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異世界フェルミニアとは
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私、倉田紗菜がフェルミニアに来たのは地球では冬の初め。
ハロウィンが終わって一段落。さぁ、X'masに向けて頑張るぞ!と同僚達と飲みに行った帰りでした。
楽しく飲んでほろ酔い気分で駅で別れて、いつも通りに電車に揺られ、住宅街ど真ん中にあるアパートに帰る道にいつもと違うものなんてなかったはずですし、私にだって変わりはなかった。多分ですが。
だって、楽しく酔っぱらっていたのです。はっきりとは覚えていません。
とにかく、自分的にはいつもと変わらないつもりだったのです。
それなのに、鍵を開けて潜った扉の先にいつもの暗い部屋はなく、知らない町の中。
酔いが頭に回って幻覚を見ているのかと思ったのですが、それにしてはおかしすぎる。
風が吹いているし、土の匂いに混じって美味しそうな匂いもする。目の前を通りすぎるのは仮装パーティーかと思うぐらい平素ではお見掛けしないレトロなロングワンピースやドレス、映画のコスプレかと思うような革のパンツに革のベスト、そして何より獣の頭に手足、尻尾を着けた人が服を着て歩いている。
ハロウィンは終わったのに、こんなに大量の人がコスプレしてるとか、ここは何処のイベント会場ですか?クオリティーが高過ぎます。
そして、私の部屋は何処に行ったの?
ここ、何処!?
夜も深まり割りと終電間近の時間だった筈なのに、辺りは夕焼け色に染まり行き交う人々は帰宅を急いでいるかのように足早に通りすぎて行く。
何が起こったのか。何のドッキリなのか。むしろ私にドッキリ仕掛けるとか誰得ですか?等と、纏まらない思考で呆然と立ち尽くしていると、柔らかな声が直ぐ側で聞こえた。
「ねぇ、貴女、どうしたの?何かに驚いたかと思ったら急に青くなったり、そのわりに動かないし。なんか困ってるならとりあえず話してごらんよ。」
声の方を向けば、そこには小柄なお姉様がいらっしゃいました。茶の髪は後ろで纏めて三角巾みたいなものを被っている。服はレトロな深緑色のワンピースに白いエプロン、ショートのレースアップブーツ。こちらを見上げる茶の瞳には不信感や嫌悪感は感じられません。
「あの……ここは何処ですか?」
柔らかな声音と温かみのある瞳の可愛らしいお姉様だったことに勇気を貰って質問したけれども、自分で言っておいてなんですが、他にもっと良い質問はなかったものか。
お姉様は軽く目を見張った後、一拍置いて何かに納得する様に頷き言った。
「話が長くなりそうだから、うちの店で座りながらにしよう。着いてお出で。」
私が頷くと、「こっちだよ。」と後ろを向いたお姉様の背後には手触りの良さそうなもっふりとした尻尾が有った。
私、もふもふ好きなんです。
あまりにも手触りが良さそうだったんで、尻尾を見つめたままお姉様に着いていきましたよ。
いや、結果としてあの時もふもふ尻尾に釣られたから今の平和な生活があるんですけどね。
違いました。あの時不審者な私に声を掛けて下さったデージアさんがいらしたからですね。そうでなければ凍死や飢え死にもあり得たかもしれません。
優しい方に最初に出逢えた偶然に本当に感謝です。
ハロウィンが終わって一段落。さぁ、X'masに向けて頑張るぞ!と同僚達と飲みに行った帰りでした。
楽しく飲んでほろ酔い気分で駅で別れて、いつも通りに電車に揺られ、住宅街ど真ん中にあるアパートに帰る道にいつもと違うものなんてなかったはずですし、私にだって変わりはなかった。多分ですが。
だって、楽しく酔っぱらっていたのです。はっきりとは覚えていません。
とにかく、自分的にはいつもと変わらないつもりだったのです。
それなのに、鍵を開けて潜った扉の先にいつもの暗い部屋はなく、知らない町の中。
酔いが頭に回って幻覚を見ているのかと思ったのですが、それにしてはおかしすぎる。
風が吹いているし、土の匂いに混じって美味しそうな匂いもする。目の前を通りすぎるのは仮装パーティーかと思うぐらい平素ではお見掛けしないレトロなロングワンピースやドレス、映画のコスプレかと思うような革のパンツに革のベスト、そして何より獣の頭に手足、尻尾を着けた人が服を着て歩いている。
ハロウィンは終わったのに、こんなに大量の人がコスプレしてるとか、ここは何処のイベント会場ですか?クオリティーが高過ぎます。
そして、私の部屋は何処に行ったの?
ここ、何処!?
夜も深まり割りと終電間近の時間だった筈なのに、辺りは夕焼け色に染まり行き交う人々は帰宅を急いでいるかのように足早に通りすぎて行く。
何が起こったのか。何のドッキリなのか。むしろ私にドッキリ仕掛けるとか誰得ですか?等と、纏まらない思考で呆然と立ち尽くしていると、柔らかな声が直ぐ側で聞こえた。
「ねぇ、貴女、どうしたの?何かに驚いたかと思ったら急に青くなったり、そのわりに動かないし。なんか困ってるならとりあえず話してごらんよ。」
声の方を向けば、そこには小柄なお姉様がいらっしゃいました。茶の髪は後ろで纏めて三角巾みたいなものを被っている。服はレトロな深緑色のワンピースに白いエプロン、ショートのレースアップブーツ。こちらを見上げる茶の瞳には不信感や嫌悪感は感じられません。
「あの……ここは何処ですか?」
柔らかな声音と温かみのある瞳の可愛らしいお姉様だったことに勇気を貰って質問したけれども、自分で言っておいてなんですが、他にもっと良い質問はなかったものか。
お姉様は軽く目を見張った後、一拍置いて何かに納得する様に頷き言った。
「話が長くなりそうだから、うちの店で座りながらにしよう。着いてお出で。」
私が頷くと、「こっちだよ。」と後ろを向いたお姉様の背後には手触りの良さそうなもっふりとした尻尾が有った。
私、もふもふ好きなんです。
あまりにも手触りが良さそうだったんで、尻尾を見つめたままお姉様に着いていきましたよ。
いや、結果としてあの時もふもふ尻尾に釣られたから今の平和な生活があるんですけどね。
違いました。あの時不審者な私に声を掛けて下さったデージアさんがいらしたからですね。そうでなければ凍死や飢え死にもあり得たかもしれません。
優しい方に最初に出逢えた偶然に本当に感謝です。
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