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しおりを挟むいつも澄ました顔をしてだんまりなリリー。そんなリリーの、唇を噛みしめながら涙で潤んだ目で見つめてくる顔が、なんとも可愛いと思った。
だからあの夏のパーティーの夜も、リリーの泣いている顔が見たいがために、必要以上に虐めてしまった。謝れと謝罪を要求され頭を無理矢理押さえられ若干涙目になっていたリリーの顔を見ると、ズクンと全身の旅から帰ってくる血液が心臓を貫くような痛みが胸を走って行った。
涙に濡れ煌めくホワイトブルーシルバーの瞳。瑞々しい果実を思わせるような可憐な唇は、どうすればよいのかわからず開いたり閉じたりを繰り返していた。
その様子がいじらしくて、どうしようもなく、可愛かった。
だがその後ギムリィたちと揉めそうになったところに再びフラウリーゼが現れ、今回はアランも刃向いその場は収まった。アランに対しこいつも裏切りやがってという黒い思いが立ち上ったが、フラウリーゼにまた自分の醜い姿を見られてしまったことの罪悪感がそれを上回った。
リリーに対し姑息な攻撃を仕掛けるときは心躍るのに対し、何故かフラウリーゼが側にいるときはその気持ちがしゅんと萎むようになってしまうのだ。正気に戻る、ような感覚。一体自分は何をしていたのか。ホワイトローズ家に対しては元から良い感情は抱いていなかった。しかし、かといって手を出そうなどとは、フラウリーゼのことを考えると微塵も思っていなかったはずなのだ。
実はあのパーティーの日、フラウはリリーの秘密を知っていた。キャスティアが探ってきたのだ。到底信じられないものだったが、自分に与しているキャスティアが突然嘘の情報を伝えるということも考えにくく、フラウは実際に耳にするまでは半信半疑だった。
だがもしキャスティアの言うことが本当ならば、ホワイトローズはまるで疫病神を囲っているようだと笑えてきた。リリーが人前で話せないのは彼が普通に話せないのだから。赤ん坊みたいに舌っ足らずでしか喋ることができないのだから!
とんだ笑い種だ、と頭の中で馬鹿にする。だがその反面、あの幼い顔で赤ん坊のように泣いてきたら、自分は一体どう思うのだろうかという疑問も抱いていた。
結局、パーティーでは失敗をした。またフラウリーゼに嫌われた。それにアランにまでも軽蔑の籠った目で見られ、セイに至ってはもう親友を見るような目ではなく、視線は冷たいものだった。
もう戻れない。自分から離れたのに、今の状況になんとなく漠然とした不安が襲った。
夏の休暇中フラウリーゼは屋敷でもフラウに話しかけなくなり、だがフラウが背負うものの重さは変わらず、さらにあのパーティーの夜にリリーを見たときからずくずくと疼く胸を手で押さえながら、フラウはテラスから見える景色を眺めるのが日課になっていた。
珍しくフラウが落ち込んでいると、ブロッサム邸にキャスティアが訪ねてきた。彼は甘い表情で甘い言葉を囁き、フラウを復活させた。そして、とある提案をしてきたのだった。
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