異世界ホストNo.1

狼蝶

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43.二回目の襲撃!嗅がれるナナミの㊙臭!?

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 クソ猫かぶり匂いフェチさん――しかも汗の匂いに興奮するらしい――こと、セイレクさんはあの後、『興がそがれた』と言って俺にドぎつい悪態をついた後まさかの何もせず帰ってしまった。元のモサいカツラと眼鏡を付けて、何事もなかったかのように。
 部屋に一人取り残された俺は唖然として、しばらくその場から動くことができなかった。
 ・・・・・・え?俺、何に怒られたん?彼が怒って帰ってしまった理由がわからない。サファイアのような澄み切った瞳を、歪ませてしまった原因が、俺にあったのだろうか?――あったんですね、これが。
 先ほどの俺の自問自答の答えはズバリ、『俺が朝シャンをして汗の匂いを消してしまったから』である。いや、だって汗でベトベトして気持ち悪かったんだもん・・・・・・。仕方ないよね?
 仕事の失敗に項垂れていたら、店長が『気にしなくていいから。本当に』といつも以上に優しい笑みで慰めてくれたので、なんとか俺のメンタルは保たれた。そうじゃなかったらなんか上客らしいし、自分の失態に申し訳なさ半端なかったと思う。店のみんなにも。
 だって、あのお客さんが『desire』の悪い評判をバラまいてしまったら、俺一人のせいで多大なる迷惑をかけてしまうだろ。『あの店のキャストは客に会う前にシャワーを浴びて、汗の匂い一つしないんだぜ?』的な?
 ってあれ、キャストとしては当然の対応じゃね?・・・え、俺って悪くない?
 と、自問自答して自分を励ますのに必死になっている俺。
 くそ・・・・・・。めちゃくちゃ綺麗な人形顔のイケメンにゲス顔されて心底見下されるなんて経験、したくなかったぜ。もうあんな客金輪際来ませんように。
 もうっ、あんな人、ムサい男ばっかが密集してるサウナみたいなとこに行けば良いんだっ!ムッチムチの男たちの身体から出るムンムンの汗みたいな蒸気みたいなので興奮すれば良いんだっ!・・・って、サウナって臭いのか?なんか臭くなさそう・・・・・・って俺マジで何考えてんだろう。
 あの衝撃的な客のせいで、かなりの時間を消費してしまった罪悪感を胸に、俺は使うことのなかったベッドのシーツを整えていた。
 あれだけ俺に失望した彼だ。もう本当にここに来ることはないだろう。そう思っていた頃の俺は、幸せだったのかもしれない。まさかあれだけの羞恥を味わう羽目になるとは、微塵も思わなかったのだから。



 それは何気なく店の前で看板の点検をしていたときのことであった・・・。開店前、暇だったのでユキちゃんたちから仕事を貰って看板の拭き掃除と店前の掃き掃除に精を出していた。掃除など、一度手をつけると熱中してしまう俺は、汗が頬を流れ落ちていくのにも構わずに懸命に掃除に勤めていたのである。
「ふぃー・・・・・・こんなもんか――っ、うわっ!」
 自分の仕事に満足げに息を吐いて額の汗を袖で拭い、ユキちゃんに確認してから風呂入ろ~などと呑気に思っていた時、突然背後から腕を掴まれ連れ込まれたのだ。俺の働く店、『desire』の中に!!
 もう俺はいきなりのことでパニック状態。視界にちらりと入ったのはいつかのすげぇ態度の悪いぼさぼさの茶髪。俺よりも華奢な見た目のくせに、腕の力は意外にも強い。
「ちょ、ちょ、ちょ、待ってくださ――」
「店長、こいつ今日俺が買うからー」
 カウンターでいつも通りグラスを拭いていた店長は、もさもさ茶髪に引っ張られてきた俺の姿を見てブッと吹き、素通りしていく俺らに『ちょっ!』などとは言いつつも、特別俺を助けようとはしなかった。ってオーイ店長!!!!助けてよ!!?
 店内の掃除をしているキャストのみんなが丸い目で俺たちを見ていた。モモなんかは嬉しいことに助けようとしてくれたみたいだが、呆れた様子のシノに簡単に止められていた。モモ、非力・・・・・・。そこも可愛いのだが。つか強くならなくてもいい。俺が守るから(キリッ)←絶賛引きずられ中の俺が言うとか笑。
 ってな感じで早々にベッドの上にバサリッ!ですわ。これがBL作品の受けの子だったら『い゛っ!いきなり何すっ――っ!?』みたいな感じで恐怖を目に宿して言ったりするんだろうけど俺は――
「びっくりした――!いきなり何するんですかっ!・・・っヒッ!!」
 うん、大体同じ流れだったわ。恥ずかしい・・・。しかも有無を言わさないという目つきで睨まれ、両腕を掴まれて変な声上げちゃったし。
「しばらく大人しくしとけ」
 ひゃ、ひゃーーん!!!俺、もしかして、食べられちゃうのーーー!!!?

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