16 / 51
本編
チェックに重ねるはチェックメイト
しおりを挟む
「全く、……いつからそんなけんか腰になったのよ」
広場への移動中、舞原千歳がそう問いかけてきた。
「いつ、と言われても、分らんな。ただ、なんかいけ好かないだけだ」
「はあ……、このことに関してはミサに同情するわ」
「好きにしろ」
ただ、正確にいつから、と問われれば一週間前だろうか。
実は一週間前にとある知り合いに会いに行っていた。そこで話した会話で心変わりしたのだ。正しく言えば、そうせざるを得ない状況となったと言った方が的を射ている。
いつか、いつか、その脅威が、恐れていることが起きる前に言う機会があったとするならば、その時には……。
いや、今はいい。今は目の前のことに集中しよう。
その後、他の生徒がいなくなった後、この前千歳と死闘を繰り広げた広場へと出向いていた。目の前には余裕そうな顔をしたミサ・ミステリナが悠然と立っていた。
「いつでもOKよ」
「いわれなくとも、そのつもりだが……」
対峙してまだ数十秒。だが、俺達にはそれで十分だ。対戦の準備ができるには。
「では、遠慮なく……」
瞬間、俺はマグナムで発砲。けたたましい音と共に鉛玉が放物線を描くことなく、直線的にミサへと突き進んでいく。が、
「雑な攻撃ね」
直後、その言葉が聞き終わる前に、展開された防御魔法によって弾丸は弾かれた。
「ただの牽制か。それとも、単に見くびっていたのか、違う目的があるのか。見当つかないわね。そこら辺どうなの?」
「さあ、どうだろうなあ?」
俺は不敵に笑いながら、そう返した。
さて、俺はこの防御魔法を破れるなんて到底思っちゃいない。むしろ、俺の攻撃は全く通らないと断定したほうがよさそうだ。
引いてのべた引きタイプの倒し方は三つ。
防御魔法が追い付かない程の連撃、又は素早い一撃。
防御魔法を上回る程の攻撃。
そして、防御魔法を使っていない時の一撃。
俺は無能力者だ。最初に言った二つは得策とは言えない。だったら残る選択肢は一つ。後者一択。
素早く断定した俺は、拳を固めて彼女に向かって突進する。
「愚直ね。一体何が狙いなのか……」
そう言いながら、防御魔法を複数展開。あらゆる攻撃に対応してくる。だが、俺は構わず左手のナイフで刺突させる。
「……ッ⁉」
一撃。
たったの一撃が防御魔法によって弾かれる。だが、その威力は強烈だった。一瞬だけ防御魔法が不安定な状態になり、耐久力が劣る。
「ほんっと、化け物ね」
冷静さを失っていたのは一瞬。直ぐに展開を始める。
「ハハハ、化け物で結構」
俺は笑いながら、首を鳴らしながらナイフを構えなおす。
「ダル……」
俺にしか聞こえないような声で俺は呟く。
先程の一撃で何とか不安定にするのが限界。言っていないが、かなり手はしびれている。流石にあれを連続とはいけないし、あいつも同じようなヘマはしないだろう。本格的に勝率が低くなってきた。
どうする。使うか使わないか。一瞬でも能力を発動すれば突破じゃ可能だ。だが、それだとミサに能力がばれる可能性がある。それだけは避けたい。今ここで能力を明かすのは不正解だ。使わなければばれる心配はない。その分、突破口は狭まる。
様々な葛藤が頭をよぎる。悩んでいる暇などない。すぐにでも攻撃を始めないと……。
「まだ考えているの?」
「……ッ⁉」
思考を巡らせるのに夢中になっていたせいか、ミサがすぐそこまで接近していたことに気づいていなかった。
すぐさま受け身と回避行動を急ぐ。が、気づくのが遅れたため、回避行動が遅れ、ミサの拳を不安定な状態で受けることになる。
「ちい……!」
受け身も虚しく、体に走る痛みに顔をしかめながら、舌打ちを打つ。
迷っている時間はない。一撃、一閃。そのすべてに、賭ける!
