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【五】う~ん・・・うって変わって「残念」な本たち(笑)
しおりを挟む・・・さて、前回は「研究のプロ」である学者・研究者の方々の書いたものと、「実践のプロ」であるお坊さんの書いた「般若心経の解説本」は、その信頼性という点ではなかなかな甲乙つけ難い!
内容的にはどちらも、ある程度しっかりとした「知識」と「証拠」に基づいて書かれているので、その時の気分によって、あるいは自分が求めるものに応じてチョイスしたらいいかも、と言う事を書きました。
ただし、お坊さんの書いた般若心経の解説本の方はちょっと注意が必要です。
・・・注意と言うほどのものでもないのですが(笑)
これは般若心経の特徴もあるのですが、いわゆる「密教」の真言宗・天台宗のお坊さんと、禅宗の曹洞宗・臨済宗のお坊さんでは般若心経の解釈が微妙に違ってくるのです。
(なお、浄土真宗、日蓮宗系は基本的に般若心経を用いないので、これらの宗派のお坊さんが書いた般若心経の本というの基本的に無いはずです)
同じ「お坊さん」でも・・・です!
まあ、いわゆる大乗仏教の説いている教えが宗派によって全然違う(特に日本では)ので、ある意味当然の帰結なんですね。
これについては後述することになると思うのですが、般若心経の不思議な特性上、どうしてもそうなるのです。
さて、前回まで般若心経の解説本を「執筆者」という視点から分類してご説明してきました。
① 大学などで仏教、宗教学、考古学等を研究している学者・研究者の方々
② 僧侶
③ いわゆる「ライター」と呼ばれる文筆業の方々
最後に残ったのは③ですね!
【ライター等の文筆業の方々が書いた本】
・・・いわゆる「ライター」などと呼ばれる文筆業の方々が書かれた本ですが、実はコレが色々ありましてねぇ(笑)
まあ、ぶっゃけ一番「ハズレ本」が多いのはこのタイプでしょう。
まずは本を手に取ったら、一番後ろの著者のプロフィールをご覧ください。
宗教とはあまり関係のない様々なジャンルで本を出されている方が、いわゆる「ライター」という方々です。
この方達は般若心経の「プロ」ではありませんから、どうしても参考文献をまとめ上げたような内容的に「浅い」か、以前に述べた「牽強付会」な内容になりがちです。
というか、むしろ「心がホッとする」とか「心配事がなくなる」とか、あえていわゆる自己啓発本的なアプローチをしている本が多いのが特徴です。
・・・そういう「方向性」を求めている方にはそれでいいのですが「般若心経にはそんなこと一言も書いていないよなぁ」っていうレベルの本が山ほどあるのでちょっと困りものです(笑)
般若心経にあえて「自己啓発本」的な内容を求めていないなら、このテの本は避けるのが賢明でしょう。
いわゆるライターと呼ばれる方達が悪いと言っているのではありません、この方達はあらゆるジャンルで本を書ける才能あふれた方々です!
しかし般若心経の真の内容を知りたいのならしかるべき書籍を選ぶべき・・・ということです。
以前あるライターの書かれた本を読んだら、語尾が推量系の「〇〇らしい」のオンパレードで閉口した記憶があります(笑)
まあご本人は専門書や文献をかき集めてまとめ上げただけで、自分で研究したわけではないのでしょうから「〇〇らしい」なのは、むしろとっても正直で理解出来るんですけどねぇ・・・ちょっと正直すぎるというかなんというか(汗)
また、補足しますと、たまに「超訳」という単語を使って宣伝している本がありますが、この「超訳」というのがクセモノで(笑)、つまりは般若心経の真面目な語句の解釈を一切放棄して、実際にはそんなことはどこにも書いていないレベルの筆者独自の「主義主張やメッセージ」だけでまとめ上げている!という事を自ら宣伝している本です。
要するにそれって「般若心経」でなく「作者心経」ですよねぇ・・・。
そんなワケで、般若心経の解説本の分類、いかがだったでしょうか?
もちろんいわゆる学者・研究者の方が書いた本でも「専門」っぽくない意外と内容が薄い本もありますし、お坊さんが書かれた本でも本来の般若心経の意味から大きく逸脱して、例の「牽強付会」に陥っている本もあります・・・こうなるともう自己啓発本と変わりありません(笑)
※まあ、信仰と自己啓発って、当然重なる部分もあるわけすが・・・。
逆にライターさんの書かれた本でも、般若心経の内容を専門書でしっかり勉強して、素人にも判り易い切り口で丁寧に解説されている本もあります。
「本」との出会いというのは、人との出会いと同じようなものです。
良書との出会いはとても人生を豊かにしてくれるものです、もし貴女が般若心経に興味をお持ちで、その真の内容まで踏み込んで知りたいとお考えならば、賢く「般若心経の解説本」を選びましょう。
「心がほっこりする」「全ての悩みが消える」「生きる知恵に満ちた!」など、あらゆる美辞麗句(それもすこぶる曖昧な)を並べた心地の良いが良いフレーズよりも、多少難解でも般若心経で説かれた「真の意味」を追求する方が有意義な時間を過ごせること請け合いです!
まさに「急がば回れ!」・・・ですね。
●じゃあさ、ぶっちゃけ般若心経って何なの?(笑)
・・・ここまで縷々書いてきたことをいきなりぶち壊す発言ですかっ!
「それを知るために般若心経の解説本を読むんでしょ?」っていう激しいツッコミ待ちですが、当然ながら私自身が般若心経の「解説」をするつもりは毛頭ありませんからご心配なく(笑)
実は最後に、本編の【僧侶の書いた本】のところで少し言及した点に触れたいと思います。
般若心経は大乗仏教の「般若経典」の一つで、「色即是空 空即是色」のフレーズがあまりにも有名な「空」の思想を説いた経典・・・というのが一般的です。
般若心経について軽くネットで調べると、その多くはまずこの「空」の思想について説明されています。
「空」の思想も、もちろん大乗仏教の流れが起こってから形成されたもので、実在の人物であるお釈迦様(ゴータマ・ブッダ)の説いたものではありません。
それは2~3世紀頃に活躍した龍樹(ナーガールジュナ)というインドのお坊さんが体系立てた仏教哲学だと言われています。
この龍樹(龍猛とも呼ばれます)というお方、真言宗の八祖の「第三祖」としても名高い名僧ですね。
その中観派とよばれる「空」の思想の意味は、専門書の解説にお任せするとして(笑)
般若心経はこの「空」の思想の基に造られたお経です。
次回は少し般若心経の解釈に直結する「空」についてお話ししたいと思います。
~~ つづく♥ ~~
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