42 / 51
本編
Sクラス争奪戦の準備
しおりを挟む
暴走者事件を解決した俺と舞原だったが、政府が暴走者のことなど公表するはずもなく、ビル火事を収めた功績としての特別手当を貰った。
その後は何事もなく2週間ほど過ごしてたのだが、放課後には寮の中はAクラスの生徒しか見られず、何やら校舎内から騒ぐような声が聞こえる日々が続いた。
そして今日、学園長が珍しく在籍するすべての生徒を競技館に招集をかけた。
まあ、目的は何となくわかっている。恐らくは新設するというAクラスの上のクラス、Sクラスについての何かだということは容易く想像できる。
もしかすると、あいつが言っていた10人の中の舞原、西園寺、俺を除いた7人がわかるかもしれない。唯一の興味といえばそれぐらいだ。
なんにせよ、この学校が大きく変わろうとしていることは間違いないらしいな。
競技館。言うなれば戦闘などの対能力に関する試験等々に特化した体育館。中はかなりの広さといえど、やはり全校生徒が集まるとかなり狭く感じる。
ようやく全員が集まり、俺たちを見下ろすように壇上に上がった学園長は話し始める。
「全校生徒諸君、緊急に集まってもらってすまない。だがしかし、これは今後のこの学校全体に関わることであり、私の口から直接伝えるべきだと思った故、今日このように集まってもらった」
そこで一度一拍を置いて。
「私はこの地に就任してから日々思うことが出てきた。学校の制度として実力でクラスを分けて競うわせることで新たな能力向上と競争社会における基盤を作ることができている。それは実に素晴らしいことだ。事実、この学校の生徒から数十人にも及ぶ優秀な警察の人材が排出されている。しかし、一つだけ言うとすれば、途轍もなく秀でた実力の持ち主が現れても、結局はAクラスどまりだ、ということだ。他のAクラスよりも優れた実力をもっていたとしても、最終的には彼らと同じ評価で終わってしまう。だが、本当にそれでよいのか。更なる実力を持つ者たちにはそれ相応の競争の場を設けるべきではないのか。そんなことを思うようになった。そして今日この日、その考えを達成させることとなる」
そこまで話し、一度周りの反応を見る。だが、誰一人として戸惑いの声は発しない。ただただ、学園長の次の言葉を待っている。
「前置きが随分と長くなってしまった。私が今回、この学校にもたらす大きな変化とは、Aクラスを超える更なる高みのクラス、Sクラスの設置をここに宣言する。なお、Sクラスに所属できる人数は最大10人。よって、Bクラス以下のクラスは2週間ほど前から緊急的な特別試験をクラスごとで行い、上位2人を選出してもらった。この後も残るAクラスからも10人を選出し、合計20人まで絞った後、そこから10人を選出する。残る生徒の皆よ、存分にその力を発揮するといい。Sクラスで卒業できる恩恵はAクラスよりも高い。その報酬は私から直々に進呈するとしよう。更なる実力の向上を目指して。以上だ」
言いたいことだけ言って、学園長は壇上から降りて行った。
なるほど、どういう試験かは知らないが。また、特別試験が始まると、そういうことか……。
クラスに戻ると、辺りは騒がしい。まあ、無理もないだろうな。今までにない大きな変化を目の当たりにしている。
Sクラスへの昇格は困難を極めることは想像にたやすい。そしてその報酬は得体の知れず。
一見、試験への意欲は低いものと思える。だが、その得体の知れない報酬は確かに価値のあるもの。警察という大きな組織に関与する国直轄の学校のトップ。そんな人物が用意する報酬がしょぼいはずがない。それに今回についてはこれといったリスクは存在していない。
試験に落ちれば退学なんてペナルティがあるわけないし、降格ということもないだろう。
つまりはローリスクハイリターンの試験。
それなりの実力をもつAクラスの生徒たちが意欲を示さないはずがない。
だが、俺がその例に当てはまるかと聞かれれば、微妙なところだ。
この間、学園長のもとを訪れた際に言っていたことが本当なのであれば、まだ考える余地があったのかもしれないが、試験をやってまで手に入れたいようなものでもない。
だったら学校をやめて単独行動をしたほうが安上がりだ。
だからこそ今も迷っている。Sクラスに昇格するのか否か。まだ決めきるには情報が足りない、か。
なんにせよ、今回の試験は限りある椅子を奪い合う椅子取りゲームだから、個人戦になる可能性は非常に高いな。そうすると、もしかすれば奥の手を出す状況に陥ることがあるかもしれない。
組織Xが俺を監視しているこの場でできればそれは出したくない。
はて、どうしたもんか。
そして、Bクラス以下から選抜された生徒たちというのも気になる。学園長が言う10人のうちの7人が含まれていることは無きにしも非ず……。
俺たちと同等の実力を持つ者がどんなものか知りたいというのも正直な感想だ。
まあ、取りあえずは。
(出かたをうかがうか……)
判断しようにも判断材料が足りない。
まだ試験までは時間はあるし、結論を急ぐようなことじゃない。
暫くは傍観して、ギリギリまで答えは考えることにするのが得策。
いつだって冷静に。慌てたっていい考えは浮かばない。
その後は何事もなく2週間ほど過ごしてたのだが、放課後には寮の中はAクラスの生徒しか見られず、何やら校舎内から騒ぐような声が聞こえる日々が続いた。
そして今日、学園長が珍しく在籍するすべての生徒を競技館に招集をかけた。
