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しおりを挟む「あああリリー!!なんてことだ風邪をひいてしまう!!!ほら早く制服を脱いで、ほら!」
「ハレム、リリーが怖がっています。落ち着ついて」
生徒会室に入れてもらうと、リリーの姿を目に入れた瞬間ハレム兄さんが半狂乱になって早口で捲し立ててきた。リリーが少し怯んでいるとハレム兄さんの婚約者、第二王子のジルナイトが兄を宥め落ち着かせてくれた。
「ハレム、リリーは大丈夫だ。もう大方乾いているからな。紅茶を被ったすぐ後に拭われたからだろう。セイに礼を言っておかねばな」
********
部屋に入って来たリリーが髪や制服を濡らしていたことで、部屋で待っていたハレムや王子たちは騒然としたが、ギムリィの話を聞いた彼らはこんどは怒りの炎を燃やした。その熱気でリリーの濡れた箇所はすぐに乾いたので怒りに感謝だが、皆の形相がすごい。
「いや、ってかアラン役立たずすぎん?」
「そうですね、もう彼はいらないのではないでしょうか、兄上?」
「俺もそう思ったが・・・・・・、やはりあいつの近くにいる奴はこの先必要だ」
「最近リリーに対する敵愾心が強いですね・・・・・・。やはり私たち王族がホワイトローズ家に肩入れしていると思われているのでしょうか」
「そうだな。だが、こればっかりは仕方ないことだ。恋する気持ちは誰にも変えることができないからな」
そう言ってクォードライがギムリィに流し目を送ると、いつもリリーから見てどっしりとしていて頼りがいのある兄は耳まで真っ赤にして咳払いをした。ジルナイトもハレムと目が合うとにこりと笑い、ハレムはプシューと音が鳴るくらい顔を赤くして肩を窄めた。
兄たちの初々しい空気に飲まれリリーが頬を染めると、向かいに腰掛けていたゼヌはリリーの手を取り『俺もリリーに恋してるぞ!』と快活に言う。それでまたリリーはさらに顔を朱に染めてしまうのだが。
「それに、こんなに可愛い義弟もできたしな!リリー、いい加減俺らのことを兄さんと呼んではくれないか?」
クォードライトの矛先が向けられると、リリーは見るからに萎縮し口はきゅっと小さく結ばれてしまった。クォードライトはギムリィにメロメロなのだが、ギムリィの愛して止まないリリーのことも大好きなのだ。リリーが上手く喋れなくても、怒ったり笑ったりせずにちゃんと話を聞いてくれる、とても優しい人なのだ。だが、会う度毎回なのだがこうやって強請られるのは少し困ることでもあった。彼の隣ではジルナイトも同じように期待の眼差しを向けてきている。
リリーは意を決して口を開いた。
「くぉーどにいしゃん、じるにいしゃん・・・・・・?」
リリーは正解を求めるかのように不安げに二人を見上げたが、二人からは表情が抜け落ちたと思ったら直後両手で顔を覆い、クォードは天を仰ぎジルは肘を膝について顔を下へと向けた。
「「かんわいい・・・・・・」」
そして二人のしみじみとした言葉が重なった。
「隣に本物の弟がいるんですけど」
「ゼヌ!お前たち、何があってもリリーを離すんじゃないぞ。彼は絶対に王家に入ってもらうのだから!!」
悶絶する彼らの隣に座っているゼヌがじと~とした目でそう言うと、クォードが真剣な顔をしてゼヌの手を握り、真面目な声で恥ずかしいことを言う。
「言われなくてもわかってるよ。てか何あんたら、いきなり兄さんと呼べとか気持ち悪い。リリーを自分の自己満足のために使うなよな!」
「じぇの・・・、にいしゃにきもちわぅいとか、ゆっちゃ、め!」
そもそもが口調のきついゼヌだが、彼は時にびっくりするほど乱暴な言葉を自分の兄たちに吐くことがある。兄らは全く動じていないらしいが、兄弟間の絆が壊れてしまうのではないかと心配でリリーはゼノに説教じみた口調で言う。と、余韻として残っていたゼヌの強い口調が緩和されたような空気になり、一気にその場が和んだ。
口を開いた本人は自分の唇をぐっと閉じ、『ほんとうに、もう嫌だこの口・・・・・・!!』と泣きそうになっていたが、周りはその様子も含めて顔を綻ばせた。
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