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14.僕の一大決心
しおりを挟む「ルキ様、本当にこれをお召しになるんですか・・・・・・?」
メイドルさんが怖々とそう言って、大きな布を目の前に広げる。僕はそれに一つ頷くと、彼は苦い顔をしてそれを僕に被せた。
メイドルさんが僕に着せてくれたのは、カルーキアだ。あの、醜い子どもを周りの視線から守る綺麗な布。悲しい布である。
セイラ様から胸に突き刺さる言葉を言われ、僕はすごく落ち込んだ。メイドルさんに心配されながらもそれを力なく振り切り、自室へ入るとベッドへダイブしふて寝をしてしまったことが申し訳なかったと今でも思う。
彼女の言葉に傷ついた。でも、彼女の言葉は最もなものだった。僕の無神経な言葉に彼女も傷ついたことだろう。自分の脳天気さとお気楽な態度で嫌な思い出を思い出させて、再び傷つけてしまったことを深く後悔した。
確かに、僕はこの容姿なため今まで蔑ろにされたことがない。両親からも使用人からも愛され、周りの人たちからも温かい言葉をかけてもらってきた。だから、セイラ様やローシュ、この屋敷にいる人たちの気持ちはわからない。頑張って想像できたとしても、きっとそれは実際の数百分の一程度くらいのものだろう。
彼女の気持ちを、わかりたい・・・・・・。すごく上から目線な、烏滸がましい思いなのかもしれない。余計なお世話かもしれない。でも、セイラ様の気持ちを理解したい。その傷にどう関わっていったらいいか、考えたい。癒やせるものなら、癒やしたい。
そんな気持ちになった僕は、一大決心をすることにした。そして僕が次にとった行動は――メイドルさんに頼んで屋敷に余っているカルーキアを貸してもらうことだった。そして・・・・・・
「ご気分お変わりありませんか?」
布の外側でメイドルさんが心配そうに話しかけてくる。今、僕は全身を覆うほどの大きな布を引っ被っている状態です。
でも正直・・・・・・めちゃくちゃ快適!
布の肌触りがものすごく良いし、布を止めている輪っかも軽すぎて全然痛くない。カルーキアを被ったローシュの顔や姿は布に隠れていて全く見えなかったが、不思議なことに被っている側からは世界の全てが鮮明に見える。まるで色眼鏡をかけているくらいのスケスケ感だ。
それに、ひんやりさらさらしていて心地いい~
「ルキ様・・・・・・?」
しばらく黙っているとあまりにも心配だったのか、メイドルさんが近づいてきた。布を脱がせようとカルーキアに触れた瞬間、僕はその手から逃げるように布を翻した。
「っふふ!」
びっくりしているメイドルさんの顔に、思わず得意げになってその場で何度も体を回転させる。ぐるぐる回る度に薄い布がひらひら広がって、大きな花が咲くみたいでなんだか面白い。
「わっ!」
あまりにはしゃいで回っていたら、頭がふらっとして倒れそうになった。地面にぶつかるっ!と思った時、ふわりと体が支えられる。ぎゅっと瞑っていた目を開くと、近くにはメイドルさんの美しいお顔が・・・・・・。ふああ!!
なんと僕は、メイドルさんにお姫様抱っこの直前のような格好で抱かれていたのだ。
「ご無事ですか、ルキ様?」
「はっ、はひっ!」
変な返事をしてしまうと、慌てたように離れていくメイドルさん。なんとなくはしゃいで倒れそうになったのが恥ずかしくなってしまったが、やっぱりお礼はちゃんと目を見て言おう・・・・・・。
そう思い、僕は被っていたカルーキアの顔部分を捲って気まずげなメイドルさんの顔を見上げた。彼は申し訳なさそうな瞳で僕を見てくる。
「あ、ありがとうございました」
羞恥とメイドルさんの美しい顔への照れで頬が熱いのを感じながらお礼を言うと、僕はまた布をがばっと被った。
はずかしい!!やっぱりメイドルさんって格好いいな・・・・・・。ちらりと内側からメイドルさんの顔を見ると、ほっとしたような顔をして『恐れ入ります』と言ってくれた。
よし。
一旦気持ちを落ち着かせた後、僕は胸の前で手を握り心の中で気合いを入れた。
「メイドルさん、僕、このまま街へ行ってきます」
僕はカルーキアを被ったまま、街へ行くことを決心したのだ。
どれだけ想像しても、考えても、やっぱりセイラ様たちの気持ちはわからない。逆に勝手な想像でわかった気になるほうが嫌だと自分で思ったのだ。
だから、この計画を立てた。実際に自分で経験しなければ、真実はわからないのだ。
ぐっと握りしめた手を下げメイドルさんを見上げると、彼は先ほどの微笑みから打って変わって、真っ青な顔をして立っていた。そして自信満々に見上げた僕に向かって、いつもの冷静さからは考えられないほどの大声で叫んだのだ。
「そんなこと、いけませんっ!!!」
布の内側からすっきりと見えるメイドルさんは、すごく怖い顔をしている。最近はいつも優しい眼差しで僕を見守ってくれているメイドルさん。こんな怒っているメイドルさんを見るのは初めてだ。
メイドルさんを怒らせちゃった!?ど、どうしよう・・・・・・
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