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25話
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村を離れて数十分後。
結構な速さで直進を続ける箱型ゴーレムに乗り込んでいた俺とアニスエラは、その前面にある小窓から前方を確認しつつ進んでいた。
「……やっぱり暗いわね。これだけ進んでるんだし、灯りを点けても村から見えたりはしないでしょうけど……」
「代わりに魔物からは見えるでしょうね。出てきては欲しくとも先手は取られたくないんで、魔石の反応を感知するまでは……っ!?」
「……魔物を見つけたの?」
アニスエラは息を呑む俺の反応で察したようで、一応声を潜めて聞いてくる。
俺はその予想が合っていることを彼女に伝えた。
「ええ、南北双方に居ますね。街道に近寄って来てはいますが……どちらもある程度の距離で足を止めてます」
「……多分、森の外に出ないギリギリの、街道からは見え難い位置で待機してるわね」
なるほど。
森の外縁部に集まってるから、魔石の反応はその縁をなぞるようなラインになってるのか。
「となると……俺達を逃さないように、確実に囲める場所までは待つつもりか」
「でしょうね。どうする?」
「んー……まぁ、もう先手を取られてるようなものですし、こちらとしてもなるべく多く森から出てきて欲しいんでお望み通りに囲ませてあげましょう」
「そうね。可能な限り始末しておきたいし」
逃がす数が多いほど、数を補充して再び現れる可能性が高くなる。
なので俺達はここで魔物達の全滅を狙っており、連中を引き寄せるために街道の封鎖地点までそのまま進む事にした。
ズンズンズンズンズン……ザッ
「これが街道を塞いだ大岩か……」
大岩の直前で箱型ゴーレムの足を止めると、俺達は小窓からランプの灯りでそれを見上げる。
すでに魔物達はこちらを認識しているようなので、大岩にぶつからないようにランプを使ったのだ。
で、移動を止めて大岩を眺めていると……一斉に魔物達が動き出した。
タタタタ……
トトトト……
ズンッ、ズンッ……
いろんな足音がしているが、どれもなるべく大きな音を出さないようにしていると感じる。
全ての魔物が自主的にやっているわけではないだろうし、待ち伏せや包囲なども含めて統率を取ってる個体が居るんじゃないだろうか?
以前、サリーさん母娘を襲った連中のリーダー格のような奴が。
それをアニスエラに伝えると……
「あり得るわね。そもそも、街道を塞いで立ち往生したところを狙うって時点でそうとしか思えないけど」
と、同意見だった。
そんなとき……俺達の包囲が完了したようで、周囲から沢山の声?が聞こえてきた。
「ギッギッギ……♪」
「キキッ♪」
「ギャッギャッ♪」
内容は不明だが、どれも楽しそうなことが伝わってくる。
「……ゴクッ」
それによってか、緊張を強めた様子のアニスエラが唾液を嚥下すると、それと同時にある魔物が動き、俺達へ近づいてきた。
ズン、ズン、ズン……ザッ
「「っ!」」
そいつはごく普通の足取りで、俺達が乗っているゴーレムの前に現れた。
身長は2mほどあるだろうか、どう見ても普通のゴブリンではない。
手ぶらではあるが腰に剣を下げており、鞘の上からではあるが人の手で作られたであろうことが窺える。
そんな、大ゴブリンとでも言えそうな奴は、こちらを見ると話しかけてきた。
人の言葉で。
「おう、こんな時間なら俺達が居ねぇと思ったか?」
「「っ!?」」
驚く俺達に、大ゴブリンは話を続ける。
「ハッ、人の言葉を話せるのが意外か?何匹も人間のメスを相手にしてんだからよ、中には覚えて話せるようになる奴も居るさ。話せるようになるとこれが今まで以上に楽しめてな?口で満足させたら逃がしてやるって言ってよ、そうすっとチ◯ポを狂ったようにしゃぶるんだが……出そうになったらマ◯コに突っ込んで出してやってよ、そのときの驚きから絶望へ変わる顔がまた良いんだよ」
「「……」」
世間話のように軽いノリで饒舌に話してはいるが、アニスエラとしては他人事ではない。
自分も同じ目に遭う予定であり、それを回避するために行動しているわけだからな。
すぐにでもコイツを始末したほうが良いのかもしれないが……これだけペラペラと喋るような奴だし、何か重要な情報を聞き出せるかもしれない。
可能であれば、塒の場所やそこに居る魔物の規模を聞いておきたいところである。
そんな大ゴブリンだが、俺達が黙って話を聞いていると言葉が通じていない可能性に思い至ったのか、小窓を覗き込んで俺達を見る。
「んー?表情からすると言葉は通じてるよな?ああ、怖がってるだけか。ってかどっちもあんまデカくはねぇが……まぁ、メスのほうはこれから長く使えると考えればいいか。となると、すぐに壊すような連中には使わせられねぇな。こないだ逃がした連中が使えりゃまだ抑えが効いただろうけど」
この間というのは、おそらくリョーガさん達のことだろう。
彼に付いていた護衛は3人の女性だったが……
村などの大きな集団を狙わず道行く少人数を狙い、取り逃した3人を惜しむということは……規模が大きすぎて女性が足りないのか?
