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本編後の話
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無事に実家へ着いたと鈴音から連絡を受け、彼のいた長い長い夏は終わった。ついでに、夏休みももうじき終わる。
研といちゃいちゃしようと思っていた当ては見事に破られ、研治の正体がバレないようにハラハラしたり、精欲の限界を突破した研にドキドキさせられたり、また鈴音に対してやきもちを妬いたりと、結構忙しい夏だったと振り返って思う。
『本当に、忙しい夏だったなー』
がらんとした和室を眺め、今朝までいた存在に寂しさを感じた。あの元気の良い高音が家の中をこだましているようで、まだ残っている。
これまで祖母の家に訪ねたことは幾度もあったが、その度に帰る自分たちを見送る祖母も、こんな気持ちだったのかと今わかった気がした。
「鈴音、無事帰れたみたいだね」
「研・・・・・・」
メールを閉じて携帯をテーブルの上に置くと、研が疲弊した様子で上から降りてきた。指には多数の絆創膏が貼られており、かなり苦戦したことがわかる。残った家庭科の課題をやっていたのだろう。
「うん。なんか、さびしくなっちゃったね」
「まぁね。でも、大変だったけど」
イテテ、と血の滲んだ指を眺めながら、研が力のない声で答えた。『終わった?』と聞くと生気のない様子で頷く。
実は研が研治だと鈴音にバレた後から昨日までの間の数日間、自分と鈴音が研の課題を手伝ったのだ。裕にとっては簡単なものだったが、研の裁縫技術は壊滅的で、加えて鈴音は布を二枚重ねて縫うなど失敗を炸裂した。だからほとんど裕が完成させたようなものなのだ。
見た目は研が作ったのかと疑われるほどのものになってしまったが、所々に血がついているため、完全に疑われることはないだろう。残りあと少しのところで、あとは研に完成させたのだ。
だがそれも終わったようで、研の本当の意味での夏休みは今始まったといえよう。
「研、」
裕は今まで積もっていたものが抑えられなくなり、研の両手に自分のものを添えた。明後日の方向を見ていた研が、驚いた様に裕に目を向ける。
久しぶりに見た、真正面からの研の顔。
ビン底眼鏡は修理中のため、一応予備はあるもののせっかくだからと使わせているビン底でない眼鏡。なので研の顔が遮られずに、透明なレンズからはやや疲れた美丈夫の顔が見える。
「もう、我慢できない」
そう言って、研の胴体に抱きついた。顔に当たる服からは研の匂いがする。耳を当てているところからは、激しい鼓動が聞こえてきた。研も、ドキドキしている。
「兄さん・・・・・・俺も」
『もう我慢しない』と言って、上を向かされ顔を近づけられた。
互いに近づけた唇がくっついた瞬間、それまでの飢えが一瞬でなくなった。触れる熱い唇。それは真夏のどんな暑さよりも熱く、裕の心臓は蝉の鳴き声よりも賑やかであった。
久しぶりの、密着した身体。愛おしい。好き。
想いが抑えきれず、口が離れる瞬間にぺろっと研の唇を舐めてしまう。
するとびっくりした研は、しばらく固まった後に徐々に顔を赤くしていき、前屈みになった。
「っ兄さん!!勃った!!」
恨めしそうな顔で見上げてくる研に、裕は小さく微笑む。
「えっちは成人してから!」
鈴音が帰った後の静かな天野家。今度は研の悲鳴がこだました。
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