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「ぅうん・・・・・・」
「お目覚めになられましたか?」
「あれ・・・・・・ここは・・・・・・」
「医務室ですよ。朝一番に運ばれてきたので、驚きました。・・・・・・顔色も、良くなりましたね。気分はいかがです?」

 目を覚ますと、見えたのは真っ白な天井。俺が起きた気配を感じ、仕切りのカーテンを静かに退けて顔を覗かせたのは、白衣を着た長髪の男だった。たしか、この学園の医師を務めている教師、ルルアン=ロベティアーノさんだったような・・・・・・。
 何故会ったことがあまりないのに名前も覚えているのかというと、ルルアンは同人誌でよくその顔を見たからだった。えっろいんだよなぁ・・・この長髪さん。長い髪を一つに纏めていて、目はつり目で一見強気な印象を抱かせるのに、少し意地悪に接するとすぐに目に涙を溜めてとろとろのめろめろになってしまうのだ。まぁ、つまり隠れエロビッチってところかな?あれ、エロとビッチって意味被ってる?

「・・・?どうかいたしました?」
「いっ、いえ!何も・・・・・・」

 その透き通るような白い顔やガラス玉みたいに綺麗な瞳などをじっと至近距離で見つめていたからか、ルルアンが首を傾げてくる。その美しい容姿に食指が動かないこともないが・・・・・この人は俺の手には余るだろう。
 だって・・・・・・ビッチだし。いや、セオドアとかヴェータもビッチだよな。いやいや、でも、この人は完成されしビッチだから。大人のビッチ。きっと頭の中身までまだ高校生である俺の手には負えない。うん。せめてその水っぽくて色っぽい唇を目に焼き付けるだけに留めておくことにしよう。

「もう大丈夫なんですか?」
「、はい・・・・・・。そろそろ行きます。ちょうど二時限目が始まりますし。お手数をおかけしました」

 上半身を起こすとルルアンは気遣うように声をかけてきたが、時計を見ると授業が始まりそうになっていたので急いでベッドから足を下ろす。眉根を下げて心配をしてくれるが、やはり授業に穴は空けられない。本当は、この人を張り倒して皆が授業を受けている最中に淫猥な情事にふけりたいが、俺の場合逆に食われそうな感じがするので遠慮しておこう・・・・・・!!遺憾だが!!本当に、リードをつけたペットに引きずられるような未来しか浮かばないから。俺は前世から知っているこの同人誌界で人気な一教師との関係を、ただ一時の接触のみに留めることにした。 
 マジで精液搾り取られそうだし。俺の中の先生、サキュバスかよ。

「失礼しました~・・・・・・」

 そう言って、お辞儀をしながらそろりとドアを閉めて踵を返す。

 ちょうどよかった~・・・・・・。今日は俺の担当する教科は一限目はなく、二限目からだったので心底ほっとする。
 俺は素早く服装や荷物を纏めると、我が生徒たちの元へと早歩きで向かった。二限目は自分の受け持つクラスの生徒たちで、『先生っ!もう大丈夫なんですか!?』などと皆に心配されたが、笑顔で彼らに『大丈夫です』と返した。
 シャムルちゃんも安堵したような様子だったが、やはり彼からは危険な匂いが漂ってくる。押さえていないと彼を襲いたくなってしまう衝動に駆られるのだ。
 皆は気づかないということは、多分俺だけが感じているものなのだろう・・・・・・ということは、もしかしてこれは、シャムルちゃんの発するフェロモンなんじゃ・・・・・・。

 そこで俺はようやく気づいた。

 これがモブ族が誘われるという、シャムルちゃんの発するフェロモンだということを。


 こ、こりゃぁー襲うわ。うん。モブ族にはキツいもんねこの匂い。おいしそうだもん。
 だが俺は教師!!いくらおいしそうな生徒が目の前にいても、手を出すことは許されない。まぁセオドアとかヴェータはいただいちゃっている訳なのですが・・・・・・彼らの場合は合意の上だし。
 ということで俺はその日一日、小悪魔シャムルちゃんが振りまく強烈すぎる極甘なフェロモンに耐えたのだった。


『うぅ~~・・・・・・辛いわぁー・・・・・・』
 胸を押さえ、腹をさすりながら夕日に照らされる廊下を一人歩く。授業はすでに終わり、生徒たちはそれぞれクラブへ行ったり併設されている立派な図書館に勉強をしに行ったり、訓練場で魔法の練習をしたりと自由に活動をしており、教室練の人気がない。
 今日の分の報告書や書類纏めなどの事務仕事を終わらし、俺はふらつきながら教師寮へと向かっていた。幸いクラブなどの担当者になっていないため、自分の仕事を終えれば帰ることができるのが救いだ。
 セオドアとヴェータは昨日出すものを出し切ったからか顔がスッキリとしており、頭が冴えるようで今日はあまりイヤらしい方面で絡んでは来なかったところも良かったと思う。だって、もし今日も絡んでいたら、フェロモンの影響で二人に無理をさせてしまいそうだからだ。

 それにしても、シャムルのフェロモンはキツい。建物のどこにいても、風に乗って鼻をくすぐるのだ。その刺激がダイレクトに下半身に届き、瞬間的に勃起を促してくる。そのせいで今日は、5回ほどトイレに籠り抜く羽目になった。とんだ変態教師である。もう自他共に認めるレベルだ。(まだ誰にもバレていないけど)
 今も、下手をすると匂いだけで達してしまいそうで、必死に我慢をする。これは、俺の中の闇の魔力(モブ族の部分)がシャムルの発するフェロモンに反応してしまっているということなのだ。
 もうヤバい!!今にも下半身のズボンにはテントが立ちそうだし、その先端が液体で染みを作りそうなのだ!!歩く変態になってしまう。
 そして今、シャムルちゃんが近くにいるのか、フェロモンの濃度が一気に上がったためその危険性が増した。

 そしてやや前屈みになって一階の、寮に続く廊下を歩いていたときのことだった。
 近くでガタンッと物音がしたような気がして周りを見回したが、特に何も変わったものはない。再び歩き出そうと思ったところで、今度ははっきりと物が壁にぶつかるような、そんな鈍い音を耳が拾った。
 場所は体育の授業の際の着替える部屋――更衣室なる所から。猫なんかが迷い込んだのかと思い、だったら助けてやろうと更衣室へと歩み寄っていくと、入り口まで来たところで中から『やっ、やめろっ!!』という泣きそうな男の子の声が聞こえてきた。その直後に『ゲヘへへへェ~~やめるわけないだろぉ~?そんなに甘ったるい上手そうな匂いを垂れ流しといて。襲ってくれって言っているようなモンだろ』と下卑た男の声がその場に響く。

 咄嗟に中へ飛び込むと、ぶわりと一層濃くなったフェロモンの香りと共に、ロッカーに身体を押しつけられ必死に男の腕から逃げだそうともがいているシャムルちゃんの姿が目に入った。


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