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しおりを挟む「アーラーンー、」
「ひっ!!」
「お前ちょっと生徒会室来いよ」
そう無感情の声を叩きつけられやってきた生徒会室で、アランは第一王子と第二王子、ゼヌ、そしてギムリィとハレムというメンバーに囲まれ、胃が痛くなりもはや腐りそうなほど緊張していた。
「で、さっきのはどういうことだ?」
「我が愛しのリリーがあんな目にあったことについて、詳しく教えてくださいね」
にこりと笑って言うハレムの顔は、上っ面だけ見れば女性と見紛うばかりの美しさだが今はその整った顔も相まって恐怖を生み出していた。長男の顔も笑顔だが額で血管がビキビキと音を鳴らしている。今にもその力の入った拳で顔面を殴られそうで、アランは怖くて堪らなかった。
そこで、アランは昼に起きた一部始終をその場にいる皆に話した。普通に団欒していた昼食、穏やかな空気、美味しい料理。そして、リリーが一人になったのを見計らって突然彼に近づいていったフラウ。彼の片手には紅茶の入ったカップ。そしてそれがリリーの頭の上から零されたことを。
「それは・・・・・・完全な嫌がらせですね」
アランが話し終わるとジルは額を押さえていた手をどけ大きな溜息を吐き、そう言った。
「で、お前は黙って見てたんだ?」
「っ・・・・・・、はい・・・・・・」
ゼヌに冷たく指摘されたアランは息を詰まらせ、ガクリと項垂れると肯定の言葉を口に出した。この部屋の中では自分は裏切り者で役立たずな存在。アランの返事に対し吐かれた溜息に、それはまざまざと感じられた。
「まぁいい、もう終わったことだ。君にはこれからもフラウの動きを細かく観察して、定期的に報告してもらいたい。もちろん学園生活でも、私生活の方でも、だ。昔から近くにいる君ならできるだろう?以前、君には拒否権がないといったが、これはリリーの兄である俺からの“お願い”だ。君ももうわかっているんじゃないか?リリーが、皆から言われているような悪い奴ではないということを」
それはもちろんわかっている。最近では反対にフラウたちのほうが悪者ではないかと思ってしまうほどに。だが長年恋心を抱いていた相手であるフラウリーゼの親類を悪く言うことはできないので、あからさまな態度を取ることはできないのだが。
「わかっています。リリーが悪い奴じゃないってことは。俺も、最近のフラウのリリーに対する言動が激しいとは思っていました。でも、今日みたいなことになるなんて・・・・・・。リリーを守れず、申し訳ございません」
「謝罪を受け入れよう。それに、リリーの秘密を知ってしまったとはいえ協力を強制してしまってすまないな・・・・・・」
「いいえ!次こそはリリーを守ってみせます、お義兄さん!!」
「おい、何だよお義兄さんって」
「貴様、誰の手を握っている」
感極まってしまい、ギムリィの手を取り顔を近づけて誓うと、彼の隣にいるハレムは『お義兄さん』という言葉に聞き捨てならないという風に反応し、クォードは即座にギムリィの手を握るアランの腕を引き剥がした。
「そ・れ・に、何リリーを馴れ馴れしく呼び捨てしてんだよ!!」
「ひゅっ、ひゅみまへんっ!!」
完全に調子に乗っていたアランはゼヌに胸ぐらを掴まれ、ぶんぶんと振り回される。アランは舌を噛まないように気をつけながら夢中で謝罪を口にした。
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