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65.【迷える子羊なお客様】12~シュワロの年齢~
しおりを挟む出かけていた店長が、帰ってきたのだ。抱えた紙袋の中には、毒々しい色の食べ物のような何か。あえてそれには触れないでおこう。
一先ず店長によってモモは宥められ、だが納得しきれずむくれてほっぺたを風船のように膨らませてしまった。ソファの上で、むすっと腕組みをしている。かわいい。
荷物を置いて戻って来た店長に、ナナミは事の次第を話すことにした。
「えっっ、ひきこもり!!?」
「ひきこもりというか、閉じこもっているというか・・・・・・」
話し始めたナナミの周りに、自然とキャストたちが寄っていて、耳にしたことに驚きの声を上げている。
「え、じゃあ家にいたのに出てこなかったってこと?」
「はぁ?何それ意味わかんない!」
皆起こって口々にシュワロへの批判を口に出す。
「そんなっ、そんな奴にナナミを渡したくないよっ!!」
モモまで、膨らませた口を開けてそう叫んだ。
「エイデン家、か・・・・・・。そういえばそのシュワロくん、のお父さんは、かなり有名な起業家なんだよね。・・・・・・そうか、息子さんは、閉じこもってしまっているのか」
すると、カシアの入れた紅茶を口に含んで一息入れた店長が、知らない情報を口にした。何それ、初耳である。
「え、起業家なんですか?それで忙しいんだ」
「そうだよ。彼はここ数年で名を広めてる商人でね、下手な貴族よりも稼ぎは良いんじゃないかなぁ。今、王都に行っているんだろう?かなり忙しいみたいだね。また新しい催し物を考え出したって、ここら辺ではちょっとした噂なんだよ」
へ、へぇー・・・。シュワロくんのお父さん、有名な人なんだ。
「でも、あんな小さい子がずっと家に一人なんて、すごく心配です」
あの小さな身体を思いだす。優しい手触りがしそうなふわふわの髪の毛に、くるんとした瞳。目を合わしてはくれなかったからわからなかったが、きっと瞳もきらきらしていて綺麗なのだろう。
あまり決めつけは良くないが、もしかしたらシュワロくんは、人と話すのがあまり好きではないのかもしれない。自分だって、人の目や顔を見て話すなんて、この仕事を始めてようやくできるようになったくらいだ。その前、前の世界では、常に下を向いて生きてきた。自分に自信がなかったからだ。なんとなく、人の顔を見るのがこわかった。
「へっ!?小さくないよ?彼、もう25はいってるんじゃないかな」
「はい!!?」
色々とシュワロくんについて考えていたが、店長の口から信じられない言葉が出て来た。あまりの驚きに、開いた口が塞がらないどころか、空いたままの口から涎がこぼれ落ちそうだ・・・って、汚いね。
「にっにっにじゅうごですか?」
普通に聞くと笑えるような発音になってしまった。が、店長はいたって真面目な顔をして、うんと頷く。
マジですかいな。とても25歳には見えませんでしたが?いってても高校生くらい・・・下手をすると中学1年生くらいかな?とか思ってたんですけど。
ナナミは脳内でパニックに陥りながら、自分が年上である前提で接していたことを主だし恥ずかしさと共に申し訳なさが込み上げてきた。今晩、ベルを鳴らして彼が出て来たら、まずは土下座で謝るのがよいかもしれない。
「ま、どっちにしろ、ちゃんと見つかったんだし、返してあげた方がいいね。ナナくん」
「はいっ」
彼が自分より年上であると衝撃的な事実を知ったが、それで何かが変わることはなにもない。自分はただ、彼との約束を果たすだけだ。
ナナミはそう思い、今日も勇気を出してシュワロの家へ行ってみようと思うのだった。
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