上 下
71 / 101

第七十幕「雌犬女王陛下」~ヴァネッサの新たな提案~

しおりを挟む
  

 「・・・・そっ、それがっ・・・・」

 ヴァネッサが次の言葉を言い渋る、彼女が言葉に詰まる時はアレクシアにとってはロクなことにならないことは彼女も経験則で理解している。

 「・・・・・それが・・・どうしたの?また劇場でやるなら、あの変態貴族共の秘密倶楽部よりはずっとマシよ!」

 「・・・・それが・・・アレクシア様っ・・・わたくしは、首都近辺でしたら貴族達にも平民達にも知人が多く、この国一番の歓楽街ローシェルにあった「パライソス・ドゥ・エール」のようなお店の経営者とも顔馴染みが多いのですが、地方では・・・」

 「・・・そ、そりゃそうでしょうね・・・・」

 ヴァネッサは申し訳無さそうにアレクシアに「核心」部分を告げる。

 「・・・・もちろん、各地の田舎町にもストリップ劇場や、いかがわしいショーを催す劇場はあるとは思うのですが、どうにもわたくしにはコネがなくて・・・」

 「・・・・顔と身分を隠してもダメかしら・・・・」

 「・・・はい・・・むしろ田舎町の方が、そういう詮索は厳しいのです、よそ者が入り込むのを嫌がる閉鎖的な気風がありますから、顔と身分を偽ってショーに出ると、余計に詮索されるのは間違いありません・・・それに、彼等には彼等なりの情報網ネットワークが存在しますから」

 「・・・そう、その点は、色々な地方や他国から人が集まる首都ラノールの方が都合が良かったわけね?」

 「・・・・はい、ローシェルのような大都市の歓楽街なら、他国からの流れ者や、地方の食いつめ者の坩堝るつぼですから、いちいち場末のストリップ嬢の身元の詮索などしないのです・・・・」

 「・・・・それじゃ、どうすればいいの?ヴァネッサ!」

 アレクシアが焦れて、結論を急がせる・・・・。

 「はい、アレクシア様にはちょっと申し訳ないのですが、かえって危険な現地の劇場や酒場等を使わずに、遊撃ゲリラ的に、繁華街の路上でショーを行うのです・・・・」

 「・・・・・は、はぁ?」

 田舎町の繁華街の路上で行うサプライズセッ〇スショー!・・・・アレクシアは呆れ返って一瞬キョトンとした表情になり、すぐに怒りをあらわにする。

 「・・・・な、なによそれ?・・・・路上で乞○みたいに「見世物」になってお金でも恵んでもらうのっ?貴方ねぇ・・・馬鹿も休み休み言いなさいよっ!ヴァネッサっ!」

 女王アレクシアの叱責にも、侍女長ヴァネッサは大真面目に応える。

 「・・・はい・・・でも、ただ路上で性行為をするというのは、単なる痴女か露出狂と思われて、かえって騒動になるかと・・・ここは、一応よくある境遇シチュエーションをこしらえて、自然に行うのです・・・・」

 「・・・・・ど、どんな?」

 「はい、アレクシア様とアラミスは、さるお屋敷の使用人で、主人に内緒で密通していたのです、それが女主人にバレて屋敷を逃げ出したのです、そして一文無しになり、お金を稼ぐために路上でショーを始めた・・・という筋書きはいかがでしょうか?」

 ・・・・一瞬ポカン・・・と口を開けてあっけにとられるアレクシア。

 「・・・・ヴ、ヴァネッサ!貴方、絶対面白がっているでしょ?・・・よくそんなくっだらないストーリーが思いつくわねっ?最近流行りの下品な小説の読み過ぎなんじゃないのっ?」

 ・・・近頃、首都近辺の知的階級の間では、男女の愛のもつれをテーマにした、濡れ場の描写が豊富な、いささか低俗な小説がブームとなり、次々と出版されているのだ。

 「いっ、いえっ、アレクシア様っ、わたくしはあんないかがわしい小説などっ・・・」

 「ふ~ん・・・・まあ、いいわ、今回は貴方が考えた、ってことにしてあげる・・・思い切り「悪趣味」だけどねっ!」

 胡散臭そうな目でヴァネッサを見るアレクシア。

 「・・・・ププッ」

 先ほどから側でじっと聞いていたアラミスがつい吹き出す。
 それを見たアレクシアがいつもの調子で癇癪を起こす。

 「アラミスっ!何がおかしいのっ?あなたもサカリのついた野良犬みたいに、路上で「する」ことになるのよっ!」

 「・・・・は、はいっ・・・申し訳ございません、アレクシア様・・・・」

 アラミスは、再び小さくなって聞き役に徹する。

 「まあ、落ち着いてください、アレクシア様・・・・あくまでこれは「お芝居」ですから・・・要は、人が集まる路上で遊撃ゲリラ的に、そ、その・・・性行為をして、サッサと退散するのです!一回で数十人から上手くいけば百人くらいは観客を集められると思いますし、短時間ですからアレクシア様の正体がバレる危険性もずっと少ないと思うのです・・・・」

 超大国ロシュニア王国の女王アレクシアともあろうお方が、田舎町の盛り場で、発情したメス犬のように路上で性行為を行って、見物人にお金を恵んでもらう・・・・。

 普通に考えればこれ以上はないという屈辱に思えるが、魔女にかけられた淫欲の呪いに日々苛まれているアレクシアにとっては、正体がバレる可能性が低い今回のヴァネッサの提案は、心が動くものだった。

 彼女も、呪いによる苦痛から逃れたい一心で、感覚が麻痺しているのかもしれない・・・・。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...