエラに、その女性も俺に目を向けてきた。
あ、そう言えば名乗ってないな。
「ジオと言います。えっと、このようにゴーレムを作って操るスキルがありまして、それでアニスエラ様にお力添えを」
自己紹介をしながら箱型ゴーレムを軽く操ってみせると、その女性がアニスエラに顔を向ける。
「それにしても、貴女自身がお出でになる必要はなかったのでは?その……貴女も被害に遭われておられるようですし」
気不味そうにそう言う彼女の目線はアニスエラの胸へ向けられており、その部分の服は大ゴブリンとの交渉で俺によって引き裂かれていた。
それに気づいたアニスエラは、慌てて事情を説明する。
「あっ、これは違います。おそらくギドって言うんでしょうけど、そのゴブリンとの交渉でジオが相手を騙すためにやったのよ。結局は失敗したけど」
加えてそうなった流れまでを説明されると、その女性は幾分安堵しながらもやはりアニスエラを気遣う。
「ご無事ならそれはいいのですが、それにしても貴女が直接ここへというのは……」
「それは……これが家からの依頼ではなく私個人の依頼で、大した報酬もなしに危険な目に遭ってもらうのだから、私も同行して命を懸けることで引き受けてくれるように頼み込んだのよ」
その説明に一応は納得したのか、その女性は今後の予定について聞いてくる。
「そうでしたか……では、これからはどう動かれるおつもりで?」
「とりあえず、北の街道に来ていた魔物はほとんどジオが倒したわ。わざと逃がした連中を追ってここまで来たから、あとはここにいる魔物を全滅させられればって話だったんだけど……」
「主力は南の街道へ出払っております。ここに残っていたのは頭が良いだけのゴブリンと、そいつが指揮を任されていた警備の連中ぐらいだったのですが……」
そう言いながら女性はある一点へ目を向ける。
その視線の先には……何体かのゴブリンが転がっていた。
「あのゴブリン達がどうかしたんですか?」
アニスエラのその問いに、女性は微妙な顔で言葉を返す。
「実はあの中の1匹が警備の指揮を任されていたのですが……倒れて動きませんね」
「「え」」
一時的にとはいえここの指揮を任せれているのだし、一番奥に引きこもっているのかと思っていたが……どうやら、他のゴブリンに混じって女性を貪っていたらしい。
「後で誰かに密告されるでしょうに」
他の有力者に密告され、何らかの処分を受けるのではないかと言うアニスエラ。
その疑問に、跪いている女性は悔しそうな表情をする。
「奴は人の言葉を話せて少し頭が回るぐらいで、有力者の中では一番下の立場だったのですが……それのせいか女を犯すのは上位者から制限されていたようで、いい機会だからとここで楽しんでいたのです……私も含めて」
頭が良いだけでは女を制限される?
ということは……使う側と使われる側を明確に分け、使われる側には変に知恵を持って欲しくなかったのかもしれないな。
なんなら頭が良いタイプはもう増やしたくなかったか。
その場合、頭の良い魔物が生まれたらどうするつもりなのかが気になるが。
それはさておき。
自分も使われていたと話す彼女に
「えーと、それは何と言うか……」
と、どんな言葉をかけるべきかと困る俺。
そんな俺に、その女性は微笑んでみせた。
「お気遣いなく、すでに殺されていて清々しているからな。まぁ、できれば自分の手で殺したかったところだが」
「は、はぁ」
微笑みながらの物騒な発言だったが、彼女の立場ではそう思ってもおかしくはないか。
続けて、彼女は周囲を見回しながら質問してくる。
「それにしても……奴を含めて、これだけのゴブリンをどうやって」
そう言って彼女は魔物達を倒した方法を聞いてくるが……俺はこう返した。
「今後の事を考えて秘密です」
その答えに納得しつつも、女性はこの後のことに言及する。
「……そうか。だが、それでは協力しようにもできないぞ?」
「大丈夫です。貴女はある程度鍛えられているようですが、装備が無い以上は下手に動かれないほうがやりやすいので」
人質にでも取られると面倒だ。
言外にそう言ったのを察したのかその女性は悔しそうだが、まだ何体もの有力な魔物を相手にするとなるとそうなる可能性が高い。
彼女もそれを理解しているようで、ならばと情報提供で俺達を支援することにしたようだ。
「では、ここのボスについて話しておこう」
「それは助かりますが、ボスだけですか?」
「他は強く賢いだけだからな。それはそれで面倒ではあるが……ただ、ボスだけはスキルを持っていて厄介だ。私はそれにやられて囚われた」
「ということは、やはり貴女は戦う立場の人だったんですか?」
「ああ。その……訳あって名乗ることは出来ないが」
アニスエラへの態度から、貴族に関わる人か軍人だと予想するが……どちらにしても、ここでゴブリンの繁殖を手伝うことになっていれば名乗りたくはないだろうな。
「で、そのボスのスキルって?」
「それは……よくわからない」
「「えっ」」
若干の間を置いて発せられた言葉に俺達はガッカリするが、続けて述べられた情報に気を引き締めた。
「いやその、よくわからないのは事実だが……気づいたら仲間が全員殺されていて、私も武器を取られていたり組み伏せられていたりしたんだ」
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