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性分と勝者と犠牲と
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「すまないな。急に呼び出したりして」
時は流れ、放課後。
俺はある人物を呼び出し、今こうして屋上に赴いていた。
そして、呼び出した人物が到着したのを確認し、そう言葉を投げかける。
その人物とは……、
「ううん。別に大丈夫だよ今日はこれといった予定はないし」
白葉綾樺だった。
「まあ、こっちも時間を取らせて申し訳ないと思ってるから、単刀直入に言おう」
俺は前置きを入れて、告げた。
「白葉さん、ずっとあなたのことが好きでした。こんな僕で良ければ付き合ってください」
一人称を「俺」から「僕」に変えたことにむずがゆしさを覚えるも、少し頭を下げ、お願いをする。が、勿論のこと、
「ごめんなさい。私、他に好きな人がいるの……、だからあなたの告白は受けられないの」
まあ、予想していた答えだ。逆にここでOKをもらえると困る。俺も本気で受けてもらおうだなんて考えちゃいない。大事なのはここからだ。
俺はまず、昨日の憶測を確認する為、質問を投げかける。
「そうか、それは残念だ。……もしかして、白葉さんが好きな人って、一間君?」
「そうだよ。よくわかったね」
ここで、昨日立てた予想が立証される。それでも俺はさらに質問を吹っ掛けた。
「そりゃあ、ね。女子人気が高いから、彼。そう言えば、白葉さんって一さんと仲いいって聞いたけど、それってもしかして、彼に近づくため?」
「そうだね。彼女、男子人気が高いから、彼女を利用すればグループにも入れるし、彼にも近づけるからね。一石二鳥ってわけだよ」
おうおう。はっきり言うな~。これが三次元女子の裏の本性か? だからといって二次元にも興味はないが……。黒いな~。
「そうか、すまなかったな。俺みたいなのが告白なんかして……」
「いいよ、別に。他人を好きになるのは自由だしね。あと、」
瞬間、白葉は悪魔の笑みをたたえながら、俺に言葉を放つ。
「今のこと、誰かに話したら……」
「ああ、わかっているよ」
「そう、じゃあ、また関わることはないと思うけど、じゃあね」
そう言い残して、白葉は去っていった。一人残された俺はというと、
「ふう」
一息つきながら、ポケットに入れておいたスマホの録音機能を止める。
「ヘッ、だ~れがお前と付き合うかってんだ。死んでもごめんだね」
まさかあんなにも簡単にベラベラと喋ってくれるとは、こちらとしては好都合だ。まごうことなき、絵に描いたような腹黒女だ。クソ親父に教えてもらってて良かった。
分かっていたとは思うが、全て俺の演技に過ぎない。部活に入るなら演劇部だな。
と、そんな軽口を心中で呟きながら、俺の胸ポケットに入れてあった小型カメラも電源を切る。丁度、その時だった。
「今の、どういうこと?」
思わぬ第三者の声に、俺は思わず瞠目しながら、入口のほうへ目を向ける。するとそこには、
「今のは何だったの? 説明して、真条君」
学年最高の美少女で優等生、一恋だった。
「どういうこと、だって? そんなもの決まっているだろう。俺が白葉さんに告白して振られた。ただそれだけのことだろう」
「じゃあ、その後の言葉はどういうこと?」
「んだよ。そこも聞いてたのか、めんでーな」
俺はボリボリと後頭部を搔きむしる。
冷静に考えてみれば、俺が言葉を放った後に出てきたんだから、知ってて当然か。
「んまあ、俺は目的のためなら手段を選ばない性分でな」
「それが今の出来事とどう関係があるの?」
「つまりは、目的のためなら火の中だろうが水の中だろうが死ぬ気で挑むし、結果、誰が不幸になろうとも俺には関係ない。最後に俺が勝者であること。それが何より大切だ。人の感情やらは二の次だ。そして、今回の目的のために犠牲になるのが白葉ということだ」
「そんな事は……」
「させないってか。残念。お前に俺は止められない。だが、安心しろ。俺の目的が達成された時、俺はもうここにはいない。厄介者は消えたほうがいいだろ?」
「あなたの目的は、一体……」
「それは今言えない。だが、覚悟しておけ」
俺は一の隣を通る際に、顔に冷徹な笑みを張り付けながら、
「その犠牲は、何もあいつだけじゃない。お前もその対象だってことをなあ」
そうして、俺は屋上を後にした。
めんどい奴に聞かれたのは予想外だったが、やることは変わらない。戦争は始まったばかりだ。
私、一恋は屋上で真条君と話をした後、教員室に赴き、担任である川寄先生に相談に来ていた。
「なるほど、そんなことが……」
川寄先生はしばし悩む素振りを見せた後、私にこう言った。
「あいつ、真条には文句は言わないでやってくれ。それどころか、協力してやって欲しい」
思考が一瞬止まった。
訳が分からない。この先生は何を言っているのだろう。
「先生! 彼は自分の目的の為に一人の生徒を犠牲にして達成しようとしているんですよ。それに協力だなんて……」
「一、お前、何か勘違いしてないか?」
川寄先生は一層厳しい顔つきになる。
「あいつは自分のためじゃない。この学校の為に動いているんだ。それは俺が頼んだことだ。まあ、方法に少しアレがあるが、文句なら俺に言え。だからといってあいつをとめるわけじゃないがな」
私には分からない。先生が何を考えているのかを。そして、真条君が何を目指しているのかも。
そんな私に対して、先生は最後に一言言った。
「あわよくば、お前の悩み事も解決してくれるかもしれないぞ。あいつに相談するのもいいかもしれない。なんせあいつは……」
