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第1章 魔力要員として召喚されましたが暇なので王子様を癒します

(閑話)タブレットの用途は様々

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ちょっぴり(R)です

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 王太子の婚約式が滞りなく行われ、王城の慌ただしさも落ち着きつつある春の昼下がりのこと。
 玲史とレヴィは、セティに呼ばれて執務室を訪れていた。
 扉を開けると、ソファで紙束を見ていたディースが、顔を上げて振り返る。途端に、嬉しそうな笑顔に変わった。
 セティに促され、ディースの向かいに腰掛けると、テーブルの上には、石板が二つ並べて置いてある。
 黒い石板で出来たたタブレットは、以前見た時よりも一回り小さくなっていた。大きめのスマートフォンと言った方が良いようなサイズ感だ。
「あの、あの、小さくしたら、魔力消費が減って、長時間使用が、可能になって……」
「新しいタブレットの、検証を依頼したい」
 興奮気味のディースの言葉を遮り、セティが説明を引き継いだ。
「画面を小さくすることに加え、魔法陣の組み合わせを変えることで、魔石の消費量が格段に減った。現在、実用化に向けて、魔術塔を中心に様々な状況での検証を行っている。レヴィとナヴィ卿には、連続使用での魔石の耐久時間と、その間の映像と音声の状態などを検証して欲しい。魔石を充填しながら連続使用が可能なのは高魔力の者に限られる。検証の為に魔力切れを起こされたら困るから、他の者には任せられなくてね。どうだろうか」
「面白そうですね。私は問題ないですよ」
 レヴィの横顔に視線を向けたら、「問題ない」と笑顔が返ってきた。
「連続使用の場合は、3日から4日で魔石が消耗して破損するのではないかと予測される。充填時はくれぐれも破損による怪我の無いよう気を付けてほしい」
 手元で充填している時に魔石が割れた場合を考慮して、充填時はスタンドに置いて少し離れて行うといいかもしれない。
 その他、タブレットやスマートフォンを使用していた時の便利グッズも役に立ちそうだと玲史は考えた。
「通信を続けるならば、机や枕元に置けるよう、スタンドがあるといいですね。充填時も、スタンドに置いて行う事にしましょう。画面の破損防止ケースや、自分の物だと分かる飾りもあるといいですね。ケースに棒を付ければ片手で自分と背景を映すことができます」
 向かいのソファでディースがメモを取っている。
「これで、どうかな」
 スタンドや、自撮り用の棒が付いたイラストが描いてある。ディースの手に掛かれば、すぐにでも実用化できそうだ。
「この棒はもっとこんな感じで、ケースはスタンドにすることもできて……」
 玲史の指示に、ディースが描き足していく。
「もっと便利なものもあった気がするけど……使いながら考えるよ」
「うん、楽しみ。出来たら、届ける、ね」
 ディースは、嬉しそうにメモと紙束を持って執務室を出て行った。
「私は、本日は夕方まで訓練、王城の部屋で休み、明日の早朝からは討伐訓練の付き添い、3日後の夜に戻るという予定です。よろしいでしょうか」
 レヴィに続き、玲史も自身の予定を伝える。
「私は、基本的に午前中は魔術省で講義。午後はフィヨルギー家で過ごします」
「問題ない。報告書を頼んだよ」
 石板に魔石をセットして通信状態を確認し、二人は執務室を出た。
 玲史はレヴィに付き添われて魔術省に向かう。
「3日も貴方と離れるなんて、寂しくて心が千切れそうだ」
「俺も寂しいけど、離れていてもこの中でつながっていられるよ」
 タブレットを掲げる玲史の言葉に、レヴィの頬には笑みが浮かび、瞳が甘く輝く。
「そうだな。つながっている」
 少し伸びた黒髪を指で梳き、後頭部を支えて玲史の唇に軽く口付けた。
「しばしの別れだ」
「うん、無理はしないで。気を付けて行ってらっしゃい」
「ああ、行ってくる」
 扉の前で別れ、レヴィは演習場へと向かって行った。

 夜になり、フィヨルギー家で寛ぐ玲史の元に、王城からタブレットのスタンドが届けられた。
「こんなに近くにいるのに、触れると冷たい画面であることが不思議でならない」
 レヴィが、タブレットの画面に触れて撫でる。彼もスタンドを使ってテーブルに設置していた。
「本当だね。改めて考えると、不思議なことだよね」
 現代日本では当たり前だったことだが、全く異なる技術で再現されている。
 今は、同じ魔法陣を刻んだ魔石同士のみの通信だが、携帯電話のように自由に相手を選定して通信できるようになるのも、もう間近な事なのかもしれない。

 使用開始から4日が経った。
 約8時間置きに充填しながら通信を続けているが、まだ魔石に異常は見られない。
 ディースの改良で、性能が向上しているようだ。
 公共の場では音声を小さくして、フィヨルギー家の使用人に作ってもらった巾着袋のホルダーに入れている。
 持ち歩きながら通信を続けるなら、イヤホンや、専用のストラップなども欲しい。
 備品の提案も書き添えて、セティに報告書を届けた。

