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もう一度、「守りたい」と誓うために…
隣の空白
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「つっかれた~」
「大丈夫?」
四時限目から時間が経ち、下校時刻。伸びをする俺にみどりがそう声を掛ける。
「ああ、なんとかな。さて、帰るか」
「そのことなんだけど、私、少し用事があるから先に校門で待ってて」
「おう、早く行って来い」
「うん」
さて、俺は大人しく待つとしましょうか。
この時はまだ知らなかった。これが全ての始まりだということに…。
校門で二十分程待っていると、みどりが戻ってきた。
「お、お待たせ」
少し顔を赤らめながら、微笑しているみどりを不思議に思ったため、俺は尋ねる。
「何かあったのか?」
「うん。取り敢えず、立ち話もなんだし、歩きながら話すよ」
「ああ、別にいいが」
そうして、みどりと共に帰路を辿る。
「聞いてほしいの」
「ん?どうした?」
少し歩いたところで、みどりが改まった口調で話しかけてきた。
「さっき、屋上でね、」
一拍をおいて、告げる。
「告白されたの…」
「えっ」
みどりはモテる。だが、告白してきた男子は今までいなかった。
「それで、返事はどうしたんだ?」
俺は表情に感情を出さないように注意しながら聞いた。
「実は、私も気になっていた男子で…、付き合うことにした」
俺は微笑を浮かべながら、言った。
「良かったじゃないか。人生初の彼氏だろ」
「そのことなんだけど、私が他の男子と付き合うことになったら、あんまり関わることができなくなっちゃうから」
「別にいいって。みどりの人生だろ。俺がとやかく言うことじゃない。頑張れよ」
「うん!ありがとう。じゃあ、私こっちだから」
「ああ、またな」
「うん」
はは…、またな、か。もう関われるかも分からないのにな。
部屋に入り、ベットに体を投じる。
言ってなかったが、俺はみどりのことが好きだ。
前々から気になっていた。だが、いつまでも隣にいると安心しきっていた。
「あ~あ、情けね~…」
そう呟かずにはいられなかった。
そこから、みどりと会うことは一切なくなった。今までみどりとやってきたこと。そのすべてが一人になった。
自分の通学路でさえ、知らない道のように錯覚してしまう。
俺から見える世界はまるで、色のない、モノクロの世界同然だった。
そして、二か月がたった秋。この日に事件は起こる。
両親は海外出張な為、家には俺一人。そこに一本の電話が入る。ディスプレイに映し出された名前は、
白水みどり
「珍しいな」
あの日以来、みどりから電話をかけてくることは無かった。俺は首を傾げながらも、通話ボタンを押した。
「もしもし、」
電話から聞こえてきたのは、みどりの声ではなく、大人の声だった。そして告げられたのは、
「えっ?死んだ?」
俺は家を飛び出した。
午後六時。彼氏と別れたみどりは家への帰宅途中、事故に巻き込まれた。頭を強く打ち、意識不明の重体。病院に運ばれ、治療を施したが、間に合わず亡くなったという。両親は出張中で、今急いでこちらに向かってきてるらしい。俺に電話がかかってきたのは、みどりの着信履歴の上の方にあったかららしい。
俺は病院に来たものの、みどりと再開はしたくなかった。だから俺は、病院から逃げ出した。現実からも、人生からも、自分からも。
部屋に戻ったが、今まだに信じられない自分がいた。まだ、何処かで生きてるんじゃないか。どこからかひょっこり現れるんじゃないか。そんな錯覚を考えてしまう。だけど、いなくなったのは真実で、現実で、隣に空いた空白はもう埋めることはできなくて。
「あ。そうだ、宿題やらなくちゃ」
俺は机に向かい、ノートに視線を向ける。少しでも、気を紛らわそうとした。みどりを忘れようとした。だけど、
「忘れられるわけ…、ないだろ!」
あふれる涙。その涙が頬を伝い、ノートを濡らす。
「何で、なんでなんだよ!なんでみどりなんだ!神は何を見ているんだ!なんで俺じゃないんだ。なんで、なんで…、」
どれだけ叫んでも、みどりが戻ってくることはなくて。もう、隣には誰もいなくて…。
そして俺は、一人で…。
「クッソ。ダメだな~。やっぱ俺は」
涙を拭う。
「気分転換でもするか」
俺はそのまま外出した。
気分転換に?いや、違う。そんなものは建前で、本当の本当は…。
駅の改札を通り、ホームへ。
別に理由はない。この世界から離れて、やり直そうとした。
死、という形を持って。
後方車両の止まる場所へと移動すると、電車到着のアナウンスが流れ、電車のライトが俺を照らす。
そしてそのまま、俺は体を預けた。重力に従い、線路に入っていく。
さあ、決別だ。すべてにおいての決別。そして覚悟を今一度した時、
異変は起こる。
俺の腕を誰かが引っ張り、俺のすぐ目の前を電車が通り過ぎていく。そのまま、ホームに倒れこむと、隣にいる俺を救ったであろう少女は息を整えながら言った。
