能力者主義の世界で俺は無能なチート能力者

高桐AyuMe

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本編

連戦上等

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    地面が揺れるとはこのことか。俺が大木に躊躇なく放った足刀の一撃は周りの木々までも振動が伝わるまでに達し、ついには足刀を受けた大木が根元から折れるまでに至った。
   ここまで聞けば明らかに大掛かりなことが起こり、まさに戦闘の最中かと思われても仕方ない限りだが、これはまだ、俺をストーカーしていた奴へのけん制に過ぎない。
   そのストーカー本人はこちらから仕掛けられるとは思ってもいなかったのか。突如として放たれた足刀による轟音と衝撃に驚き尻餅をついてるように見えた。だが、残念だったな。別に俺は自分から手を出さないというわけでもないし、尻餅をついているからといって追撃を加えないわけではない。
    俺は冷静に倒れた大木を思いっ切り蹴り飛ばした。自ら突っ込むことによって図らずも相手の攻撃のレンジに入ってしまうことを防ぐためだ。
    蹴り飛ばされた大木は狙い通り葉が生い茂るほうを向けて奴に迫る。そいつはすぐに起き上がって、瞬間綺麗な姿勢で拳を突き出した。
    刹那、先程の轟音と寸分たがわぬ音が森全体を震撼した。俺も一瞬、その勢いに冷や汗が流れる。俺の切り飛ばされた大木は奴の繰り出した拳よって真ん中から折れてしまっているらしい。
   ここで俺がらしいと言ったのは勿論理由があり、まあ単純に俺がそいつに攻撃を仕掛ける動作の中で蹴り飛ばした大木の様子などを確認することはできなかっただけだ。
「……っ!」
   迫りくる俺に慌てて対応するがもう遅い。
   最初に奴の意識は俺が蹴り飛ばした大木に注がれた。そして、焦ってその対応に追われた。だがそれこそ囮。俺の目的は最初から自分の一撃をぶちこむことだ。
    背後にわざわざ回る必要はない。それくらいにはもう隙だらけだ。
   すぐさま腕をクロスにして防御態勢に入る。顔面を防いで、ダメージを最小限に抑える対応。だが、そんな対処療法になればもちろん対処できない部位もある。
    俺は随分と隙にさらされた腹部に右の一撃を突き刺した。
 ほぼ渾身の威力ではいったそれに吹っ飛ばされ、奴の体は先の木に叩き付けれて止まった。瞬間に腹部に食らった高威力の一撃に一瞬息が止まり、咳き込む。
「カハッ」
 地面にうずくまり、息を整える。が、俺はそんな隙をみすみす見過ごすほど優しくはない。
 踏み込んで加速。そのまま蹴飛ばす勢いで迫る。しかし、やつは一瞬俺を見ると、瞬間。
「……!?」
 背後に気配を感じ取った俺は、すぐさま後ろ振り向きながら、元いた場所から距離をとる。
 気配というよりかは、また違った感覚。例えるならそう、戦闘中に背後をとられた時特有の背筋凍るようなそんな感覚だ。
 つまりは俺はあの一瞬だけでも背後をとられていたということになる。
 勿論、俺は気なんか抜いていなかったし、そもそも俺から仕掛けたこの戦闘において、仕掛けた側が気を抜くのは言語道断だ。
 一見矛盾したかのような出来事。しかし、実際に目の前に広がっているのが事実だ。そう、確かに俺の元いた場所のちょうど背後にあたる位置にそいつは立ってる。
 瞬間移動、もしくはその類の能力か。つまるところ、攻撃は避けようとすれば避けられるということ。むやみに突っ込むのは愚策と思ったほうがいいか。
 だが、奴がどのくらいの速度なら避けられないのか。俺はそれが分かればそれでいい。
 俺が今一度踏み込んだと同時、奴は口を開く。
「ここであなたは、僕が殺す……」
 殺す? なぜ? しかし、今の一言でほぼ確信した。こいつらは俺という異分子を摘みに来た、組織の刺客だ。
 奴は手を前にかざして、瞬間、奴は姿を消す。だが、俺の動体視力からは逃げられない。
 地を蹴り、目の前にある木に突っ込むとそのままへし折る。
 刹那、迫る拳を掴み上げた。
「遅ぇよ。何もかも」
 そのまま引っ張ってこちらに引きずり込むと、膝蹴りをいれたのち、右フックを顔面に叩き込んで地面に伏した。
「まだ能力に慣れてない奴で助かったな……」
 恐らく、こいつの能力の正体は影。
 影の中を移動することによって瞬間移動などの芸当を可能にした。だが、欠点としてそれらすべての行動は影がある場所でしかできないこと。つまりは、太陽を背にした俺の背後は取れないということ。
 別に目の前に突然現れてっていうのも面白いとは思うが、俺には通用しない。何故なら、奴が攻撃する前に俺が攻撃を入れればいいだけの話だからだ。
 とにもかくにも、脅威はひとまず去ったということ。まずはそれに安堵すべきか。それとも、
「ここで戦闘するには迂闊だったと思うべきか」
 血が流れる肩を抑えて、俺は敵を見据える。
「こいつがもしお前の囮だったら、作戦は成功だな」
「いや、僕がここに来たのはたまたま、まあ結果的にいい方向に流れてよかったよ」
 そういう敵―もはや少年とも呼べる身長の、しかし見たことある顔と声に少しばかり冷や汗をかきながら。それでもそいつは手にしているナイフの血を振り払う。
「久しいな、ベル」
「死人に名前を覚えられるのは少し複雑ですね」
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