 夜になり、自室で寛いでいた玲史は、暗い画面に話しかける。
「レヴィ、聞いてる? 今、何してるの?」
 音量を上げると、馬の走る音と車輪の音が聞こえてきた。
「討伐が終わり、馬車で王城に向かっている」
 画面の角度が変わり、レヴィの顔が映った。
 帰還予定は昨日だったが、天候が崩れた為、大幅に帰途が遅れている。
「お疲れ様でした。怪我はない?」
「ああ、レイジーも変わりないか?」
「うーん……レヴィと会えなくて寂しい、かな」
 本音を冗談交じりで言ったら、レヴィの眉が困ったように下がる。
「貴方の顔も、声も、近くにあるのに触れられなくて寂しいよ」
 最初の夜のように、画面に触れてそっと撫でる。そんな仕草に、胸の奥がキュウと引き絞られた。
「レヴィ、もっと画面に近づいて」
 タブレットを持ち、目を閉じて冷たい画面に唇を押し付けた。
 チュッ……。
 音がして目を開けたら、艶やかに色を濃くした水色の瞳が至近距離で見つめている。
 そんな目で見られたら、どうしていいか分からない。
 唇を押し付けたまま宝石の瞳に魅入られていたら、リップ音に微かな水音が混じる。
 口元に目を向けると、レヴィがチュッチュと唇を付けながら、舌で画面を突いている。
 煽情的な映像に、下腹が熱を持つ。
 越えられないガラス面にもどかしさを感じながらも、その舌に自分の舌を合わせる。
「は……ん、レヴィ……しゅき……」
「レイジー、ベッドに移動して」
 ベッドに上がってタブレットをサイドテーブルに置く。
「寝間着を脱いで」
 チュニック型の寝間着を脱いでベッドの脇に置く。
 画面を見ると、レヴィの瞳が甘く潤んでいる。
「下着はそのままで。貴方は服の中で粗相するのが好きなようだからな」
 わざと煽る様な事を言っているのだと分かっているのに、体が勝手に反応して熱くなる。
 レヴィの言葉に、薄布を両脇の紐で縛るだけの簡易な下着の前が盛り上がり、そこにはうっすらと水染みが浮かんでいた。
「画面に映るように、こちらを向いて膝を立てて足を開いて」
「恥ずかしいよ……」
「始めたのは貴方だ。言われた通りにして」
 画面越しのキスで、ほんの少し寂しさを紛らわせたかっただけなのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう。討伐で興奮が残る若者を煽る様な事をしてしまった玲史が悪かったのか。
 命令するような口調の低い声に、なぜだか興奮が高まる。
 玲史はタブレットの前に座り、のろのろと言われた通りに足を広げた。
「乳首が赤く腫れているな。今まで弄っていたのか?」
「違う……レヴィが……」
 服が擦れただけで硬く膨らんでしまうのは、毎晩レヴィに弄られているせいなのに。
「両手で摘まんで」
 それでもレヴィの言葉に抗うことはできず、熱を持って硬くなった蕾を摘まむ。
「俺の指だと思ってこねて」
 指先に力を入れたら、背筋に電流が走った。
「あっ……んっ」
 駆け抜ける快感に、指の力を加減すればいいだけなのに、捻り上げて押しつぶすことをやめられない。
 捻る度に、もどかしい熱が下腹部で溜まっていく。
「舐めてやりたいが、このガラスが邪魔で貴方に触れられない」
 レヴィが画面を、舌先でゆっくりと舐め上げた。
「はぁ……」
 レヴィの愛撫を想像したら、目の前がチカチカして全身に震えが走る。
「あ、や……」
 薄布の下着から、完全に勃ち上がった茎の先端が頭を出す。布に擦れる刺激で、更に快感が増している。
 勝手に腰が動いて、無意識のうちに前後させていた。
「あ、あ……れびぃ……」
 レヴィに触れて欲しい。摘まんでこねて、噛んでほしい。体の奥に熱い楔を打ち込んで欲しい。
 声は聞こえるのに、姿も見えるのに、その熱に手が届かない。
 画面に触れても、冷たいガラスの感触があるだけだ。
 切なくて、涙が溢れた。
「待て、魔石に充填をする」
 レヴィの声に、石板を見ると、玲史の魔石も魔力が底をつきかけていた。
「俺も……」
 淫らな格好のままタブレットに這い寄り、朦朧とした意識の中、魔石に魔力を注ぐ。
「だめだ! 魔石が割れ……」
 レヴィの声の途中で、ピシと音がして、玲史の魔石にもヒビが入り始める。
 慌てて魔力を止めたが間に合わず、パンッという音と共に魔石が粉々になった。
 当然画面は暗くなり、声も聞こえない。
「嘘……なんで、今?」
 しばらく茫然としていたが、割れた魔石を放置したままでは危なくて眠ることもできない。
「はぁ……」
 大きな溜息を吐き、まだ熱のこもった体に寝間着を身に着け、のろのろと動き出した。
 階下の掃除用具を持って来て、散らばった魔石の破片を集める。それをゴミ箱に捨てて、報告書に時間を記入した。
 萎えてもまだ疼く部分は体液で濡れたままだ。
 下着を用意して、ベッドのシーツも変えて……と考えていたら、窓の外から馬の嘶きが聞こえてきた。
 カーテンの隙間から外を覗くと、月あかりの中、馬を走らせるレヴィの姿が見える。
 間もなく、レヴィの部屋の扉が勢いよく開けられた。
「レイジー」
「レヴィ、どうして……」
「馬車から馬に乗り換えて、走らせてきたのだ」
 肩を上下させて息を吐くレヴィの額には汗が光っていた。どれだけ急いで駆けつけてくれたのか。
「お帰りなさい」
 玲史は、4日ぶりに見る本物の恋人に、思わず抱き付いていた。
「ただいま。やっと会えたな」
 レヴィに横抱き抱えられ、一緒にベッドに倒れ込む。
 愛しい人の匂いと体温に包まれて、安堵の溜息を吐く。
「やはり本物がいい」
 玲史はこくこくと何度も頷いた。
「うん、うん、そうだね」
 どちらともなく、再び熱を持ち始めた唇を合わせる。
 タブレットでイチャつくのは言葉だけにしておこうと肝に銘じ、玲史は愛しい人に全てを委ねた。
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