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『うっさい、変態!』
あの時鈴音に言われた言葉が頭の中で木霊する。
あの時はいわれのないことを言われ心外だと思ったし、そもそも言われた瞬間は何故そんなことを言われる筋合いがあるのだと思ったが、時間をおいて考えてみると思い当たる節が見つかった。
『もしかして、あの時アレを見られてたとか・・・・・・?』
たどり着いたのは、一つのあってほしくない真実。
思い出してみると、あの日、鈴音は朝から何か変だった。そして、前夜の違和感。閉めたはずなのに隙間が開いていた扉。
そこから一つの嫌な可能性が導かれる。鈴音があの夜、研の自慰行為を目撃してしてしまったという可能性だ。
研は冷たい汗が背中と額に流れるのを感じた。その時思ったのは、『ヤバい』の一言。
誰かに自分の自慰行為を見られたという恥辱と、それが鈴音だという絶望感。目の前が真っ暗になったように感じられた。
おそらく驚かそうなどと思って軽い気持ちで部屋を覗いたのだろう。それなのに、いきなりあんなものを見せられて、鈴音はさぞかし度肝を抜かれたに違いない。去年の自分を考えると、もうすでに自慰は行っていたが、鈴音がどのくらいその様なことをしているかはわからない。勝手な印象ではあるが、あまりやっていなさそうではあると思う。
それだったらなおさら、他人の自慰する姿など強烈な刺激になってしまったのではないか。
研の悪い憶測は、焦りによって加速していた。
きっと研のことを『汚い』と思ったのだろう。そう考えると、翌朝のあの研を拒絶するような態度は頷ける。研に近寄って欲しくなかったに違いない。
なんてことをしてしまったのだろうか。
止めておけば良かった、と研は深く後悔した。あの時は、溜まった性欲を発散させることしか頭になかった。まるで発情期の動物みたいに頭の中はそれだけで、鈴音が見ていることにも気づかなかったし、誰かが見るかもしれないというリスクを考える余裕もなかったのだ。ただひたすら下半身の熱を発散させることしか考えていなかった。
だから、こんなことになったのだ。研は、あの時の精欲で頭がいっぱいになっていた自分を殴りたくなった。
完全に、鈴音に嫌われただろう。いや、軽蔑されたかもしれない。何にせよ、汚い存在という認識を持たれたに違いない。
研は泥に沈んでいくような暗い気持ちになり、しばらく課題をするためのペンを握りながら項垂れていた。
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