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12話

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商人であるリョーガさんの護衛で、道中で魔物の集団に襲われていくつもの怪我をしていた女冒険者達。

そんな彼女達の怪我を、俺はゴーレムの力による修復能力を利用して全てキレイに治してみせた。

その治療費が相場に比べて安すぎるとのことで、彼女達の身体によるがされるという話だったのだが……その話は一旦保留に、という提案をした。


「シないの?意味がわかるぐらいには興味あるんでしょ?」

スリスリ……


そう言うフレイさんは全裸であり、正面で大きな胸を揺らしながら俺の股間を撫でている。

テレーナさんとマールさんも同様に全裸で、左右から俺に身体を擦り付けているが……


「リョーガさんには治療がすぐ終わることを知られてますし、俺も色々とやることがあるんで長くここに居るわけにはいかないんですよ」


報酬を貰えれば魔石に余裕ができるし、リーナさんの友人達を湯浴みさせる大きめの浴槽とそれを囲む壁などを作っておきたいからな。

その後でまだ魔石が余っているようだったら、木や石で作った物を売って今後のために金も確保したい。

フレイさん達の怪我は治ったのだし、俺の治癒能力を隠すためにある程度は村に滞在するのだろうが……リョーガさんも仕事はあるわけで、そこまで長期間にはならないだろうから金を稼ぐ機会は少なそうだけどな。

そんなわけで、彼女達の身体によるは仕方なく諦めた。

まぁ、治療の合間にちょこちょこ揉ませて貰ったのでそれで良し。

その影響で硬く尖った3人のが惜しくはあるが。



治療が終わったことを報告してその報酬を貰うため、リョーガさんが居るであろう表の店舗側へ向かう。

疑われてはいないだろうが、それが事実であることを証言するためにテレーナさんが同行した。


「リョーガ」

「ん?おお、終わったのかい?」

「ええ……私も含めて、怪我は全て治してもらったわ」


周囲の耳を気にして、辺りを見回しながら答えるテレーナさん。

その様子でリョーガさんはすぐに察したのか、彼も周囲を確認してから一旦店を閉めた。

この村にそこまで頻繁に客が来るほどの人口がないからできることだな。

内側から外へ押し上げる窓を大きくしたような入口で、それを支えるつっかえ棒を外して下ろすだけなのですぐに店じまいは完了する。

それによって店内は暗くなったが、まだ明るい時間で建物の隙間から差し込む光があるので薄暗い程度に留まり、その中で話に戻る。


「で、ジオ君の治癒能力については秘密にしたほうが良いってことだよね?」


やはりその点について察していたようで、要点を簡潔にまとめたリョーガさんがそう聞いてきた。

テレーナさんが頷いてから答える。


「ええ。広まれば権力者に囲われるのは確実よ」

「その点についてはゴーレムの力だけでもそうなんだけど……まぁ、それ以上にが激しくなるか」

「でしょうね。そうなったら今後、貴方や私達が治療を頼むことは難しくなるわ」

「だろうねぇ……ただ、2人はまだ動かせないってことにすると、暫くここに滞在しないといけなくなるんだけど」

「予定を超える分の食費は払うわ。ただ、できれば依頼を終わらせた後に支払う形にしてもらえないかしら?」

「ああ、いいよ。報酬から引くと仕事を請けた側に手落ちがあった事になって、ギルドからの評価が悪くなるしね」


どうやら、報酬は仕事を斡旋する"ギルド"という組織に先払いしてあり、同じか別の場所にある同組織の事務所に依頼者からの依頼を達成したという証明を提出して受け取る仕組みらしい。

ギルドの事務所がない場所で依頼が完遂される場合、報酬をギルドに預けずに現地での後払いという形になるようだ。

で、先払いしてある報酬から予定外の出費による天引きをすると仕事を請け負った側に落ち度があったと判断され、その記録がある事務所では以降に請けられる依頼の程度が下げられるらしい。

