43 / 67
43.二回目の襲撃!嗅がれるナナミの㊙臭!?
しおりを挟むクソ猫かぶり匂いフェチさん――しかも汗の匂いに興奮するらしい――こと、セイレクさんはあの後、『興がそがれた』と言って俺にドぎつい悪態をついた後まさかの何もせず帰ってしまった。元のモサいカツラと眼鏡を付けて、何事もなかったかのように。
部屋に一人取り残された俺は唖然として、しばらくその場から動くことができなかった。
・・・・・・え?俺、何に怒られたん?彼が怒って帰ってしまった理由がわからない。サファイアのような澄み切った瞳を、歪ませてしまった原因が、俺にあったのだろうか?――あったんですね、これが。
先ほどの俺の自問自答の答えはズバリ、『俺が朝シャンをして汗の匂いを消してしまったから』である。いや、だって汗でベトベトして気持ち悪かったんだもん・・・・・・。仕方ないよね?
仕事の失敗に項垂れていたら、店長が『気にしなくていいから。本当に』といつも以上に優しい笑みで慰めてくれたので、なんとか俺のメンタルは保たれた。そうじゃなかったらなんか上客らしいし、自分の失態に申し訳なさ半端なかったと思う。店のみんなにも。
だって、あのお客さんが『desire』の悪い評判をバラまいてしまったら、俺一人のせいで多大なる迷惑をかけてしまうだろ。『あの店のキャストは客に会う前にシャワーを浴びて、汗の匂い一つしないんだぜ?』的な?
ってあれ、キャストとしては当然の対応じゃね?・・・え、俺って悪くない?
と、自問自答して自分を励ますのに必死になっている俺。
くそ・・・・・・。めちゃくちゃ綺麗な人形顔のイケメンにゲス顔されて心底見下されるなんて経験、したくなかったぜ。もうあんな客金輪際来ませんように。
もうっ、あんな人、ムサい男ばっかが密集してるサウナみたいなとこに行けば良いんだっ!ムッチムチの男たちの身体から出るムンムンの汗みたいな蒸気みたいなので興奮すれば良いんだっ!・・・って、サウナって臭いのか?なんか臭くなさそう・・・・・・って俺マジで何考えてんだろう。
あの衝撃的な客のせいで、かなりの時間を消費してしまった罪悪感を胸に、俺は使うことのなかったベッドのシーツを整えていた。
あれだけ俺に失望した彼だ。もう本当にここに来ることはないだろう。そう思っていた頃の俺は、幸せだったのかもしれない。まさかあれだけの羞恥を味わう羽目になるとは、微塵も思わなかったのだから。
それは何気なく店の前で看板の点検をしていたときのことであった・・・。開店前、暇だったのでユキちゃんたちから仕事を貰って看板の拭き掃除と店前の掃き掃除に精を出していた。掃除など、一度手をつけると熱中してしまう俺は、汗が頬を流れ落ちていくのにも構わずに懸命に掃除に勤めていたのである。
「ふぃー・・・・・・こんなもんか――っ、うわっ!」
自分の仕事に満足げに息を吐いて額の汗を袖で拭い、ユキちゃんに確認してから風呂入ろ~などと呑気に思っていた時、突然背後から腕を掴まれ連れ込まれたのだ。俺の働く店、『desire』の中に!!
もう俺はいきなりのことでパニック状態。視界にちらりと入ったのはいつかのすげぇ態度の悪いぼさぼさの茶髪。俺よりも華奢な見た目のくせに、腕の力は意外にも強い。
「ちょ、ちょ、ちょ、待ってくださ――」
「店長、こいつ今日俺が買うからー」
カウンターでいつも通りグラスを拭いていた店長は、もさもさ茶髪に引っ張られてきた俺の姿を見てブッと吹き、素通りしていく俺らに『ちょっ!』などとは言いつつも、特別俺を助けようとはしなかった。ってオーイ店長!!!!助けてよ!!?
店内の掃除をしているキャストのみんなが丸い目で俺たちを見ていた。モモなんかは嬉しいことに助けようとしてくれたみたいだが、呆れた様子のシノに簡単に止められていた。モモ、非力・・・・・・。そこも可愛いのだが。つか強くならなくてもいい。俺が守るから(キリッ)←絶賛引きずられ中の俺が言うとか笑。
ってな感じで早々にベッドの上にバサリッ!ですわ。これがBL作品の受けの子だったら『い゛っ!いきなり何すっ――っ!?』みたいな感じで恐怖を目に宿して言ったりするんだろうけど俺は――
「びっくりした――!いきなり何するんですかっ!・・・っヒッ!!」
うん、大体同じ流れだったわ。恥ずかしい・・・。しかも有無を言わさないという目つきで睨まれ、両腕を掴まれて変な声上げちゃったし。
「しばらく大人しくしとけ」
ひゃ、ひゃーーん!!!俺、もしかして、食べられちゃうのーーー!!!?
20
お気に入りに追加
405
あなたにおすすめの小説


男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです
狼蝶
恋愛
転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?
学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?


私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。

独占欲強い系の同居人
狼蝶
BL
ある美醜逆転の世界。
その世界での底辺男子=リョウは学校の帰り、道に倒れていた美形な男=翔人を家に運び介抱する。
同居生活を始めることになった二人には、お互い恋心を抱きながらも相手を独占したい気持ちがあった。彼らはそんな気持ちに駆られながら、それぞれの生活を送っていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる