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「最近、鈴の様子がおかしい気がするんだけど。研、何か知らない?・・・・・・研?」
「えっ!?あ、何・・・・・・?」
下にある和室から突然聞こえた鈴音の大声に驚き大丈夫かと尋ねると、焦ったような声で大丈夫だと返ってきた。一先ずは安堵したが、やはりここ最近の鈴音の様子は少し変だ。
ちょうど久しぶりに研の部屋で話していたことからベッドの上に座る研に鈴のことを振ってみると、彼はどこか上の空状態だった。
ぼぅっと裕の後ろ辺りの壁を見つめていた研は、自分の名を呼ばれビクンと体を揺らす。裕を捉えたその瞳には、焦りや何かに対しての後ろめたさが見えた。
「だから、鈴の様子が変だってこと。確か、鈴が高校に来たって日からじゃないかな」
「う、うん・・・・・・そうだね」
「研、研もなんか変だよ。何か俺に隠してるだろ」
やはりどうもおかしい様子に、裕はさらに追い打ちをかけるようにして研を問い詰める。研は隠し事をするとき、大抵の場合裕と目を合わさない。裕がそう問いかけると、研は不安の色をした目をすぐに裕から逸らした。
間違いない。これは、何か隠している。
「研」
「兄さん・・・・・・」
胸中にもやもやとしたものが堆積し、裕は思わず研の顔を両手で挟んで自分に向けさせた。こんな強引な手段をとることは初めてだったし、自分の行動に裕自身も驚きを覚える。
やっと裕の顔を見た研の顔は、眉は八の字になっており、目からはじわりと涙が滲み悲壮感溢れる様相だった。
裕は、その顔に弱い。
昔から研は、何か悲しいことがあっても黙って耐えるような子どもだった。だが研をずっと見ていた裕には、すぐに何かあったことに気づいた。研の纏う雰囲気が、少しだけ変わるのだ。
表面上は何を聞いても答えないが、裕が目線を合わせて『お願い、何があったか教えて?』と言うと、今のような顔をして裕に泣きついてきたのだった。
泣いている研が可哀想で、慰めてあげたくて、抱きしめてあげたい。でもその反対で、自分の腕の中で自分に縋って泣いている状況に、この上ない喜びも抱いていたことは確かである。
何て性格の悪い・・・・・・と自嘲気味になりながらも、今現在も子犬のような目で自分を見る研に胸が甘く疼いた。
「兄さん、あのね・・・・・・」
研の隣に腰を下ろし、自分より一回りほど大きな手を握りながら、話し始めた研の言葉に耳を傾けた。
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