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「ねぇー、裕兄ちゃんって生徒会長なんでしょ?どんなことしてるのか教えてー?」
一人用のベッドに横並びに寝転がり、ぴとりと身体をくっつけて足をバタバタさせている鈴音。その頬は湯上がりだからかほんのりとピンク色に染まっていて、大変可愛らしい。
そんな愛らしい様子を目にし、裕は唇を噛みしめそうになった。
鈴音の可愛い姿が羨ましくもあり、怖くもある。
裕は、確かに自分は世間でいう『格好良い』に当てはまることを自覚していた。『美形』『綺麗』も『イケメン』という言葉も聞きなれている。しかしそれらの言葉の蓄積も、研の気持ちの前では文字通りただの言葉に過ぎないと感じていた。
それなりに自分は研に好かれているという自信はある。自分にだけ見せてくれる姿もあるし、恋人らしく甘い時間も過ごしているからだ。だが裕にはどうしても手に入らないものがあった。
それは、鈴音のような『可愛らしさ』である。
裕はその整った容姿と頭の良さ、人との付き合いの上手さから常に集団の中心にいた。リーダーシップもとれ、最近まで生徒会長をこなしていた。俗に言えば、出来た男だろう。だが、そこに可愛げはない。
完璧主義なところから人に頼ることも下手で、いつも抜け目がなく、人から尊敬の目を向けられはしても庇護欲なんてそそられたことなど一度もなかろう。枕を抱きしめキラキラとした瞳で、学校での裕の様子について投げかけてきた鈴音に、裕は思い出すフリをして小さく溜息を吐いた。
ああ・・・・・・もう研は眠ってしまっただろうか、とかなり話していたのを時計を見て知り、思う。研の部屋はすぐそこだというのに、行けない。
隣には、眠気の欠片も無さそうで饒舌な鈴音。裕の生徒会での仕事内容に対して『すごーい!』『格好良い!!』などと賞賛してくれるのは嬉しいが、度々研に思いを馳せてしまうので、自分の話を真剣に聞いてくれている鈴音に申し訳ない気持ちが沸いてくる。
眉を下げて胸を痛ませていると、次の瞬間鈴音が口にしたことにヒュッと息をのんだ。
「ねぇ、研治さんって裕兄ちゃんと仲良いの?」
自然な疑問だったのだろう。昼間二人で裕の部屋にいたところを目撃されているし、会話も普通に交わしていたのだから。
だが、本当に純粋な、自然な投げかけなのだろうか。
鈴音に目を向けると、頬杖をつき首を傾けて黙っている裕を不思議そうに見上げてくる。その顔は、何もヘンな意味で裕と“研治”の仲を探っているわけではないらしいことを表していた。
「えーとね・・・・・・、ま、ぁまぁ・・・・・・かな。研が高校で初めてできた友達だって家に連れてきて・・・・・・そこから何回か会ってるから」
「ふぅん・・・・・・」
鈴音は両方の手で頬杖をつき、頬を膨らませて気の抜けたような返事を裕に返した。微妙な返事だったからか、裕と研治が何でもないとわかったからか、何となく興味なさそうな返事に、裕は冷や汗を流す。
さて、また研治について何か話題を振ってくるか・・・・・・と待ち構えていると、隣からは“ポスッ”と微かな音が聞こえてきた。横を向くと、今の今までやや高めの声を出して生き生きと喋っていた鈴音が抱いていた枕に突っ伏して寝ていた。
「はぁ-・・・・・・俺も寝よ」
気を張っていたため強ばっていた身体の緊張が一気に解け、裕は部屋の明かりを消すとバタリと倒れ込んだ。
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