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1.転生したら美醜逆転した世界だったので、人生イージーモードじゃん・・・?
しおりを挟む異国情緒溢れるロマンティックな異世界に転生したというのに、鏡で見る自分は相も変わらず薄潮顔・・・・・・。
前世でも美人な姉に対して至極地味な顔の弟だった。が、薄潮だって需要がないわけではないもんねっっ!!薄潮好きな人だっているんだからねっ!?
と唾を飛ばして必死に言うが意外とその通りで、付き合っていた彼女は数人いる。
フッ見たか・・・!!と無意味に格好付けながらも再び同じ容姿で生まれてきた自分を励ましていたら、なにやら周りが騒がしい・・・・・・えっ、僕かっこいい!!?何その熱を帯びた目!!?
どうやら僕が転生したのは、前世の世界とは美醜が逆転している世界だったようだ。
*****
顔の美醜が大きな幅を利かすこの世界、所謂顔至上主義のようなところがあるこの世界では、顔の良い者は決まって苦労せず玉の輿に乗って人生豪遊コースまっしぐららしい。
ということで、人生イージーモードになった僕、ルキ=ルシュワート。どっかの田舎の子爵の令息らしい。
突然ではあるが、先日侯爵家の令嬢様との婚約が決まり僕は今彼女の実家の屋敷に向かう馬車の中にいる。彼女は超金持ち。『ウェ~イ、マジで人生イージーじゃん!!』とか思った。
にっこりと笑った両親に『ほら、セイラ=メイゼン様よ。可愛らしいお方でしょう?』と聞かれながら差し出された小さなロケットペンダントの中の写真を見たら、そこには前世の姉のような雰囲気を持った超儚げ美幼女が映っていた。『はい!すっごく綺麗な方ですね!!』と正直に言うと、なぜか両親は号泣し出した。なんか母さんとかハンカチで目元を押さえながら、『この子、知っているのだわっっ』とか言ってたけど、僕が何を知っているのだろう。ポカンとしながらも貰ったロケットを嬉しそうに首にかける。ちなみにその時はまだこの世界が美醜逆転しているとは知らなかった。(異様に自分がもてはやされているなとは思っていた)
だって5歳だよ?しかも前世の記憶を取り戻したのがつい最近だったというのもある。
その後彼女が僕の婚約者だと知って驚いたが、同時に胸がわくわくで溢れウキウキとした。そして突然婚約者だからという理由で侯爵家に住むことになった僕。
迎えに来たのは明らかに金持ち感溢れる豪華な馬車に、スラッと背が高くてイケメンな従者。あ、僕から見たらイケメンだから、この世界では醜い・・・のかな?こんなに格好いいのに!!
そんな彼が綺麗なお辞儀をし、僕が小さいからかレディーにするように手を取って馬車に上がらせてくれ、家の前まで見送りに来てくれた両親はその様子を見て涙を流しに流していた。一緒に出てきてくれた数人の召使いさんたちも、皆一緒にハンカチで目元を拭っていて、馬車に乗り込んだ僕も窓から見たその光景に思わず涙が出てしまった。
両親の間にはまだ幼い男の子、僕の弟であるロイもいる。皆が泣いていることや、僕が馬車に乗り込んでいるところを首を傾げながら見ており、状況がわかっていない様子だった。ロイは赤ちゃんの時から僕に懐いてくれて、歩けるようになってからも『兄上』といって僕の後を着いてくる可愛い弟だ。顔は僕と同じで薄潮だがな!!