俺は再びマグナムを持ち直して、連続的に発砲を繰り返しながらナイフを手に疾駆する。目の前にいる、無傷の能力者共謳われる、その少女に向けて。
「愚直なのよ。これでチェックよ」
再び防御魔法を展開するミサ。きっとそれは反射の防御魔法。受けたダメージを反射するタイプだ。しかし、俺には通用しない。
「だったら、俺はチェックメイトだ」
俺は躊躇わず、その展開された防御魔法にナイフを刺突した。
「ッ⁉」
躊躇いもないその行動にミサは大きく目を見開いた。だが、それだけでは終わらない。
俺の能力が込められた俺の右手を伝い、ナイフに宿された能力が、効力を発揮する。
「ッ! なんで!!」
少しずつ、魔法陣として展開された防御魔法という壁に、ナイフが食い込んでいく。
「そ、そんな……!」
まさに驚愕の声を漏らすが、状況は変わらず、危機が迫る。
「言ったろ、チェックメイトだって」
そう言った直後、ガラスが割れるような音が響き、防御魔法が破壊される。
「う、そ……」
「ほんとだ。さて、悪いが手加減はできねえからな? 与えられる痛み、とくと味わえ」
瞬間、鈍い音が響き渡った。
俺は殴った拳に息を吹きかけながら、倒れ込んだミサを見下ろして言った。
「すまんな、イレギュラーなもんで……」
と……。
広場への移動中、舞原千歳がそう問いかけてきた。
「いつ、と言われても、分らんな。ただ、なんかいけ好かないだけだ」
「はあ……、このことに関してはミサに同情するわ」
「好きにしろ」
ただ、正確にいつから、と問われれば一週間前だろうか。
実は一週間前にとある知り合いに会いに行っていた。そこで話した会話で心変わりしたのだ。正しく言えば、そうせざるを得ない状況となったと言った方が的を射ている。
いつか、いつか、その脅威が、恐れていることが起きる前に言う機会があったとするならば、その時には……。
いや、今はいい。今は目の前のことに集中しよう。
その後、他の生徒がいなくなった後、この前千歳と死闘を繰り広げた広場へと出向いていた。目の前には余裕そうな顔をしたミサ・ミステリナが悠然と立っていた。
「いつでもOKよ」
「いわれなくとも、そのつもりだが……」
対峙してまだ数十秒。だが、俺達にはそれで十分だ。対戦の準備ができるには。
「では、遠慮なく……」
瞬間、俺はマグナムで発砲。けたたましい音と共に鉛玉が放物線を描くことなく、直線的にミサへと突き進んでいく。が、
「雑な攻撃ね」
直後、その言葉が聞き終わる前に、展開された防御魔法によって弾丸は弾かれた。
「ただの牽制か。それとも、単に見くびっていたのか、違う目的があるのか。見当つかないわね。そこら辺どうなの?」
「さあ、どうだろうなあ?」
俺は不敵に笑いながら、そう返した。
さて、俺はこの防御魔法を破れるなんて到底思っちゃいない。むしろ、俺の攻撃は全く通らないと断定したほうがよさそうだ。
引いてのべた引きタイプの倒し方は三つ。
防御魔法が追い付かない程の連撃、又は素早い一撃。
防御魔法を上回る程の攻撃。
そして、防御魔法を使っていない時の一撃。
俺は無能力者だ。最初に言った二つは得策とは言えない。だったら残る選択肢は一つ。後者一択。
素早く断定した俺は、拳を固めて彼女に向かって突進する。
「愚直ね。一体何が狙いなのか……」
そう言いながら、防御魔法を複数展開。あらゆる攻撃に対応してくる。だが、俺は構わず左手のナイフで刺突させる。
「……ッ⁉」
一撃。
たったの一撃が防御魔法によって弾かれる。だが、その威力は強烈だった。一瞬だけ防御魔法が不安定な状態になり、耐久力が劣る。
「ほんっと、化け物ね」
冷静さを失っていたのは一瞬。直ぐに展開を始める。
「ハハハ、化け物で結構」
俺は笑いながら、首を鳴らしながらナイフを構えなおす。
「ダル……」
俺にしか聞こえないような声で俺は呟く。
先程の一撃で何とか不安定にするのが限界。言っていないが、かなり手はしびれている。流石にあれを連続とはいけないし、あいつも同じようなヘマはしないだろう。本格的に勝率が低くなってきた。
どうする。使うか使わないか。一瞬でも能力を発動すれば突破じゃ可能だ。だが、それだとミサに能力がばれる可能性がある。それだけは避けたい。今ここで能力を明かすのは不正解だ。使わなければばれる心配はない。その分、突破口は狭まる。
様々な葛藤が頭をよぎる。悩んでいる暇などない。すぐにでも攻撃を始めないと……。
「まだ考えているの?」
「……ッ⁉」
思考を巡らせるのに夢中になっていたせいか、ミサがすぐそこまで接近していたことに気づいていなかった。
すぐさま受け身と回避行動を急ぐ。が、気づくのが遅れたため、回避行動が遅れ、ミサの拳を不安定な状態で受けることになる。
「ちい……!」
受け身も虚しく、体に走る痛みに顔をしかめながら、舌打ちを打つ。
迷っている時間はない。一撃、一閃。そのすべてに、賭ける!
俺は再びマグナムを持ち直して、連続的に発砲を繰り返しながらナイフを手に疾駆する。目の前にいる、無傷の能力者共謳われる、その少女に向けて。
「愚直なのよ。これでチェックよ」
再び防御魔法を展開するミサ。きっとそれは反射の防御魔法。受けたダメージを反射するタイプだ。しかし、俺には通用しない。
「だったら、俺はチェックメイトだ」
俺は躊躇わず、その展開された防御魔法にナイフを刺突した。
「ッ⁉」
躊躇いもないその行動にミサは大きく目を見開いた。だが、それだけでは終わらない。
俺の能力が込められた俺の右手を伝い、ナイフに宿された能力が、効力を発揮する。
「ッ! なんで!!」
少しずつ、魔法陣として展開された防御魔法という壁に、ナイフが食い込んでいく。
「そ、そんな……!」
まさに驚愕の声を漏らすが、状況は変わらず、危機が迫る。
「言ったろ、チェックメイトだって」
そう言った直後、ガラスが割れるような音が響き、防御魔法が破壊される。
「う、そ……」
「ほんとだ。さて、悪いが手加減はできねえからな? 与えられる痛み、とくと味わえ」
瞬間、鈍い音が響き渡った。
俺は殴った拳に息を吹きかけながら、倒れ込んだミサを見下ろして言った。
「すまんな、イレギュラーなもんで……」
と……。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる