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「あっ、そこそこ!そこをクリアすると――
「えっここ!?ちょっ、まっ――」
暇だから外に出かけてくると行って出ていった鈴音が、元気のよい声と共に帰ってきた。後ろに目を合わせないようにしている素顔の研を連れて。
やっと勉強に集中できるようになったので、時間を計って過去問を解く。鈴音に構ってやれずに申し訳ないと思ったが、せっかく頭からもやもやがなくなったので、この際にしっかりと勉強しておきたかった。
やろうと思っていたところまで終わり、結果もまずまず。今日の成果に満足し、一休憩を取ることにした。
下に降りてやかんに火を灯し腕を上に上げて伸びをしながら、ふと今晩何にしようかと考える。首を傾け首筋を伸ばしながら冷蔵庫を開けると、ちょうど今日明日で使おうと思っていた肉があったことを思い出した。
今日は研の好きな、生姜焼きでもするか。と口元に笑みを浮かべながら冷蔵庫を閉じた。
「ふぅ・・・・・・それにしても、研遅いな」
昼を食べ終わってしばらくして外へと出ていったが、ちょっと出てくると言っていたわりには帰りが遅い。まだ家庭科の課題が終わっていないと言っていたので、大丈夫なのかと心配だった。
そして、思考が鈴音へと移る。もう早いもので、8月の残すところ一週間と少しとなっている。今週末まではいるとして、来週には帰らなければならない。きっと学校の準備など色々あるだろうから、週の前半には帰らなければならないだろう。
鈴音のことだから、帰るときに愚図りそうだな・・・と裕は昔を思い出した。子どもの頃は頻繁に天野家に泊まりに来ており、夏休みなどは長期間寝泊まりをしていた。そして夏が終わる頃、迎えに来た両親に連れられて帰るとき、よく泣いて『帰りたくない』と愚図ったのだ。それを見ると、胸がぎゅうと痛くなったのを思い出す。
涙を流す鈴音が可哀想で、思わず裕も泣いて『ずっといたらいいじゃん!帰らないで!!』と親に頼んで困らせたこともあった。
子ども二人の大泣きに大人が折れ結局帰るのが一日延びたのが、今では懐かしい思い出だ。
「ただいま~!研治さん来たよー!!」
「おかえり・・・って、へっ!?」
紅茶を飲んでいると、玄関から大きく元気な声が聞こえてきた。玄関へ向かうと同時に聞こえた名前と鈴音の後ろにある素顔の研の姿。思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
「お、おじゃま、します・・・・・・」
態と裕と目を合わせないように俯いている研に、裕はジト目を送ってしまった。
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