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第四十一話 「逆転の発想」 ~邪魔な大石の撤去方法~

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 松浦静山著「甲子夜話」


 巻三十一、一五「伏見城にて大石を取除し工夫ならびに松平信綱の才智」より


 「雲根志」に載っている話である。

 山城(現在の京都府の一部)の国、伏見城は、永禄年中に豊臣秀吉公が築いた城である。
 その城の大手の門前に「見附みつけ石」と呼ばれている大石があった。
 その形は山のようで、周囲二丈(約6メートル)、大変よい眺めの石であった。
 
 ある時、この伏見城に天皇がおいでになる事になり、お車がこの石につかえて城に入れないのではないかと大騒ぎになった。
 急なことなので奉行も大変に困り、この石の撤去作業を里の町人、百姓、石匠等に入札に出すことにした。
 開札してみると、その費用が百金、二百金、あるいは五百金など高額だった。
 これは石匠を大勢雇って、石を少しずつ砕いて撤去する見積だという。

 そんな入札の中にニ十金という大変安い価格が書かれているものがあった。
 「どうしてそんな安い価格で撤去が出来るのか・・・一体どういう工夫なのか」と人々が不思議に思ったが、結局その者に委託することになった。

 落札した者は、すきくわを手にした人夫にんぷを十人ばかり集めてきて、かの石の前に大きな穴を掘り、その穴に大石を落とし込んで埋めてしまった。

 人々は、この者の才覚を口々に褒めたという。
 この石は、未だに伏見城の土中にあるということだ。

 また、松平信綱(伊豆守)の御城内で、石を取り除くときにこれと同じ方法をとったという伝説がある。
 この逸話を真似したのではなく、偶然の一致であろう。

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