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本編

試験開始~さあ、戦争を始めよう~

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 あれから、数時間が経ち、外は既に暗闇に包まれていた。そんな中でも、何故か俺の部屋であーでもないこうでもないと作戦を練っている少女が二人。
 今回の試験のグループメンバー、舞原千歳とミサ・ミステリナだ。
「なあ、そろそろ帰ってくんねえかなあ……。明後日以降の作戦なら明日の夜にでも考えればいいだろ。頼むから、あとをやりたいなら女子の部屋でやってくれ」
「え~」
「めんどくさい……」
「それはこっちのセリフだ。ささ、帰った帰った」
 半ば強引に部屋を追い出そうとした、その時だった。
「失礼する」
 何の突拍子もなくドアが開かれるとともに聞こえたその言葉。
「誰かと思えば西園寺か。何の用だ? 見ての通りこっちは取り込み中だ」
「それに関して言えば申し訳ない。ただ、この情報だけはお前たちの耳にも入れておいたほうがいいと思ってな」
「俺たち、ということは私たちもってことかしら。どうやら、盗み聞き、ということではなさそうね」
「ああ。早速本題に入るんだが、先程、廊下を歩いていた時に教員たちが言っていた言葉だ」
 一拍置いて、
「どうやら、この試験には全く関係ない部外者が関与しているらしい。しかも、一人ではない。一つの組織レベルで、だ」
「……随分とアバウトね。それだけ?」
「ああ、俺が聞いたのはそれだけだ。これが一人とかなら問題なかったんだが、組織レベルとなると、そうはいかなくてな」
「んで、その情報を俺達に」
「警戒しておいて損はないだろうと俺が判断した」
「え? 独断?」
 ミサが信じられないという感じでそう零す。
「確証があるわけじゃない。だが、気を付けろと、警戒しておくだけだ」
「いいのか? こんな敵に塩を送るような真似して」
「俺はこの試験を楽しみにしているんだ。誰にも邪魔はさせん。そういうことだ。試験で会おう」
 それだけ言い残して、西園寺は去っていった。
「どうするの?」
 ミサが俺に質問する。
「まあ、西園寺がああ言うんだから、警戒はしておいた方がいいだろう。ただ、それに関しては俺がやっておく。二人は試験に集中してくれ」
「分かったわ。あと、作戦とか貴方が動ける前提で話を進めちゃったけど、大丈夫そう?」
「ああ、それについては問題ない」
 俺はハッキリと、明確な意思を持ってここで宣言する。

「俺はこの試験で出し惜しみするつもりはない。何事にも本気で挑むつもりだ」

 その一言にミサはありえないと言いたげな表情をし、舞原は大きく目を見開いた。
「…………お、驚いたわね……。まさか、貴方がそんな……」
「…………あ、明日は槍でも降る……?」
「驚きすぎだ。お前らにとっては好都合だろ」
「そ、そうね。それじゃ、ま、また明日……」
「う、うん。また明日……」
 驚いた表情を崩さず、二人は部屋へと戻っていった。
 ちょっとオーバーな反応すぎじゃないか? 少し心が痛いぞ……。

 日付が変わり、俺たちは隣にある闘技場へと移動していた。
 闘技場はドーム型になっていて、二つ程の戦う場所をとれるぐらいらしい。つまり、二試合同時に行えるということだ。
 そして、その闘技場の真ん中へと、学校の生徒全員が集合する。
 すると、一人の教師が声を上げた。
「では、改めてこの試験の説明をする」
 生徒全員がその教師に一斉に視線を向けた。その眼差しは厳しく写っている。
「この試験は事前に組んでもらった三人一チームの総当たり戦で、D~Fクラスまでの上位五チームと、A、Bクラスの下位五チームがCクラスへと移動を目的とした試験だ。総当たり戦の組み合わせは昨日発表した通りだ。総当たり戦の勝利方法は二つ。一つは相手チームの降伏。もう一つはチーム全員が戦闘不能状態と判断された時だ。その判断は、この腕時計が判断する。事前に配っておいた腕時計のことだ。強い衝撃が加わると、」
 教師の付けている腕時計の赤いランプが点灯する。
「このように赤いランプが点灯する。そしてもう一度衝撃が加わると、」
 更に教師の腕時計の赤いランプが点灯し、点滅する。
「この二つのランプが点灯すると戦闘不能状態とみなす。場合によっては一撃で二つのランプが点灯することもありうるだろう。そして、ケガについてだが、次の試合に参加できないようなケガだった場合、その日はそのケガ人は試合に参加できないリタイア状態となる。だが、その状態は翌日には解除され、参加できるようになる。もし、途中でリタイアが出た場合、そのチームはその日の試合は二人で参加して貰う。さて、この試験で重要なのはもう一つ。ボーナスポイントについてだ。このボーナスポイントのチャンスは一チームにつき、三回とする。ボーナスポイントのチャンスを使う場合は相手チームに追加メンバーとして一人臨時で試合に参加する。追加メンバーに一切規定はない。負けた場合は六ポイント奪われ、勝てば五ポイント得る。最後に、武器の使用についてだが、ナイフをや剣などは認めるが、拳銃などの持ち込みは認めない。また、ナイフや剣に関しても殺意を持っての使用、明らかな殺傷を目的とした行為には厳正に対処する。以上。これで試験に関しての説明を終わる」
 そして、また違う教師が一歩前に出ると、一斉に生徒の注目を集めた。
 やっと、始まるのだ。
「それでは」
 目的は優勝、それ以外はない。
「これより」
 そして、出し惜しみはしない。
「臨時特別試験を」
 さあ、始めよう。
「開始する」
 全霊を掛けた戦争を…………。
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