まあ、目的は何となくわかっている。恐らくは新設するというAクラスの上のクラス、Sクラスについての何かだということは容易く想像できる。
もしかすると、あいつが言っていた10人の中の舞原、西園寺、俺を除いた7人がわかるかもしれない。唯一の興味といえばそれぐらいだ。
なんにせよ、この学校が大きく変わろうとしていることは間違いないらしいな。
競技館。言うなれば戦闘などの対能力に関する試験等々に特化した体育館。中はかなりの広さといえど、やはり全校生徒が集まるとかなり狭く感じる。
ようやく全員が集まり、俺たちを見下ろすように壇上に上がった学園長は話し始める。
「全校生徒諸君、緊急に集まってもらってすまない。だがしかし、これは今後のこの学校全体に関わることであり、私の口から直接伝えるべきだと思った故、今日このように集まってもらった」
そこで一度一拍を置いて。
「私はこの地に就任してから日々思うことが出てきた。学校の制度として実力でクラスを分けて競うわせることで新たな能力向上と競争社会における基盤を作ることができている。それは実に素晴らしいことだ。事実、この学校の生徒から数十人にも及ぶ優秀な警察の人材が排出されている。しかし、一つだけ言うとすれば、途轍もなく秀でた実力の持ち主が現れても、結局はAクラスどまりだ、ということだ。他のAクラスよりも優れた実力をもっていたとしても、最終的には彼らと同じ評価で終わってしまう。だが、本当にそれでよいのか。更なる実力を持つ者たちにはそれ相応の競争の場を設けるべきではないのか。そんなことを思うようになった。そして今日この日、その考えを達成させることとなる」
そこまで話し、一度周りの反応を見る。だが、誰一人として戸惑いの声は発しない。ただただ、学園長の次の言葉を待っている。
「前置きが随分と長くなってしまった。私が今回、この学校にもたらす大きな変化とは、Aクラスを超える更なる高みのクラス、Sクラスの設置をここに宣言する。なお、Sクラスに所属できる人数は最大10人。よって、Bクラス以下のクラスは2週間ほど前から緊急的な特別試験をクラスごとで行い、上位2人を選出してもらった。この後も残るAクラスからも10人を選出し、合計20人まで絞った後、そこから10人を選出する。残る生徒の皆よ、存分にその力を発揮するといい。Sクラスで卒業できる恩恵はAクラスよりも高い。その報酬は私から直々に進呈するとしよう。更なる実力の向上を目指して。以上だ」
言いたいことだけ言って、学園長は壇上から降りて行った。
なるほど、どういう試験かは知らないが。また、特別試験が始まると、そういうことか……。
クラスに戻ると、辺りは騒がしい。まあ、無理もないだろうな。今までにない大きな変化を目の当たりにしている。
Sクラスへの昇格は困難を極めることは想像にたやすい。そしてその報酬は得体の知れず。
一見、試験への意欲は低いものと思える。だが、その得体の知れない報酬は確かに価値のあるもの。警察という大きな組織に関与する国直轄の学校のトップ。そんな人物が用意する報酬がしょぼいはずがない。それに今回についてはこれといったリスクは存在していない。
試験に落ちれば退学なんてペナルティがあるわけないし、降格ということもないだろう。
つまりはローリスクハイリターンの試験。
それなりの実力をもつAクラスの生徒たちが意欲を示さないはずがない。
だが、俺がその例に当てはまるかと聞かれれば、微妙なところだ。
この間、学園長のもとを訪れた際に言っていたことが本当なのであれば、まだ考える余地があったのかもしれないが、試験をやってまで手に入れたいようなものでもない。
だったら学校をやめて単独行動をしたほうが安上がりだ。
だからこそ今も迷っている。Sクラスに昇格するのか否か。まだ決めきるには情報が足りない、か。
なんにせよ、今回の試験は限りある椅子を奪い合う椅子取りゲームだから、個人戦になる可能性は非常に高いな。そうすると、もしかすれば奥の手を出す状況に陥ることがあるかもしれない。
組織Xが俺を監視しているこの場でできればそれは出したくない。
はて、どうしたもんか。
そして、Bクラス以下から選抜された生徒たちというのも気になる。学園長が言う10人のうちの7人が含まれていることは無きにしも非ず……。
俺たちと同等の実力を持つ者がどんなものか知りたいというのも正直な感想だ。
まあ、取りあえずは。
(出かたをうかがうか……)
判断しようにも判断材料が足りない。
まだ試験までは時間はあるし、結論を急ぐようなことじゃない。
暫くは傍観して、ギリギリまで答えは考えることにするのが得策。
いつだって冷静に。慌てたっていい考えは浮かばない。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
マインドファイターズ
2キセイセ
ファンタジー
"心物(しんぶつ)"
選ばれた人だけが持っているそれは、心の写し身であり、何かしらの特殊な力がある不思議なものである。
その心物に選ばれた、少年。
アルス・ターネスト。
ある朝。アルスが目覚めた時、自分の記憶を無くしていた。なおかつ外には死しか待ち受けていないという絶望的な状況。
その状況を、近くにいた、心物に選ばれた男共に何とか振り切ったアルスは自分と同じ、心物に選ばれたものだけが集う溜まり場で、様々な事件に巻き込まれ、様々な困難に立ち向かってゆく………。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる