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2.キャスト達の談
しおりを挟む「ナナってほんと非の打ち所がないイケメンだよねぇ」
「それな。顔も良くて性格も良いって・・・無敵じゃね?」
「あ~僕もお金貯めてナナミくんに抱いてもらおっかなー」
「あー、でも同業者も来てるらしいぞ、最近」
「本当!?ナナミすっご!!」
「すごいけど・・・・・・」
「「「本当に非の打ち所がないんだよなぁ」」」
夜の蝶宿『desire』の店内。今日は定休日のためキャストたちは皆羽を伸ばす――こともなく、残念なことにじゃんけんに負けたキャストたちは店長に頼まれた店内の掃除をしつつお喋りに講じていた。ナナミ以外のキャストは皆、彼に見劣りする者ばかりであり、どちらかというと醜いという部類に入る者たちであった。だが、そのような者でも客はつく。風俗店のキャストとして一番大事な要素とは、客を嫌がらないことだった。『desire』は嫌われ者専用の風俗ということで、それなりに需要はあるが、やはり利用する客はそのほとんどが醜い容姿をしている。嫌がらないとは最低限のラインであり、ここのキャストは笑顔で訪れた者たちを癒やすことができるほど出来の良い者たちであった。だからか、この店の評判は良い。それに最近、ナナミというとんでもない美丈夫がキャストの仲間入りを果たしたことで、その評判はうなぎ登りとなった。しかし、だからといって他のキャストたちの客が減ったということはなかった。皆がそれぞれ自分の良さで、顧客をゲットしていたからだ。
赤ん坊の時に近くの路地に捨てられていたのを先代の店長に拾われたという男、シノはこの店のキャストの最年長者であり、上の階の寮長のような存在だ。髪はミルクのような白い色で、気味が悪いから捨てられたのだろうと本人は思っていた。ぐりっとした目という印象を与える二重が本人に言わせるとコンプレックスなのらしいのだが、ナナミからすれば羨ましい限りであった。
次に年が大きいのは、いつもがさつな態度で口調は荒いが思いやりが強く、その仲間想いは皆も評価しているカシア。鮮やかな赤色の髪は目を引き、大きな目と大きな口が印象的だ。そして最年少のモモは、この店の末っ子なこともあり甘えん坊で皆に可愛がられている。髪は可愛らしく桃色で、ぷくりとした唇が特徴的だ。彼らは今日じゃんけんに負けた敗者たちであり、休みなのに虚しく掃除の手伝いをさせられていた。だが静かに黙って仕事を続けられる彼らではなく、すぐに口を開き話を交わし始めたのだった。
「そうそう。で、その同業者、あーあの一本行ったところにある店の奴なんだけど・・・・・・、そいつ、うちの評判が高いからってナナミの悪い噂広めようとうちにスパイに来てな」
「はぁあ!?ナナミくんに悪い噂なんてないじゃん!あれ、てかあいつ?あの、なんか『ヨヨギってキャストのこと、正直どう思ってる?』って聞いてきた怪しそうな男?」
「ああ!いたなそんな人。俺もそう聞かれた」
「俺もだぜ!なぁ、二人はどう答えたんだ?」
「僕はねー、めちゃくちゃ格好いいって思ってるよっ!って答えた!!」
「モモお前、アバウトだな・・・・・・」
「だって、本当に格好いいんだもん!僕が酔っ払いに絡まれて無理矢理部屋に連れて行かれそうになった時にね、ナナミくんが僕をその客から助けてくれたんだ。しかも、その後店長に話して僕を休憩させてくれたんだけど・・・・・・、心が落ち着くお茶をわざわざ作ってくれて、しばらく僕の側にいてくれたの」
ほんわりと顔を赤くしたモモが、その時のことを思い出して袖の余った両手で口元を隠し恥ずかしがる。その、恋する乙女のような様子に釣られてシノとカシアも顔が赤くなった。
「うわっ、何それ神じゃん!」
「何それ羨ましい・・・!!俺も誰かに襲われようかな」
「シノ兄何言ってんの・・・それで、シノ兄は?」
「俺?俺はね・・・・・・身体がヤバいって答えたよ」
「なんじゃそりゃぁ・・・いやわかるけども!」
「たまたま着替えのときに見たんだけどさぁ、いや意外と筋肉あって良い身体なんだよ!!だって普段服着てるときはわかんないけど脱いだらほどよく筋肉ついてるってエロくない!?エロいよね!!?」
「だめだ・・・シノ兄ちゃんが暴走してる・・・・・・」
「落ち着けシノ兄!わかったから!!」
「ふぅー・・・・・・、って答えたんだ」
「相手どんな顔してた・・・・・・?」
「発情してたかな」
「はつじょう・・・・・・」
「ほら、最後はカシア兄ちゃんだよ!なんて答えたの?」
「俺はなー、めちゃくちゃ仲間想いな奴だって答えたな!」
「カシアだってアバウトじゃないか」
「いやいやだって休日なのに皆のために美味いもん作ってくれるしよー、それに誕生日も祝ってくれるんだぜ?俺、誕生日に祝われるのなんか初めてだったぞ」
「本当にナナミっていい子だよね~」
「あっ!今日外に遊びに行ってるみんなにも何って答えたか聞いてみようよ!」
「いや・・・、きっと俺らとあまり変わらないようなことを答えているだろうよ」
「だろうねぇ・・・・・・ナナミに悪い点なんてないからねぇ」
「ん~そっか・・・・・・。あ、そういえば結局そいつどうしたの?ナナミくんの悪い評判なんて聞いてないけど?」
「あいつかぁ・・・・・・、『百聞は一見にしかず!!』って言ってナナミを指名して、見事にハマったみたいだわ」
「「返り討ち・・・!!」」
「そりゃそうだよねぇ・・・・・・」
「だって、」
「「「非の打ち所がないもんねぇ」」」
「シノ、カシア、モモ、君たちは一体何をしているのかな?」
三人はカウンターで真面目にグラスを磨いているナナミの姿を見て惚れ惚れとしていると、背後から店長の冷たい声が振ってきた。『ひっ!』と悲鳴をもらし後ろを見ると、一見優しそうな顔をしているが笑っていない顔で立っている店長がにこりと冷たい笑顔を作った。
「サボってないでちゃんと仕事をしなさいっ!!!」
「「「はいぃ~~!!!」」」
定休日だが賑やかだなと思いながら、ナナミはせっせとグラスを磨くのだった。
――キャストたちの談
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※
・非王道気味
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・悲しい過去🐜のたまにシリアス
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