俺達を囲んでいる数も魔石の反応だけで言えば……100以上は居そうだしな。
村を襲いに来る予定なわけだし、何とか塒の場所だけでも聞き出したいが……あ、そうだ。
ここで1つ、俺は塒の場所を聞けるかもしれない案を思いつき、それをすぐに実行した。
「あ、あの!」
「ん?何だよ」
「俺を見逃してくれれば、村に戻ってまた女性……メスを連れてきます。どうですか?」
「え?ちょっと、何言ってるの!どういうつもり!?」
ガシッ
俺の大ゴブリンへの提案にアニスエラは憤慨する。
彼女は掴みかかってくるが、俺はそれを抑えると……彼女の服を引き裂き、歳に見合わない胸を晒してみせた。
ビリィッ、ブルンッ
「キャアッ!ちょっ、止めてよっ!」
今のところ彼女は身体強化スキルを使えず、且つ俺はゴーレムを使って後ろ手に拘束しているので身を捩る程度にしか抵抗できていない。
そんなアニスエラの胸を、見せつけるように揉み上げながら自分を売り込む。
モミモミモミモミ……
「ほら、いい身体でしょ?でも、もっと良いのが村には何匹か居ますし、俺なら疑われずに連れてこれると思いますよ?」
「うう、そんな……」
俺の言葉に、裏切られたと思ったのか悲哀の声を漏らす彼女だが……それは打ち合わせをしていないので当然であり、だからか大ゴブリンは話に乗ってきた。
「ほう、話のわかるガキじゃねぇか。だがな……それはお前の村を直接襲えばいいだけの話だぜ?」
「いえ、それでは攫いたいメスに逃げられてしまうかもしれませんし、死んでしまうかもしれないじゃないですか」
「……まぁ、それがねぇとは言えねぇが」
「でしょう?それに、村を襲えば抵抗するオスを殺す事になりますよね。ですが、あなた達の獲物であるメスを増やすためにはオスが必要ですし、村が残っていれば外からメスがやって来ることもありますよ?」
人間の女性を利用して繁殖するからにはゴブリンにメスが居ないのだろうし、オスしか居なければ数が増えないことを理解しているはずだ。
なので、数が増えなければ人間の女性も増えないことを強調し、村を存続させたほうが良いと言って俺の案を飲ませようと考えた。
大ゴブリンはそれを理解したようで……
「だから、ここで見逃せば自分が連れて来るってか。まぁ、それならこっちも無駄な被害は出ねぇえだろうけど……」
「でしょう?いかがですか?」
モミモミモミモミ……
「うぅ……」
提案を通すために相手の思考力低下を狙い、アニスエラの胸を捏ね回して見せつける。
彼女からの好感度はだだ下がりだろうけど……まぁ、お叱りは後で。
俺のそんな考えはある程度の効果があったのだが、大ゴブリンの質問から流れが変わった。
「で、その話に乗ったとしてよ……お前は何処にそのメスを連れてくる気なんだ?」
「え?それは……」
「ここか?開けた場所かその近くじゃ、後をつけられてすぐバレるよな?」
「まぁ、そうですね」
「森の奥だとしても毎回場所を変える必要があるし、そもそも他の連中じゃお前を襲っちまうだろうから俺が出てこなきゃなんねぇよな?」
「そうですね。ですから俺が……」
塒へ運ぶ、と言おうとしたところに大ゴブリンが先んじた。
「塒の場所を教えろとは言わねぇよな?」
「……」
黙る俺に、大ゴブリンは呆れたように言う。
「教えるわけねぇだろ……」
「ですよねー……」
大ゴブリンのプライバシー保護意識は高かったようだ。
「……」
ここでアニスエラは俺が塒の場所を聞き出そうとしていたのだと気づいたのか、無言ながらも安堵した表情を見せる。
そんな俺の目論見が失敗したところ、大ゴブリンは軽く溜め息をつくと行動を起こす。
「ハァ。じゃ、交渉はおしまいってこった……なっ!」
ジャッ!
そう言いながら腰の剣を抜く大ゴブリン。
そのまま剣を突くように構えるが……本人の判断で中止された。
箱型ゴーレムの小窓は格子状になっており、剣の刃先を縦にしたり横にしたりしても入りそうになかったからだ。
「……流石に剣が駄目になりそうだな。おい、大人しく出てくる気はあるか?」
「ありませんね」
「だよな。まぁいい、なら他の奴に任せるだけだ」
そう言うと大ゴブリンはハンドサインで誰かを呼んだ。
ズゥンッ、ズゥンッ、ズゥンッ……ザッ
「ブフォ?」
小窓の端に現れたのは大ゴブリンよりも大きい魔物で、顔からすると人型になった豚という印象だった。
前世の知識からすると……オーク、かな?
「グギギャ、ゲゲ」
俺には理解できなかったが大ゴブリンが何かを指示したようで、その内容はすぐに判明する。
ズィッ
オークは俺達の正面に来ると、身体に見合った大きさのデカい棍棒を持っていた。
しっかりと加工はされているようで、先の方はバットのように丸みを帯び、握りやすいようにグリップとグリップエンドまで細工されている。
野球のバットほど滑らかな物ではなさそうだが……いや、形としてはまんまバットだなこれ。
しかし、その太さは大きめの丸太に近く、ゴーレム化した石の箱の中にいても不安を感じる。
「ブフォー……」
スッ
そんな棍棒を、オークは野球のバッターのように構え……
「……ブ?」
ドシィン!
片足を上げたところでそのまま倒れた。
結構な速さで直進を続ける箱型ゴーレムに乗り込んでいた俺とアニスエラは、その前面にある小窓から前方を確認しつつ進んでいた。
「……やっぱり暗いわね。これだけ進んでるんだし、灯りを点けても村から見えたりはしないでしょうけど……」
「代わりに魔物からは見えるでしょうね。出てきては欲しくとも先手は取られたくないんで、魔石の反応を感知するまでは……っ!?」
「……魔物を見つけたの?」
アニスエラは息を呑む俺の反応で察したようで、一応声を潜めて聞いてくる。
俺はその予想が合っていることを彼女に伝えた。
「ええ、南北双方に居ますね。街道に近寄って来てはいますが……どちらもある程度の距離で足を止めてます」
「……多分、森の外に出ないギリギリの、街道からは見え難い位置で待機してるわね」
なるほど。
森の外縁部に集まってるから、魔石の反応はその縁をなぞるようなラインになってるのか。
「となると……俺達を逃さないように、確実に囲める場所までは待つつもりか」
「でしょうね。どうする?」
「んー……まぁ、もう先手を取られてるようなものですし、こちらとしてもなるべく多く森から出てきて欲しいんでお望み通りに囲ませてあげましょう」
「そうね。可能な限り始末しておきたいし」
逃がす数が多いほど、数を補充して再び現れる可能性が高くなる。
なので俺達はここで魔物達の全滅を狙っており、連中を引き寄せるために街道の封鎖地点までそのまま進む事にした。
ズンズンズンズンズン……ザッ
「これが街道を塞いだ大岩か……」
大岩の直前で箱型ゴーレムの足を止めると、俺達は小窓からランプの灯りでそれを見上げる。
すでに魔物達はこちらを認識しているようなので、大岩にぶつからないようにランプを使ったのだ。
で、移動を止めて大岩を眺めていると……一斉に魔物達が動き出した。
タタタタ……
トトトト……
ズンッ、ズンッ……
いろんな足音がしているが、どれもなるべく大きな音を出さないようにしていると感じる。
全ての魔物が自主的にやっているわけではないだろうし、待ち伏せや包囲なども含めて統率を取ってる個体が居るんじゃないだろうか?
