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「最近どう?課題、進んでる?」
「う、うん・・・・・・」
重大な過ちを犯したことに気づいた日から休日を挟み、はや週の半ば。未だに暗い気持ちのまま本日出された課題に取り組んでいると、ノックが聞こえ続いて裕が部屋に入ってきた。
久しぶりの会話だ。最近はずっとバタバタしていて、ゆっくり離す時間もなかった。それに、あまり話す気にもなれなかった。
あれから鈴音の方も、いつもどこかぼんやりしており変な状態が続いている。研に対してあからさまな拒絶は見られないが、以前よりも格段に絡まなくなったことは確実に言えることだった。
そんな鈴音の何やら叫んでいる声が、裕との会話中階下から聞こえてきた。
「鈴~、どうしたのー?」
裕が開いた扉から下に向かってそう問いかけると、物音を立てながら慌てた声で何でもないと返ってきた。
「最近、鈴の様子がおかしい気がするんだけど。研、何か知らない?・・・・・・研?」
鈴音の通常ではない声の震えにまた暗い気持ちになりかけていると、目の前に裕の顔が現れ呼ばれていたことに気づく。
「えっ!?あ、何・・・・・・?」
先ほどの鈴音のように、心配そうな顔でこちらを覗いてくる裕に向かって慌てて返事を返す。
「だから、鈴の様子が変だってこと。確か、鈴が高校に来たって日からじゃないかな」
「う、うん・・・・・・そうだね」
自分でも声が変にブレているのを感じながらそう相槌を打つと、裕は眉間に皺を寄せた。
「研、研もなんか変だよ。何か俺に隠してるだろ」
直後ヒュッと息を飲む。
どうして裕にはわかってしまうのだろうか。いつもそうだった。一緒に暮らし始めてすぐの頃から、研が何か家族に隠していることや言いにくいことがあると、いつも優しく問いかけてくれ、その絶対的な安心感の前には研はどうすることもできなくなった。
ポロリと目から涙がこぼれ落ちたら最後、気がついたら口から言葉が止めどなく流れ出しているのだ。
本当に、裕の問いかけは末恐ろしい。
彼に優しく『どうしたの?』と問いかけられたら、もう彼に抗うことはできないのだ。
「研」
気まずくて彼の問いかけてくる目から目を逸らすと、裕の両手に頬を挟まれ、強引に顔を裕の方に向けられた。
「兄さん・・・・・・」
もう、その瞳から逃れることはできなかった。
条件反射なのか、目から熱いものが溢れてきそうで、思わず眉に力を込めた。
ぐっと閉めていた唇が、もう限界だというように緩められる。
「兄さん、あのね・・・・・・」
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