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第二十五話 「すぐ裸になる将軍」

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 松浦清著「甲子夜話かっしやわ


 巻二、「三十」より


 春も終わり頃から初夏の時分のこと、徳川吉宗公が王子に出かけられた際に、御膳所となっている金輪寺に足を運ばれた時の話である。
 吉宗公が歩いて金輪寺にお入りになろうとすると、寺の住持が門前で平伏していた。
 
 それをご覧になった吉宗公は、「和尚、久しぶり!」と仰せになり、着ていた服を全て脱ぎ捨てて住持に投げ与え、ご自分は裸になり、褌に脇差を落とし差しにされて、大手を振って寺へ入られたという。

 随行した家来達はこれを見て、吉宗公のあまりに快活なご気性に驚嘆したという。

 この金輪寺のご住持は、もとは高野山の学侶で名を宥衛という人である。
 吉宗公がまだ紀州藩主だった頃に顔見知りだったので、このような挨拶となったのだということだ。

 この時、吉宗公から頂いたお服は、未だにこの寺に伝わっているという。

 また、これは四谷筋に行かれたときの話だが、鮫ケ橋を渡られた際、その日も非常に暑かったのでお服を脱ぎたいと思われたのであろう、橋の上で「ここらには家来だけしか居ないか」とお聞きになった。
 近習の家来が「さようで御座ります」とお答えすると、御立ちになったまま服を脱がれ、裸になって体に風を当てられ、単衣だけに召し直されて再び歩き出されたという。

 橋の前後には、御番の侍達が皆蹲踞そんきょして畏まっていたが、屋敷の中であるとか、往来であるなどは関係なく「家来だけか」と仰られたことは、誠に有難いことであると番士の者達が話していたという。


 ・・・「暴れん坊将軍」でお馴染みの徳川吉宗公、実は人前で裸になるのがお好きだったのでは?(笑)

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