以前、サリーさん母娘を襲った連中のリーダー格のような奴が。
それをアニスエラに伝えると……
「あり得るわね。そもそも、街道を塞いで立ち往生したところを狙うって時点でそうとしか思えないけど」
と、同意見だった。
そんなとき……俺達の包囲が完了したようで、周囲から沢山の声?が聞こえてきた。
「ギッギッギ……♪」
「キキッ♪」
「ギャッギャッ♪」
内容は不明だが、どれも楽しそうなことが伝わってくる。
「……ゴクッ」
それによってか、緊張を強めた様子のアニスエラが唾液を嚥下すると、それと同時にある魔物が動き、俺達へ近づいてきた。
ズン、ズン、ズン……ザッ
「「っ!」」
そいつはごく普通の足取りで、俺達が乗っているゴーレムの前に現れた。
身長は2mほどあるだろうか、どう見ても普通のゴブリンではない。
手ぶらではあるが腰に剣を下げており、鞘の上からではあるが人の手で作られたであろうことが窺える。
そんな、大ゴブリンとでも言えそうな奴は、こちらを見ると話しかけてきた。
人の言葉で。
「おう、こんな時間なら俺達が居ねぇと思ったか?」
「「っ!?」」
驚く俺達に、大ゴブリンは話を続ける。
「ハッ、人の言葉を話せるのが意外か?何匹も人間のメスを相手にしてんだからよ、中には覚えて話せるようになる奴も居るさ。話せるようになるとこれが今まで以上に楽しめてな?口で満足させたら逃がしてやるって言ってよ、そうすっとチ◯ポを狂ったようにしゃぶるんだが……出そうになったらマ◯コに突っ込んで出してやってよ、そのときの驚きから絶望へ変わる顔がまた良いんだよ」
「「……」」
世間話のように軽いノリで饒舌に話してはいるが、アニスエラとしては他人事ではない。
自分も同じ目に遭う予定であり、それを回避するために行動しているわけだからな。
すぐにでもコイツを始末したほうが良いのかもしれないが……これだけペラペラと喋るような奴だし、何か重要な情報を聞き出せるかもしれない。
可能であれば、塒の場所やそこに居る魔物の規模を聞いておきたいところである。
そんな大ゴブリンだが、俺達が黙って話を聞いていると言葉が通じていない可能性に思い至ったのか、小窓を覗き込んで俺達を見る。
「んー?表情からすると言葉は通じてるよな?ああ、怖がってるだけか。ってかどっちもあんまデカくはねぇが……まぁ、メスのほうはこれから長く使えると考えればいいか。となると、すぐに壊すような連中には使わせられねぇな。こないだ逃がした連中が使えりゃまだ抑えが効いただろうけど」
この間というのは、おそらくリョーガさん達のことだろう。
彼に付いていた護衛は3人の女性だったが……
村などの大きな集団を狙わず道行く少人数を狙い、取り逃した3人を惜しむということは……規模が大きすぎて女性が足りないのか?
俺達を囲んでいる数も魔石の反応だけで言えば……100以上は居そうだしな。
村を襲いに来る予定なわけだし、何とか塒の場所だけでも聞き出したいが……あ、そうだ。
ここで1つ、俺は塒の場所を聞けるかもしれない案を思いつき、それをすぐに実行した。
「あ、あの!」
「ん?何だよ」
「俺を見逃してくれれば、村に戻ってまた女性……メスを連れてきます。どうですか?」
「え?ちょっと、何言ってるの!どういうつもり!?」
ガシッ
俺の大ゴブリンへの提案にアニスエラは憤慨する。
彼女は掴みかかってくるが、俺はそれを抑えると……彼女の服を引き裂き、歳に見合わない胸を晒してみせた。
ビリィッ、ブルンッ
「キャアッ!ちょっ、止めてよっ!」
今のところ彼女は身体強化スキルを使えず、且つ俺はゴーレムを使って後ろ手に拘束しているので身を捩る程度にしか抵抗できていない。
そんなアニスエラの胸を、見せつけるように揉み上げながら自分を売り込む。
モミモミモミモミ……
「ほら、いい身体でしょ?でも、もっと良いのが村には何匹か居ますし、俺なら疑われずに連れてこれると思いますよ?」
「うう、そんな……」
俺の言葉に、裏切られたと思ったのか悲哀の声を漏らす彼女だが……それは打ち合わせをしていないので当然であり、だからか大ゴブリンは話に乗ってきた。
「ほう、話のわかるガキじゃねぇか。だがな……それはお前の村を直接襲えばいいだけの話だぜ?」
「いえ、それでは攫いたいメスに逃げられてしまうかもしれませんし、死んでしまうかもしれないじゃないですか」
「……まぁ、それがねぇとは言えねぇが」
「でしょう?それに、村を襲えば抵抗するオスを殺す事になりますよね。ですが、あなた達の獲物であるメスを増やすためにはオスが必要ですし、村が残っていれば外からメスがやって来ることもありますよ?」
人間の女性を利用して繁殖するからにはゴブリンにメスが居ないのだろうし、オスしか居なければ数が増えないことを理解しているはずだ。
なので、数が増えなければ人間の女性も増えないことを強調し、村を存続させたほうが良いと言って俺の案を飲ませようと考えた。
大ゴブリンはそれを理解したようで……
「だから、ここで見逃せば自分が連れて来るってか。まぁ、それならこっちも無駄な被害は出ねぇえだろうけど……」
「でしょう?いかがですか?」
モミモミモミモミ……
「うぅ……」
提案を通すために相手の思考力低下を狙い、アニスエラの胸を捏ね回して見せつける。
彼女からの好感度はだだ下がりだろうけど……まぁ、お叱りは後で。
俺のそんな考えはある程度の効果があったのだが、大ゴブリンの質問から流れが変わった。
「で、その話に乗ったとしてよ……お前は何処にそのメスを連れてくる気なんだ?」
「え?それは……」
「ここか?開けた場所かその近くじゃ、後をつけられてすぐバレるよな?」
「まぁ、そうですね」
「森の奥だとしても毎回場所を変える必要があるし、そもそも他の連中じゃお前を襲っちまうだろうから俺が出てこなきゃなんねぇよな?」
「そうですね。ですから俺が……」
塒へ運ぶ、と言おうとしたところに大ゴブリンが先んじた。
「塒の場所を教えろとは言わねぇよな?」
「……」
黙る俺に、大ゴブリンは呆れたように言う。
「教えるわけねぇだろ……」
「ですよねー……」
大ゴブリンのプライバシー保護意識は高かったようだ。
「……」
ここでアニスエラは俺が塒の場所を聞き出そうとしていたのだと気づいたのか、無言ながらも安堵した表情を見せる。
そんな俺の目論見が失敗したところ、大ゴブリンは軽く溜め息をつくと行動を起こす。
「ハァ。じゃ、交渉はおしまいってこった……なっ!」
ジャッ!
そう言いながら腰の剣を抜く大ゴブリン。
そのまま剣を突くように構えるが……本人の判断で中止された。
箱型ゴーレムの小窓は格子状になっており、剣の刃先を縦にしたり横にしたりしても入りそうになかったからだ。
「……流石に剣が駄目になりそうだな。おい、大人しく出てくる気はあるか?」
「ありませんね」
「だよな。まぁいい、なら他の奴に任せるだけだ」
そう言うと大ゴブリンはハンドサインで誰かを呼んだ。
ズゥンッ、ズゥンッ、ズゥンッ……ザッ
「ブフォ?」
小窓の端に現れたのは大ゴブリンよりも大きい魔物で、顔からすると人型になった豚という印象だった。
前世の知識からすると……オーク、かな?
「グギギャ、ゲゲ」
俺には理解できなかったが大ゴブリンが何かを指示したようで、その内容はすぐに判明する。
ズィッ
オークは俺達の正面に来ると、身体に見合った大きさのデカい棍棒を持っていた。
しっかりと加工はされているようで、先の方はバットのように丸みを帯び、握りやすいようにグリップとグリップエンドまで細工されている。
野球のバットほど滑らかな物ではなさそうだが……いや、形としてはまんまバットだなこれ。
しかし、その太さは大きめの丸太に近く、ゴーレム化した石の箱の中にいても不安を感じる。
「ブフォー……」
スッ
そんな棍棒を、オークは野球のバッターのように構え……
「……ブ?」
ドシィン!
片足を上げたところでそのまま倒れた。
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