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本編後の話
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しおりを挟む春、まだ寒い朝にぐつぐつと鍋を煮たたせる。寒い朝には熱い味噌汁、が天野家の常套なのだ。
そろそろ彼らの学校に行く時間なのでは・・・と思い始めた頃、上からバタバタと階段を駆け下りる音が、そして和室からも同じように騒がしい音が聞こえてきた。
「兄さん!起こしてってあれほど言ってたじゃん!!」
「裕兄ちゃん!寝坊した!!」
今日は始業式ではなかったか。
そんな疑問を抱きながらも、機嫌の悪い研と髪の毛が鳥の巣になっている鈴音を交互に見やる。
「うっわ、研も寝坊してるんだ。相変わらずダッサ!」
「うるせぇ。お前こそ、その髪で学校行ったら笑われるぞ」
「うぇっ?あっ、・・・・・・裕兄ちゃ~ん!」
頭に手をやり、裕に助けを求めてくる鈴音を宥め、二人を椅子に座らせる。
猛勉強をした鈴音は見事第一志望の高校に合格し、この春から同じ学校に通うことになった。一人息子を心配する両親は、学校の近くというよりも裕たちの家に近い場所にマンションを契約したらしく、こちらに引っ越してきてからしょっちゅう遊びに来ているのだ。今回も、『始業式の日に起きれる気がしない』と言って週末前に泊まりに来たのだが、案の定研と共に寝坊をしている。
特に研は朝の機嫌が悪く、鈴音との喧嘩で非常に騒がしい。そして少しだけ、やきもちも妬いてしまう。
「オイ、学校始まったらもうこっち来んなよな」
「はぁ?別にお前に会いに来てるわけじゃないもんね。僕は、『研治さん♡』に会いに来てるんだもーん」
そう言って研から眼鏡を奪い取った鈴音に、研が『おい返せ!』と手を伸ばす。
先ほどからイチャついているようにしか見えない二人に段々と苛立ってきた裕は、自分の知らない間にお玉の動きが雑になっていった。
「はい、ご飯。いい加減、静かにして?」
二人の前に朝食を置き、にこっと笑うと、すぐさま黙る二人。弟が二人になったかのような心地に疲労を感じていると、味噌汁を啜った二人が声を揃えて
「「おいしいっ」」
と叫ぶ。
可愛いことには違いないんだけど・・・・・・と複雑な気持ちを抱えつつ、だが確かに幸せも感じる。
研とは恋人同士で、正直二人の時間が減るのは嫌だけど、三人での時間も幸福感を抱かせる。
裕はご飯をかき込む二人の姿を見ながら、まぁいいか、と微笑みを零した。
まだまだ天野家のハラハラドキドキする生活は、終わらなさそうである。
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