「好きです。付き合って下さい!」
と、その一言を…。
「大丈夫?」
四時限目から時間が経ち、下校時刻。伸びをする俺にみどりがそう声を掛ける。
「ああ、なんとかな。さて、帰るか」
「そのことなんだけど、私、少し用事があるから先に校門で待ってて」
「おう、早く行って来い」
「うん」
さて、俺は大人しく待つとしましょうか。
この時はまだ知らなかった。これが全ての始まりだということに…。
校門で二十分程待っていると、みどりが戻ってきた。
「お、お待たせ」
少し顔を赤らめながら、微笑しているみどりを不思議に思ったため、俺は尋ねる。
「何かあったのか?」
「うん。取り敢えず、立ち話もなんだし、歩きながら話すよ」
「ああ、別にいいが」
そうして、みどりと共に帰路を辿る。
「聞いてほしいの」
「ん?どうした?」
少し歩いたところで、みどりが改まった口調で話しかけてきた。
「さっき、屋上でね、」
一拍をおいて、告げる。
「告白されたの…」
「えっ」
みどりはモテる。だが、告白してきた男子は今までいなかった。
「それで、返事はどうしたんだ?」
俺は表情に感情を出さないように注意しながら聞いた。
「実は、私も気になっていた男子で…、付き合うことにした」
俺は微笑を浮かべながら、言った。
「良かったじゃないか。人生初の彼氏だろ」
「そのことなんだけど、私が他の男子と付き合うことになったら、あんまり関わることができなくなっちゃうから」
「別にいいって。みどりの人生だろ。俺がとやかく言うことじゃない。頑張れよ」
「うん!ありがとう。じゃあ、私こっちだから」
「ああ、またな」
「うん」
はは…、またな、か。もう関われるかも分からないのにな。
部屋に入り、ベットに体を投じる。
言ってなかったが、俺はみどりのことが好きだ。
前々から気になっていた。だが、いつまでも隣にいると安心しきっていた。
「あ~あ、情けね~…」
そう呟かずにはいられなかった。
そこから、みどりと会うことは一切なくなった。今までみどりとやってきたこと。そのすべてが一人になった。
自分の通学路でさえ、知らない道のように錯覚してしまう。
俺から見える世界はまるで、色のない、モノクロの世界同然だった。
そして、二か月がたった秋。この日に事件は起こる。
両親は海外出張な為、家には俺一人。そこに一本の電話が入る。ディスプレイに映し出された名前は、
白水みどり
「珍しいな」
あの日以来、みどりから電話をかけてくることは無かった。俺は首を傾げながらも、通話ボタンを押した。
「もしもし、」
電話から聞こえてきたのは、みどりの声ではなく、大人の声だった。そして告げられたのは、
「えっ?死んだ?」
俺は家を飛び出した。
午後六時。彼氏と別れたみどりは家への帰宅途中、事故に巻き込まれた。頭を強く打ち、意識不明の重体。病院に運ばれ、治療を施したが、間に合わず亡くなったという。両親は出張中で、今急いでこちらに向かってきてるらしい。俺に電話がかかってきたのは、みどりの着信履歴の上の方にあったかららしい。
俺は病院に来たものの、みどりと再開はしたくなかった。だから俺は、病院から逃げ出した。現実からも、人生からも、自分からも。
部屋に戻ったが、今まだに信じられない自分がいた。まだ、何処かで生きてるんじゃないか。どこからかひょっこり現れるんじゃないか。そんな錯覚を考えてしまう。だけど、いなくなったのは真実で、現実で、隣に空いた空白はもう埋めることはできなくて。
「あ。そうだ、宿題やらなくちゃ」
俺は机に向かい、ノートに視線を向ける。少しでも、気を紛らわそうとした。みどりを忘れようとした。だけど、
「忘れられるわけ…、ないだろ!」
あふれる涙。その涙が頬を伝い、ノートを濡らす。
「何で、なんでなんだよ!なんでみどりなんだ!神は何を見ているんだ!なんで俺じゃないんだ。なんで、なんで…、」
どれだけ叫んでも、みどりが戻ってくることはなくて。もう、隣には誰もいなくて…。
そして俺は、一人で…。
「クッソ。ダメだな~。やっぱ俺は」
涙を拭う。
「気分転換でもするか」
俺はそのまま外出した。
気分転換に?いや、違う。そんなものは建前で、本当の本当は…。
駅の改札を通り、ホームへ。
別に理由はない。この世界から離れて、やり直そうとした。
死、という形を持って。
後方車両の止まる場所へと移動すると、電車到着のアナウンスが流れ、電車のライトが俺を照らす。
そしてそのまま、俺は体を預けた。重力に従い、線路に入っていく。
さあ、決別だ。すべてにおいての決別。そして覚悟を今一度した時、
異変は起こる。
俺の腕を誰かが引っ張り、俺のすぐ目の前を電車が通り過ぎていく。そのまま、ホームに倒れこむと、隣にいる俺を救ったであろう少女は息を整えながら言った。
「好きです。付き合って下さい!」
と、その一言を…。
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