なんでも、金銀銅のそれぞれに5段階ずつの階級があるそうで、それがギルドで作られる登録証に刻まれるらしく、仕事を探す際に見せて紹介する基準にされているとのこと。

ちなみに、テレーナさんとマールさんは銅4級でフレイさんは銅3級らしく、まだ新人に毛が生えたぐらいのもののようだ。

銅5級が一番下で、金1級が一番上か……フレイさんは魔法を使えるらしいので、そのぶん1つ上の階級なのかな。



リョーガさんがテレーナさんの提案を受け入れたのでこの村での滞在期間が伸びることには問題がなくなり、俺の治癒能力を秘匿する方向で話はまとまった。

次は俺への報酬についてだが……


「はいこれ」

ズシッ

「……多くないですか?」


テレーナさんから治療で消費した魔石の数を聞き、店の奥にあった木箱から1つの袋を出したリョーガさん。

しかし……渡されたそれには、想定を超える数の魔石が入っていることが明らかな重さがある。

俺は疑問の表情をリョーガさんに向けると、彼はやや気まずそうに答えた。


「えーっと、今後の予約分も含めてってことでどうかな?今回の分を抜いても4、5人分はあると思うんだけど」


どうやら、これは将来的な治療の予約とその治療費を含んでいるらしい。

こういう世界だし、危ない目にあったばかりなので保険をかけておきたいのはよくわかる。

それに……


「今後は値上がりするかもしれないからってことですかね?」

「まぁね。僕には恋人も居るし、先のことも考えるとこれぐらいで治療を頼めればありがたいから」


なるほど。

護衛の3人が積極的だったのは、リョーガさんとではなく遠慮する必要がなかったからか。

で、リョーガさんの言う"先のこと"は結婚や出産などを見据えてのことなのかもしれないな。

ただここで、俺は了承しながらも重要な注意事項を伝えておく。


「それはいいんですが、1つ覚えておいてもらうことが」

「ん?何?」

「俺ができるのは傷を治すだけで、出血が酷いと血が足りなくて助からなくなると思うのでお気をつけて」


出血してすぐの血液なら回収して身体に戻せるかもしれないが、その場に居合わせていないと無理だろう。

容器に保管していても時間の経過で劣化してしまうだろうし、流れ出た血が使えなければ食事などで補給してもらうしかない。

そんなわけで出血には気をつけろと言った俺に、リョーガさんは真剣な顔で頷いた。



店での話は終わり、魔石が詰まった袋を抱えた俺は自分の家の畑へ向かうと、正式に設置して動かせなくなった塀をゴーレムで越えて村の外へ出る。

ゴーレムが戦力として十分な力があるのはわかっているし、この森の石を集めて風呂場の建材にするつもりなのだ。

父は遠出しているので、助けは期待できず十分な注意が必要ではあるが……少なくとも魔石の位置は把握でき、それを持つ魔物の位置もわかるので気をつけるのはそれ以外の存在かな。

まずは土のゴーレムを人型で作成する。


ズズズズズ……


とりあえず、一定以上の速さで俺に接近するものを対象として土のゴーレムがそれを防ぐように設定しておき、その上で別のゴーレムとして石の収集をする。

ある程度石が集まるとそれを下部から6本の足が生えた箱にして、その中に入ってのぞき穴から外を見ながら石の回収を続けた。

これなら、万が一土のゴーレムが反応できないものがあっても多少は耐えられるかもしれないからな。



ズン、ズン、ズン……
ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ……


2つの重い足音を鳴らしながら石を収集し、魔力切れで魔石が消失する度に新たな魔石で石のゴーレムを再起動させる。

ゴーレムは大きくなる度に動かすための魔力が増えるので、再起動させる間隔が短くなっていき面倒だ。

足の1本1本を別のゴーレムにすれば、上に乗っている物の重さを分散できるかもしれないが……リアルタイムで指示できるのは1体だけなんだよな。

一応、特定の足に合わせて姿勢を保つように動けという設定をしておけば移動には困らないか?

ただ、それだと緊急時に柔軟な対応が取れないよな。

だったらいっそのこと、負荷を分散させるのではなく魔石の容量と出力を上げるのはどうだろうか?

そう。

俺は魔石自体でゴーレムを作り、大出力大容量の魔石を作れないかと思いついたのだ。

善は急げとばかりに2、3個から試してみたその結果……俺の手には小型の魔石20個ほどをまとめた魔石が出来ていた。

核となった魔石は別扱いのままだったので、魔石のゴーレムからそれを取り除いてみるが……魔石のゴーレムは魔石としての性質を保ったままのようだ。

それを使って石のゴーレムを再起動させると問題なく起動したので石の収集を再開し、そろそろいいかな?という量になったので村へ帰った。




村の塀に到着すると、石のゴーレムの上に上がって村の中を覗き込んでみる。

着地予定の場所に人は居なかったので、このまま浮かせて中に入れてもいいが……ここで俺は少々悩む。

石のゴーレムは家一軒ほどの大きさになったし、流石にこの大きさだと必要以上に怖がられる可能性があるな。

ゴーレムの力自体はもう隠せないが……作成できるゴーレムの大きさには制限があることにするか?

となると、作った石のゴーレムは分割して運ぶことになるな。

だが、それでは往復するぶん余計に魔石を消費することになる。

うーん、前世で読んだ創作物のように別の空間へ仕舞えれば……と考えていると、


フッ

「うわっ!?」

ダンッ!


いきなり足場を失った俺は地面に落下し、何とか無事に着地した。


「???」


何が起きたのかと当たりを見回せば、近くに魔石が詰まっている袋が落ちていた。

え、まさか……と消えた石のゴーレムを探すと、見えはしないが身近な"何処か"にあるのを感じられる。

それを魔石の袋がない場所に出現させようとすると、瞬時に音もなく現れた。

核になっている魔石の魔力に変化はないな。

魔石の袋や俺が取り残されたことから、どうやらゴーレムだけを魔石の消費無しに仕舞っておけるようだ。


「……」

フッ


俺は石のゴーレムを再び"何処か"へ仕舞うと、なるべく遠くに出現させようとする。

次に石のゴーレムが現れたのは、50mほど離れた場所だった。

これぐらいが出現させられる距離の限界なのだろう。

魔石の消費は……やはり無いな。

出し入れにコストは掛からず、仕舞っている間も魔石の消費はないようだ。

これはいい。

ゴーレム以外の荷物は入れられないが、荷物はゴーレムに運ばせればいいので遠出するのにも使えるな。

とりあえず……ゴーレムを仕舞っておける"何処か"は"格納庫ハンガー"と称することにし、俺は塀の中へ戻ってから石のゴーレムを格納すると自宅近くの川へ向かった。
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