一拍を置いて、
「天才だからな」
と、そんな意味深なことを。
時は流れ、放課後。
俺はある人物を呼び出し、今こうして屋上に赴いていた。
そして、呼び出した人物が到着したのを確認し、そう言葉を投げかける。
その人物とは……、
「ううん。別に大丈夫だよ今日はこれといった予定はないし」
白葉綾樺だった。
「まあ、こっちも時間を取らせて申し訳ないと思ってるから、単刀直入に言おう」
俺は前置きを入れて、告げた。
「白葉さん、ずっとあなたのことが好きでした。こんな僕で良ければ付き合ってください」
一人称を「俺」から「僕」に変えたことにむずがゆしさを覚えるも、少し頭を下げ、お願いをする。が、勿論のこと、
「ごめんなさい。私、他に好きな人がいるの……、だからあなたの告白は受けられないの」
まあ、予想していた答えだ。逆にここでOKをもらえると困る。俺も本気で受けてもらおうだなんて考えちゃいない。大事なのはここからだ。
俺はまず、昨日の憶測を確認する為、質問を投げかける。
「そうか、それは残念だ。……もしかして、白葉さんが好きな人って、一間君?」
「そうだよ。よくわかったね」
ここで、昨日立てた予想が立証される。それでも俺はさらに質問を吹っ掛けた。
「そりゃあ、ね。女子人気が高いから、彼。そう言えば、白葉さんって一さんと仲いいって聞いたけど、それってもしかして、彼に近づくため?」
「そうだね。彼女、男子人気が高いから、彼女を利用すればグループにも入れるし、彼にも近づけるからね。一石二鳥ってわけだよ」
おうおう。はっきり言うな~。これが三次元女子の裏の本性か? だからといって二次元にも興味はないが……。黒いな~。
「そうか、すまなかったな。俺みたいなのが告白なんかして……」
「いいよ、別に。他人を好きになるのは自由だしね。あと、」
瞬間、白葉は悪魔の笑みをたたえながら、俺に言葉を放つ。
「今のこと、誰かに話したら……」
「ああ、わかっているよ」
「そう、じゃあ、また関わることはないと思うけど、じゃあね」
そう言い残して、白葉は去っていった。一人残された俺はというと、
「ふう」
一息つきながら、ポケットに入れておいたスマホの録音機能を止める。
「ヘッ、だ~れがお前と付き合うかってんだ。死んでもごめんだね」
まさかあんなにも簡単にベラベラと喋ってくれるとは、こちらとしては好都合だ。まごうことなき、絵に描いたような腹黒女だ。クソ親父に教えてもらってて良かった。
分かっていたとは思うが、全て俺の演技に過ぎない。部活に入るなら演劇部だな。
と、そんな軽口を心中で呟きながら、俺の胸ポケットに入れてあった小型カメラも電源を切る。丁度、その時だった。
「今の、どういうこと?」
思わぬ第三者の声に、俺は思わず瞠目しながら、入口のほうへ目を向ける。するとそこには、
「今のは何だったの? 説明して、真条君」
学年最高の美少女で優等生、一恋だった。
「どういうこと、だって? そんなもの決まっているだろう。俺が白葉さんに告白して振られた。ただそれだけのことだろう」
「じゃあ、その後の言葉はどういうこと?」
「んだよ。そこも聞いてたのか、めんでーな」
俺はボリボリと後頭部を搔きむしる。
冷静に考えてみれば、俺が言葉を放った後に出てきたんだから、知ってて当然か。
「んまあ、俺は目的のためなら手段を選ばない性分でな」
「それが今の出来事とどう関係があるの?」
「つまりは、目的のためなら火の中だろうが水の中だろうが死ぬ気で挑むし、結果、誰が不幸になろうとも俺には関係ない。最後に俺が勝者であること。それが何より大切だ。人の感情やらは二の次だ。そして、今回の目的のために犠牲になるのが白葉ということだ」
「そんな事は……」
「させないってか。残念。お前に俺は止められない。だが、安心しろ。俺の目的が達成された時、俺はもうここにはいない。厄介者は消えたほうがいいだろ?」
「あなたの目的は、一体……」
「それは今言えない。だが、覚悟しておけ」
俺は一の隣を通る際に、顔に冷徹な笑みを張り付けながら、
「その犠牲は、何もあいつだけじゃない。お前もその対象だってことをなあ」
そうして、俺は屋上を後にした。
めんどい奴に聞かれたのは予想外だったが、やることは変わらない。戦争は始まったばかりだ。
私、一恋は屋上で真条君と話をした後、教員室に赴き、担任である川寄先生に相談に来ていた。
「なるほど、そんなことが……」
川寄先生はしばし悩む素振りを見せた後、私にこう言った。
「あいつ、真条には文句は言わないでやってくれ。それどころか、協力してやって欲しい」
思考が一瞬止まった。
訳が分からない。この先生は何を言っているのだろう。
「先生! 彼は自分の目的の為に一人の生徒を犠牲にして達成しようとしているんですよ。それに協力だなんて……」
「一、お前、何か勘違いしてないか?」
川寄先生は一層厳しい顔つきになる。
「あいつは自分のためじゃない。この学校の為に動いているんだ。それは俺が頼んだことだ。まあ、方法に少しアレがあるが、文句なら俺に言え。だからといってあいつをとめるわけじゃないがな」
私には分からない。先生が何を考えているのかを。そして、真条君が何を目指しているのかも。
そんな私に対して、先生は最後に一言言った。
「あわよくば、お前の悩み事も解決してくれるかもしれないぞ。あいつに相談するのもいいかもしれない。なんせあいつは……」
一拍を置いて、
「天才だからな」
と、そんな意味深なことを。
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