ってか、うちの家族みんな薄潮なんだよ。所謂薄潮一家。別に自分だけが薄潮じゃないから、自分の姿を把握した後も違和感は抱かなかったけど。でも薄潮族だからか社交界でも、ルシュワート領に住む農民の人たちや商人の人たちにも人気があるんだよね。ファンクラブもあったりして・・・・・・。
ということで、僕は今馬車に乗って揺られている。田舎の舗装されていない道からだんだんと滑らかな道になってきたのか、大きな揺れが少なくなっている。従者の男の人に敷いて貰ったクッションがあったのにさっきまでお尻が痛かったが、今は眠れるくらい穏やかな走行だ。そうだ!僕を迎えに来てくれた人はこれから僕付きの従者になってくれる人だそうで、名前はメイドルさんというらしい。どうしても最初の3文字に注意が向いてしまい、名前を呼ぶときも意識してしまって上手く声をかけられなくて困っている。二人だけの空間が沈黙に包まれていて非常に気まずい。しかもメイドルさん、前世ではめったにお目にかかれないほどのイケメンさんなのだ。綺麗な鶯色の髪は長く、一つに纏められており、目元は涼やかでスタイルも抜群だ。腕が筋肉で少しムチッとしているところも格好良い。彼の存在は光り輝いていて、正直眩しい。彼が姿を現したとき、両親や召使いさんたちの顔が一瞬強ばったのがわかった。ロイも最初は怖がって母の後ろに隠れていたし。その様子を感情を宿していないような目で見ていたメイドルさんは、悲しくなかったのだろうか。僕だったら、悲しいな・・・・・・。
「あの、メイドルさん・・・・・・これから、よろしくお願いします」
声をかけると静かに目を向けられ一気に緊張し言葉が詰まりそうになったが、頑張って最後まで言い切る。これから先知らない地で生活する上で、彼の存在は大きなものとなるだろう。身の回りの世話だったり、護衛してもらったり、色々なことを教えてもらったり・・・・・・この人がいなければ僕の生活は立ちゆかなくなってしまいそうだ。だから、僕は気持ちを込めて頭を下げた。一瞬息をのむ気配がしたが、メイドルさんは無表情のまま『こちらこそ、よろしくお願い申し上げます』と言い、深く深く頭を下げた。
*****
「(着いた!!)」
窓から見る栄えた街を見るのは初めてで、人で賑わう店や立派な建造物にとてもわくわくした。屋台みたいな店もあり、『(アレ食べてみたい!アレもおいしそう!!)』と首と目が忙しかった。そしてぱったりと人気のない道に入り進み始めると、なんともうメイゼン家の敷地内に入っていたようだ。広すぎる!!そして家まで遠すぎる!!
しばらく走っていると大きなお屋敷とその前に立派すぎる門が見えてきて、思わず『ほぇ~・・・・・・』と気の抜けた声が出てしまった。視界の端でメイドルさんが肩を震わせていたような気がしたけど・・・気のせいかな?
「では、お入りください」
メイドルさんによって開けられた扉を潜り、屋敷の中へ入る。下には上品な絨毯が敷いてあり、目の前には大きな階段が上へと伸びていて上を見上げて感心していると、どこからか優しそうな壮年のメイドがやってきて、にこにこ顔で挨拶してくれた。テリテルさんというこの人はこれから身の回りの世話をやってくれるそうで、僕もぺこりと頭を下げて挨拶を返した。そうすると少しビックリしたようで、一層笑みを深くした彼女に部屋まで案内される。
てっきり見送りに来てくれた僕の家の人たちのように、多くの人が出迎えてくれるのかなと予想していたのだが、想像よりも・・・いや、全く人に会わないこの状態に少し寂しくなる。僕に充てられた部屋までの間、周りには召使いなのか、多くの人が僕を遠目に見ているのがわかった。バッと振り返っても皆普段通り働いていて、だが向き直ると視線を感じる。それが憧れや、親愛のものではないのはひしひしと伝わっていた。
「(なんだか僕、歓迎されていないのでは・・・・・・?)」
そう不安に思っていたとき、前から歩いてきた一人のメイドに僕の前を歩いていたテリテルさんの足が止まった。彼女に紹介されたのは、メイゼン家のメイド長であるシュパーキッツさんという人だった。艶のある真っ黒な髪を後ろにひっつめ、目尻もつり上がっていてキツそうな印象を受ける。
「どうぞよろしくお願いいたします」
そう言って頭を下げるが声は驚くほど冷たい。僕を見る目も芯が凍るような冷たさで、なんとなく歓迎されていないことはわかる。
アレ?僕の人生ってイージーモードじゃなかったっけ?
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